JR四国には魅力的な観光列車が走っていて、今回乗車した「四国まんなか千年ものがたり」はその中の一つです。全席グリーン扱いだけあって高級感あふれる車体と内装に手厚いサービス、そして吉野川の渓谷美を楽しめる観光列車です。以前から乗りたかったのですが、予約がなかなかとれない列車でもあります。今回はラッキーにも予約がとれたので、念願かなって乗ることができました。お天気は今一つでしたが、桜を楽しめましたので、乗車記をまとめました。2023年3月の旅です。
こんなルートを走ります
四国の瀬戸内海側と太平洋側を結ぶ、土讃線の多度津駅と大歩危駅の間で運行されています。午前中に多度津駅から大歩危(おおぼけ)駅へ、午後は大歩危から多度津への1往復です。
「四国まんなか千年ものがたり」は絶景区間では徐行したり、途中駅では長めに停車したりするので、特急なら1時間弱の区間を2時間半くらいかけて走行します。
こんな車両です
「四国まんなか千年ものがたり」は3両編成で、各車両趣が異なります。
大歩危駅側が1号車で緑の車体、多度津側の3号車は赤い車体です。各車両ごとにテーマが設定されていて、1号車は「春萌(はるあかり)の章」ということで新緑がテーマカラー、3号車は「秋彩(あきみのり)の章」なので鮮やかな紅葉色を採用しています。
2号車は左右でカラーが異なります。片側がホワイト、反対側はブルーの車体です。2号車は季節によって「夏清(なつすがし)の章」と「冬清(ふゆすがし)の章」の2つのテーマを使い分けています。
車内もそれぞれの車両のテーマに合わせたデザインです。1号車と3号車は2人掛け、4人掛けのテーブルがセットされています。木材をふんだんに使い、天井も凝っています。窓が大きくとられて景色も楽しめます。
車両の端の方にはカウンター式のテーブルもあります。
私の座席は4人掛けテーブルで他のお客さんと相席です。4人席のうち、私と私の隣の男性は1人旅でした。向かい側の方は2人で旅をされています。向かい側とはかなり距離があるので相席でもあまり気になりませんでした。
出入り口には駅に停まる都度、アテンダントさんがカーペットを準備してくれます。
こちらは3号車です。座席レイアウトは1号車とほぼ同じですが、カラーが変わると印象がずいぶん変わります。
2号車はちょっとレイアウトが1,3号車とは異なります。3人掛けまたは4人掛けのソファーが3セット並んでいます。
化粧室も複数用意されていて安心です。手洗いシンクもオシャレな陶器製でした。
楽しみなお食事
午前中の列車では車内でランチを取ることができます。なんと、金刀比羅宮の森の中にあるカフェ&レストラン神椿の料理長監修のランチです。神椿のスイーツやお料理は銀座資生堂パーラーが担当しているんです。私は乗車前日に金毘羅さんにお参りに行き、その時にカフェを利用してきました。神椿についてはこちらをどうぞ。
香川の食材を使ったメニュー
メニューは時々変わります。下の写真は私が乗車した2023年3月のメニューです。地元香川県の食材をふんだんに取り入れた献立になっています。
専用待合室でウェルカムドリンクとスープからお食事スタート
ランチを予約している方には、琴平駅構内の専用待合室でウェルカムドリンクとお食事コースの最初に提供されるスープがサービスされます。始発駅から乗ってきたお客さんはホームから直接待合室にはいりますが、私は琴平駅から乗車だったので、列車が到着する前に、駅の外から待合室に入りました。
入口の扉を開けるとスタッフの方が私の乗車券やグリーン券を預かります。しばらく待っていると、チケットケースに入れて返してくれました。今回はジパング倶楽部の3割引きを利用して初めて発券した鉄道旅だったので、良い記念になりました。
待合室内は広々していて、椅子も多く、少し早めに来ても座って待っていられます。
列車が到着すると乗客はこの待合室に誘導され、ウェルカムドリンクとランチのスープをいただくのですが、私は列車が到着する前に一足先にいただきました。「さくら紀行」と題された運行だったので、ドリンクには桜の花びらが浮かんでいます。
乗車後のお食事
指定された席につくとこんな感じにテーブルがセッティングされています。ちょっとしたレストランの雰囲気です。
着席するとアテンダントさんが飲み物などの注文を聞きに来てくれます。ドリンクや軽食メニューがあります。かなり美味しそう。ノンアルコールドリンクのメニューが豊富なのが嬉しかったです。
せっかくなので季節のソーダをお願いしました。注文したものはアテンダントさんが運んで来てくれます。車内で注文した飲み物やグッズ類などの精算は、のちほどアテンダントさんが会計に来てくれます。クレジットカードは使えず、現金で支払いました。
11時くらいからお食事タイムで、まずは冷たいお料理が箱に入って運ばれてきます。この箱が金属製のようで結構重くてびっくりしました。メニューにあるスープは? と思うかもしれませんが、琴平駅にあるウェルカムラウンジでいただきました。後程ご紹介します。
蓋を取るとこんな感じです。見た目も素晴らしいしボリュームもあります。もちろんとても美味しいです。さすが資生堂パーラー監修です。香川と讃岐の食材をふんだんに使ったお料理でした。
冷たいお料理の後に続いて温かいお料理です。こちらはバターライスとポークのトマト煮です。
温製料理が終わると、食後のコーヒーとデザートです。デザートは紙に包まれた一口サイズのマドレーヌと和三盆クッキーなので、ここでもう一品ボリュームのあるデザートを追加しても良いかもしれません。向かい側に座った女性お二人は注文していました。
ランチの予約方法
このランチを食べるには乗車の4日前までにJR四国ツアーなどで予約が必要です。私は「tabiwa by WESTER」というスマホのアプリを利用して予約しました。予約が完了するとマイチケットの中にこんな画面が表示されます。
お食事の予約についてはこちらをご覧ください。
車窓やみどころ
さくら紀行
「四国まんなか千年ものがたり」は窓が大きくとられていて、景色も存分に楽しめます。私が乗車した時には「さくら紀行」の運行でちょうど見ごろの桜を楽しめました。桜並木付近では徐行してくれます。
前面展望で線路と桜並木を楽しめるポイントがいくつもありました。窓をきれいにしてくれてあって嬉しいです。
賑わう秘境駅の坪尻駅
香川県と徳島県の県境にある猪ノ鼻トンネルを抜けると、間もなくスイッチバックの秘境駅、坪尻駅です。
ここは土讃線の難所で、かつては蒸気機関車が一旦折り返し線へバックし、勢いをつけて急坂を登ったのだとか。
右側の線路が本線です。坪尻駅を出発したら右側の線路に入り、トンネルを抜けていきます。だいぶ高低差があるのがわかります。
この時にホームとは反対側に滝が見えます。
引き上げ線で停止した後、運転士さんが乗客の拍手に送られながら3号車の運転台に移動し、列車は坪尻駅に停車します。桜も良いけど、秘境駅もなかなか行けないので楽しみです。
この坪尻駅に通じる道はなく、鉄道でないと訪れることができない駅なのです。なぜここに駅があるのでしょうね。特急列車はもちろん通過しますし、普通列車も通過してしまう列車があります。
私達が秘境駅にいる時にも特急が通過していきました。
山あいの坪尻駅にも桜が咲いて春の装いです。
濃いピンクの花も桜でしょうか。
坪尻駅には15分ほど滞在します。
この付近にはマムシがでるようです。
坪尻駅では乗客のほとんどが列車から降りてしまいます。その間にアテンダントさんが食べかけのお料理やドリンクにほこりがつかないよう、こんな風にカバーをかけてくれます。お心遣い、ありがとうございます。
大歩危・小歩危峡
秘境駅の坪尻駅を出て暫くすると大きな川を渡ります。吉野川です。この後列車は吉野川に沿って走ったり、鉄橋で渡りつつ大歩危を目指します。
やがて小歩危駅付近になると列車が徐行運転し、渓谷美を楽しませてくれます。この辺りは前年に車で通りましたが、線路は道路よりかなり高い位置を走るので、眺めがとても良いです。
大歩危峡ではたくさんの鯉のぼりが泳いでいました。
大歩危(おおぼけ)駅に到着
琴平を出てから2時間ほどで終点の大歩危駅が見えてきました。
ホームに着くと歓迎の太鼓やほら貝などで歓迎してくれました。
大歩危駅も桜並木がとてもきれいでした。さくら紀行にふさわしいフィナーレです。
座席の予約方法
通常の切符と同じように、乗車日の1か月前の10時から発売されます。全席指定なので、座席も決めなくてはなりません。こちらの列車は一人旅向けのカウンター席もあるのですが数が少なく、私は発売日の午後に鉄道窓口に行きましたが、その時点では一人旅の人が予約できる席はありませんでした。
が、私がいつも鉄道旅の際に予習をしているひささんの乗車記に、出発時間が近くなると、4人席を開放するようです、という情報がありました。なので懲りずに1週間後に窓口に行き、予約できないか確認してもらったら1席だけ開いていたというわけです。
予約の時ですが、窓口の方が「四国まんなか千年ものがたり」という列車をご存じとは限りません。私を担当してくれた方は、最初日付や駅名を入力しても「そんな列車はありません」状態でした。これは予約がとれなかった初回も、取れた2回目も同じことが起きました。時刻表を確認して「全部グリーン扱いなんだ」とつぶやいていましたので、予約される時には全席グリーンの列車です、と申し出た方が早いのかもしれません。それにしても予約できて本当にラッキーでした。
まとめ
「四国まんなか千年ものがたり」はグリーン扱いの観光列車だけあって、車両もサービスも大変レベルの高い観光列車だと思いました。アテンダントは7名ほど乗車していて、サービスが行き届いている印象です。お食事も美味しく、車窓も楽しめるので、払ったお金の分の価値はあると思いました。
JR四国には他にもグリーン扱いの観光列車があります。その中の一つ、「伊予灘ものがたり」もお食事が美味しくて感動した記憶があります。私が乗車した当時から車両が新しくなっているようなので、また乗りに行きたい観光列車です。
公式サイトや関連リンク
「四国まんなか千年ものがたり」の公式サイト
今回土讃線に乗ってみようと思ったのは、前年の10月に車で吉野川と四万十川沿いを走っていて、とても眺めの良いことがわかりました。この景色を鉄道の車窓から眺めてみたいと思ったからなのです。
旅の全体としては、岡山から四国に渡り、土讃線、予土線、予讃線を乗り継いで松山まで鉄道旅を楽しんでいます。そちらのお話はまた別記事で。