JR九州のD&S列車(デザイン&ストーリー)の一つ、「36ぷらす3」の赤の路というコースに乗車したので、乗車記をまとめました。2023年11月の乗車でひとり旅です。
「36ぷらす3」の概要
九州は世界で36番目に大きな島だそうで、「36ぷらす3」は九州全県を巡る観光列車です。九州の中を5つの区間に分けて、それぞれの赤、黒、緑、青、金の路と名付けています。詳細は公式サイトの運行ルート・ダイヤの紹介をご覧ください。
車両は水戸岡鋭治氏デザイン
車両は数多くの観光列車のデザインを手掛けている水戸岡鋭治氏によるデザインで、お食事や車窓の景色だけでなく、車両そのものも楽しめます。
予約方法
予約方法はJR九州のサイトから他の列車と同様、1か月前から予約できるグリーン座席と、旅行商品として発売される個室とグリーン座席があります。個室は旅行商品のみの扱いです。旅行商品だともれなくお食事がついてくるので、お値段は高くなります。
ひとり旅の場合、1か月前の通常予約でグリーン座席が確保できれば一番お安く乗車できますが、座席数が少ないので、予約できる保証はありません。私は確実に乗車したかったので、旅行商品から予約しました。旅行商品だと1か月前よりももっと前から予約ができます。運賃やグリーン座席料金と食事代併せて1人23,000円でした。
旅行商品の場合、1人でも個室を選択することも可能です。せっかくなので個室にも惹かれました。お料理の内容が座席の人とは異なるのです。ただ2名個室を1人で利用する場合、2名で利用する時の料金にプラスして、19,000円の追加料金が必要なんです。それはちょっと手がでないなーと思い、グリーン座席にしたわけです。
赤の路を選んだ理由
5つあるコースの中から私が選んだのは、赤の路というコースです。こちらのコースは博多駅から鹿児島中央駅までを6時間26分かけて走行します。このコースを選んだ理由は、
- 5つのコースの中で最も乗車時間が長い。せっかくの観光列車なので長い時間乗っていたかったから。
- JRの車両では「ななつ星」以外は走ることがない、肥薩おれんじ鉄道の区間を走行できる。
と言う理由から赤の路を選びました。特に2番の理由が大きいです。
博多駅にて
さて博多駅です。出発列車案内には博多から出発するいろいろな列車に交じって、「36ぷらす3」が表示されています。在来線の列車案内表示に鹿児島中央駅の文字があるのは、なかなかレアですよ。
旅行商品予約は有人改札を通ります
私は旅行商品から予約しました。この場合、切符の類はありません。したがって自動改札を通ることができません。有人改札で旅行社からのメールをスマホに表示して通してもらいます。
ここでちょっと問題が。有人改札の駅員さんに外国人がいろいろと質問中で、少し待たされました。改札を通するのは少し時間に余裕を持って行った方が良いです。
先頭車両は入れ替わる
「36ぷらす3」は6両編成ですが、先頭車両が1号車なのか6号車なのかは決まっておらず、公式サイトには週替わりと書かれています。旅行商品の案内にも、座席の眺望は予約時に確約できないとありました。
ホームに行くと、黒い背景の乗車位置マークと、白い背景の乗車位置マークが貼ってあり、それぞれA、Bと書かれています。ホーム上のアナウンスや電光掲示にAなのかBなのかは案内があります。
間違えて並んでいても、6両ですし、車内は通り抜け可能なので、近くのドアから乗れば問題ありません。
いよいよ乗車
出発の10分くらい前に「36ぷらす3」が入線してきました。
ドア横には高級感あふれるエンブレムがついています。車体がピカピカの黒で、真正面からカメラを構えると自分が映り込んでしまいます。
車内の様子
列車は6両編成で、グリーン座席は5号車と6号車。1~2号車は個室、3号車は半分が個室で半分がビュッフェ、4号車はイベントなどが行われるマルチカーという構成です。私はグリーン座席で6号車を選びました。
6号車の様子
6号車は畳敷きなので、靴箱に自分の靴をしまってから座席に向かいます。6号車はこの日は先頭車で、右側が一人掛けの座席、左側は2人掛けの座席です。5号車は左右逆の座席レイアウトです。
靴は自分の座席番号の所にしまいます。靴脱ぎスペースがそんなに広くないので、一斉に乗車したら下車する時にはちょっと混み合います。トイレに行くにも靴を履かないとならないので、ブーツみたいな靴だとちょっとめんどくさいですし、靴箱もあまり高さのある靴は収納するのが難しそうなサイズです。
座席はこんな感じでクッションがよく、座席幅も前の座席との間隔も広くて快適な座席です。
先ほど靴を脱いだので、足下はこんな感じ。実は足元、ちょっと気を遣いました。靴を脱いで靴下だけだと、もしかして足先が冷たくなるのではないかと。用心してウールのちょっと厚手の靴下を履きました。
前の座席の背中にはドリンクホルダーとポケットが用意されています。もしかしたら革製かも。
ポケットにはあらかじめ車内で購入できるドリンク類やスイーツ、お土産物などのメニューが用意されていました。
窓には障子がはめられています。なので窓の半分しか景色が見えません。
障子と窓ガラスの間には日よけも入っています。
コンセントもついています。
リュックや小ぶりのボストンバックなどは、座席上の荷物棚に収納できます。飛行機の物入れみたいな感じです。
スーツケースのような大きな荷物は、6号車では靴を脱ぐ場所に荷物置き場がありました。
こちらは5号車です。6号車とは1列×2列のレイアウトが逆になっています。床は組細工になっていて、こちらの車両は靴のまま利用できます。
マルチカー
こちらは4号車でマルチカーになっていて、乗客はいつでも利用できます。一人旅なのに2人席しか予約できず、知らない人と相席、なんていう時はこちらの車両でくつろぐのもよし、お弁当広げるのも良しです。社内イベントでもこちらの車両を使用していました。
いろいろなタイプのシートが用意されています。ご自分の座席とは反対側の景色を見たい時や洒落たソファーで記念撮影したい時などは、マルチカーを利用すると良いと思いました。
天井は繊細な組細工になっています。
足下のデザインもオシャレです。
ビュッフェ
3号車の半分はビュッフェになっています。
ビュッフェでは飲み物やスイーツ、お土産物を販売しています。座席に用意されていたメニューに内容が紹介されていました。
メニューにない商品として、「36ぷらす3」のオリジナルドリンクが用意されていました。アルコール入りと無しの両方が用意されていまして、私はノンアルの金のサイダーを注文しました。3周年記念メニューとのことで、オーダーした人には「36ぷらす3」の手ぬぐいがプレゼントされました。ラッキー。
食後にはコーヒーを買いに来ました。カウンターでお金を払い、カップをもらって自分でコーヒーマシンから抽出します。
コーヒー以外にもアルコール・ノンアルコールドリンクがいろいろと販売されていました。
おやつにアイスを買いに来ました。乗車時間が長いのでビュッフェでいろいろ手に入るのはありがたいです。
カウンター上のタブレットでは社内イベントの受付を行っていました。
個室
3号車の半分から1号車にかけては個室が配置されています。1~2人用と4~6人用の個室があります。
トイレも数がそこそこあって、私は3回ほど利用しましたが、行列するようなことはなく、いつもすぐに使用できました。コーヒーを飲むとトイレが近くなる人なので、トイレが快適に使用できるのは助かります。
お食事
旅行商品で乗車する場合はランチがつきます。個室とグリーン座席と出は食事の内容が異なるようです。私はグリーン座席で乗車したので、グリーン座席のお食事内容をご紹介します。
お食事は熊本駅に到着する前あたりに「これからお食事をお持ちします」という車内アナウンスの後、アテンダントさんが座席まで運んで来てくれます。座席のひじ掛けの中にあるテーブルを広げて受け取ります。
風呂敷を外すと中は2段になっていました。この風呂敷は記念にお持ち帰りできます。
グリーン席のお食事は熊本にある日本料理店たがみさん監修のお料理です。こちらがお品書き。かなり品数豊富です。
折いっぱいに色とりどりのお料理が入っていて、いろいろな物を食べたい女性には嬉しい内容です。JR九州らしく、どちらの折にもツバメが乗っていました。広げたテーブルの中央部分がないので、落とさないように少々気を遣いつつ、いただきました。
お食事をテーブル上に広げると、席から立つのが難しいので、お食事の時に飲みたい飲み物は、お食事を広げる前に確保しておくと良いでしょう。
お食事付きの旅行商品が23,000円。通常のネット予約で席だけの予約だと、17,740円と表示されたので、お食事代が約6000円といったところでしょうか。JR四国の観光列車のお食事は5500円くらいなので、少し割高感があるかも。JR四国のお食事は何回かに分けてサービスされるスタイルですし、コーヒーやデザートもついていました。
途中駅でのおもてなしと車窓
こういう観光列車は途中駅で地元の方からのおもてなしがあります。
玉名駅
博多駅を出発して1時間20分ほどすると、玉名駅と列車は停車します。
ホームには玉名地区の名産品などが並びます。周辺の自治体が週替わりでおもてなし対応をしてくださっているそうです。
停車時間は20分くらいですが、この日は前を走る普通列車に少し遅れがあり、「36ぷらす3」にも少し遅れが出ていました。そのため玉名駅での停車時間は15分ほどに短縮されていました。
不知火海
「36ぷらす3」は八代駅から肥薩おれんじ鉄道線を走行します。駅に停車している列車もJRものではなく、肥薩おれんじ鉄道の車両です。
やがて進行方向右手に海が見え始めました。不知火海です。
海外ギリギリを走る区間もあり、列車もスピードを落として走行してくれました。網の向こうは天草の島々です。空が曇っていて、青い海に青い空とはいきませんでしたが、赤の路のコースの中では唯一車窓が楽しめる区間なのではないでしょうか。
牛ノ浜駅
不知火海の眺めが終わると、列車はしばし内陸を走ります。その後再び海岸沿いに。今度は東シナ海です。やがて列車は肥薩おせんじ鉄道線の駅、牛ノ浜駅に停車します。
海沿いの駅ですね。
ホームが短いので、後方車両ははみ出して停車します。個室車両の方は前方車両に移動して乗り降りするよう案内がありました。
こちらの駅でも地元の方の歓迎を受け、物品販売もあったので、イワシの丸干しのオイル漬けを買いましたよ。
盛大なお見送りもありがとうございました。
東シナ海
牛ノ浜駅を出ると一旦線路は内陸に入りますが、再び海岸線に出ます。
終点の鹿児島中央駅へ
川内川を渡って川内駅に到着したら、ここからはまたJR九州の線路になります。やがて6時間を超える長旅も終わり、鹿児島中央駅に到着しました。
まとめ
「36ぷらす3」は2020年10月から運行が開始されました。こちらのリンクにある赤の路の運行開始の日に、ちょうど私は熊本駅にいまして、この列車に乗ってみたいなーと思ったのでした。
さて実際に乗ってみての感想ですが、水戸岡鋭治氏デザインの車両は外観も内装も素晴らしく、特別感の溢れる列車でした。シートも良くて6時間を超える長旅でしたが、腰が痛くなるようなこともなく、快適でした。お食事も特別感があり、見た目もお味も良かったです。ランチの時間帯の車窓は絶景というわけではないですが、流れゆく景色を見ながらのお食事ができました。お食事付きの観光列車の中には、お食事は停車中にじっくり食べる、という観光列車もある中で、「36ぷらす3」は走行しながらお食事ができるのは嬉しかったです。
車窓については、私は進行方向右側の座席だったので、窓からは不知火海や東シナ海を眺めることができました。それでも6時間の乗車の中で海が見える時間はそれほど長くないのです。窓には障子が入っているので、障子を開けたとしても窓の面積の半分しか外の景色を見ることができません。進行方向左側の座席の方は、海の景色はほとんど見えなかったのではないでしょうか。
車両の進行方向は週替わりということで、予約する時にどっち側の景色が見えるのか確約しないのは、私のように車窓を楽しみたい鉄道旅の予約には、ちょっと悩ましいところもあります。もちろんマルチカーに行って好みのサイドの景色を見れば良いのですが、畳敷きの車両の場合、他の車両との行き来には、それこそトイレに行くにも靴を履いたり脱いだりはちょっと手間な感じはあります。
客室乗務員は6名乗車していて、サービスも良かったのですが、ビュッフェに乗務員が一人の時には、少しお客さんが並びます。オリジナルサイダーなどはその場で作るので、応対する乗務員が一人だと、飲み物つくるのに時間がかかりました。
と、多少の不満はありますが、総じて観光列車らしい鉄道旅が楽しめる列車でした。途中駅のおもてなしが2回はいるので、良い気分転換になります。おもてなしを担当している自治体の皆さま、本当にありがとうございました。自戒乗るなら、土曜日のコースに乗ってみたいです。停車する列車の本数がとても少ない宗太郎駅に停車してくれるのが、私にはとても魅力です。
お食事が楽しめる観光列車の乗車記
鉄道に乗って移り行く景色を眺めながらのお食事タイムは、鉄道旅の醍醐味です。観光列車でなくても、駅弁を買って車内で食べるのももちろん幸せですが、観光列車だと特別感が違います。今までにも何度か乗ってきました。以下に乗車記へのリンクを紹介します。
海外では氷河特急が有名ですね。こちらはフルコースで車窓も抜群です。