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2023年6月スイス旅#3 氷河特急エクセレンスクラス乗車記

 2023年6月にスイスを代表する観光列車である「氷河特急」のエクセレンスクラスに乗車したので、乗車記をまとめました。気になるお料理や車窓と、最大のハイライトであるランドヴァサー橋を見るのはどちら側の座席が良いのかをご紹介します。

氷河特急の概要

Glacier Expressという英語の名前を和訳すると氷河特急とか氷河急行となるわけです。この記事では氷河特急と表記します。

走行ルート

スイスのサンモリッツとツェルマットの間を走ります。距離は約290キロ、ここを約8時間かけて走行する、世界一遅い特急列車と言われています。座席に用意されていたパンフレットによると、平均時速は42km/hとのこと。

公式サイトにルート図や氷河特急の紹介ビデオがあります。

www.glacierexpress.ch

エクセレンスクラスは1日1往復

氷河特急は、5月中旬から10月末までは1日3往復ほど本数がありますが、冬の期間は1日1往復だったり春頃は2往復、あとはメンテナンスのため運休と言う時期もあります。

ただ、エクセレンスクラスの車両を連結している氷河特急は1日1往復のみです。1両しかなく座席数は20席。なので、予約がなかなかとりづらいです。今回はツアーであらかじめ予約が完了していたので、乗車することができましたが、帰宅後、2か月分くらいの予約を見たところ、ほとんどの日がNo Seat(満席)の表示が並んでいました。

2か月後の予約はすでにほぼ満席

ランドヴァサー橋が見える座席はどこ?

氷河特急は全席指定です。私達夫婦は下の座席表の51/52番の座席で向かい合わせに座りました。51/52番はサンモリッツを出発する時には最後尾の座席で、進行方向左側でした。ランドヴァッサー橋を通過する際、カーブの内側になり、進行方向左側の座席がランドヴァサー橋が見やすい席になります。

エクセレンスクラス座席表

エクセレンスクラスは通路を挟んで、左右に2席ずつなので、51,52のあとに53,54がありませんが、1等車は2人の向かい合わせシートと4人の向かい合わせシートというレイアウトで、1の位が3,4という座席があります。

1等車座席表

2等車は両側とも4人掛けの向かい合わせのシートレイアウトです。ただちょっと番号の振り方がかわっていますね。1の位が1~4で一つのボックスになっているかと思っていたら、1,2,3,8で4人掛けになっています。不思議なナンバリングです。

2等車の座席表

毎回サンモリッツを出発する時に、1の位が1番2番の座席が進行方向に対して左側なのかな?とも思ったのですが、氷河特急のサイトのFAQには以下のように出ていて、どっちサイドがランドヴァッサー橋の見える方向なのか、断定できないですね。

The direction of travel of the carriages is not known, as the carriages can be attached to the train in both directions. When booking for more than one person, we recommend reserving opposite seats.

サンモリッツ駅にて

私はサンモリッツを8:51に出発する氷河特急に乗りました。自分のスーツケースをゴロゴロ転がしながら、ホームに向かいます。

地下通路を通って氷河特急のホームへ

サンモリッツを出発する時、エクセレンスクラスは最後尾でした。一番後ろの車両まで行くと、入り口にはレッド・カーペット。ここでスーツケースなどの大きな荷物を預けます。その時に、氷河特急のネームタグをつけてもらいました。

まずはチェックインして荷物を預ける

出発まで少し時間があったので、機関車と記念撮影したり。この機関車は途中、クール駅まで列車を引っ張ります。

機関車と記念撮影

出発時間が近づいてきたので、車内へ。こちらがエクセレンスクラスの車両の内部です。1人掛けの座席が向かい合わに並んでいて、全員が窓側というレイアウトです。

エクセレンスクラスの車内

エクセレンスクラスは編成の端っこなので、他のクラスから人が入ってくると、アテンダントさんが「この車両はエクセレンスクラスのお客さん以外は入れません」と案内していました。トイレもエクセレンスクラス専用に1つついています。

ここから先はエクセレントクラスのお客さんのみ

サンモリッツとクールの間

出発時間がきて、いよいよ出発します。

いよいよ出発

サンモリッツの標高は1715m。6月中旬の旅でしたが、この辺りはお花がたくさん咲いていました。

サンモリッツ出発間もなくの車窓

出発して間もなく、アテンダントさんが飲み物の注文を取りにきてくれます。私はオレンジジュース、旦那さんはコーヒーをお願いしました。向かい合った座席のまん中にテーブルがあり、そのテーブルの銀色の部分がグラスを置く部分です。等間隔に細く盛り上がった部分がありますが、列車が右に左に曲がる際、グラスがつつつーっと滑るのをこの盛り上がりがうまい具合に防止していました。素晴らしい設計だと思いました。

グラスを置く場所は絶妙な設計

シュピナス(SPINAS)という小さな駅を通過しました。

シュピナス駅を通過すると間もなくアルブラトンネル

シュピナス駅と次の駅のブレダ(PREDA)駅の間は、全長5.8kmのアルブラトンネルで、ヨーロッパで最も高地にあるトンネルです。トンネルの上にあるアルブラ峠は分水嶺になっていて、南側はドナウ川に流れて黒海へ。北側はライン川から北海に注ぎます。

アルブラトンネルを抜けると、クール駅に向けてどんどん標高を下げていきます。アルブラトンネルを出た先のブレダ(PREDA)駅の標高は1792mありますが、その次の駅のベルギューン(BERGUN)駅までの12.6kmの間に、標高を416m下げます。Wikipediaに標高差を示す図がありました。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d5/Diagram_Albula.png

               出典: Wikipedia レーティッシュ鉄道

短い距離の間にぐっと標高を下げるため、ループが連続します。Google mapで見ても、かなりグルグルしたルートです。

 

ベルニナ線のようなオープンループではなく、トンネルとの組み合わせですが、同じところをぐるぐる廻ったり、ヘアピンカーブで抜けて行くので、さっき見た景色が反対側にまた見える、なんていう車窓が続きました。

ループを使って高度を下げていく区間

さっき通過した橋梁が見えたり。

グルグルルートならではの光景

この辺りのストリートビューは、実際に列車の上から撮影した映像も確認できます。なかなかおもしろいです。

牧歌的な景色の中を進む場面もあります。

穏やかな車窓

この辺りからお食事の準備が始まり、おしぼりがでてきたり、シャンパンが注がれたりします。右に左にカーブする車内で、アテンダントさんが慣れた手つきでサービスして行くのはすごいです。グラスの中身が傾いているのがわかります。

カーブするのでシャンパンも中身が傾ている

ランドヴァッサー橋へ

グルグルルートを過ぎて、フィリズーア(FILLISUR)駅を過ぎると、いよいよランドヴァッサー橋が近づいてきます。フィリズーア駅を過ぎた先のトンネルを抜けると、そこがランドヴァサー橋で、乗っていると空中に放り出されたような感じでした。

私達はツアーの添乗員さんが、このトンネルを抜けるとランドヴァッサー橋です、と案内していただけたので、見逃しませんでしたが、知らずに乗っているとあっと言う間の通過かも。

サンモリッツからツェルマットに向かう時は、エクセレンスクラスの車両は最後尾なので、トンネルを出てすぐ先頭車両方向を撮影すると、橋の一部も写りました。橋は半径100mの弧を描いているので、内側に乗っていた方が橋が見やすいです。サンモリッツからは進行方向左側が橋の内側です。

ランドヴァッサー橋を通過

動画も撮ってみました。


www.youtube.com

列車に乗っていると空中に飛び出したような感覚でしたが、それもそのはず、この橋の橋脚は高さが65mあります。車内からは橋脚の根元までは見えませんでしたが、Googleのストリートビューなら下から見上げることができます。この橋の根元まで行くツアーもあるようです。

ランドヴァッサー橋を通過したので、あとはパノラマウィンドからの景色と料理を楽しみながらツェルマットまでの鉄道旅です。

お食事はまずはシャンパンなどと一緒にいただくアミューズです。ミックスナッツにタルトやミニチーズケーキが乗っていました。

アミューズ

ライン川に沿うと間もなくクール駅

氷河特急はやがてライン川に沿うように走ります。

ライン川

ライン川に沿うようになると、間もなくクール駅に到着しました。

クール駅

クール駅では進む方向が反対となり、今度はエクセレンスクラスの車両が先頭です。機関車をエクセレンスクラスの車両の前につけます。

機関車を連結

クールからアンデルマットまで

クール駅を出発すると、前菜のお魚料理が運ばれてきました。燻製にされたマスとのこと。

前菜の魚料理

列車はしばらくライン渓谷沿いを走ります。

ライン渓谷沿いを走る

エクセレンスクラスでは1人に1台タブレットが用意されていて、食事のメニューや今どこを走っていて、こんな見どころがある、という情報を提供してくれます。

タブレットの情報

お料理はスープがサーブされました。最初にドライフラワーとクリームだけが入ったお皿が運ばれてきて、そのあとアテンダントさんがポットでスープを注いでくれます。


www.youtube.com

グリーンピースの香がする大変美味しいスープでした。

グリーンピースとミントのスープ

ライン川を離れ、山と草原の中を進みます。緑の草原を牛が一列になって歩いている光景が見えたり。

牛の行進

手前の草原と奥の厳しい岩山の対比が楽しめる景色があったりと、飽きません。途中のディーゼンティス(DISENTIS)駅で機関車を交換しているようですが、私は気が付きませんでした。この先、アプト区間があるのです。

草原と高い山並み

いくつか町を通過しながら、列車は徐々に標高を上げていきます。

いくつかの町を通過しながら標高をあげていく

お料理はメインのお肉料理がサーブされました。なかなかボリュームがあります。

メインのお肉料理

やがて列車は氷河特急の走行区間の中で最も標高が高い、オーバーアルプ峠(2023m)にさしかかります。間近に切り立った岩山が迫り、迫力あります。

オーバーアルプ峠付近

峠付近のオーバーアルプ湖に沿って走ります。

オーバーアルプ湖

この先はアルプスの十字路とも呼ばれるアンデルマット(ANDERMAT)に向けて標高を下げていきます。急こう配を下る前に、ネッチェン(NATSCHEN)駅で列車交換のための停車がありました。ずっと座席に座ったままだったので、乗客の皆さんはホームに下りてストレッチしたりして体をほぐしていました。

ネッチェン駅で列車交換待ち

この辺りは勾配がきついので、アプト式でした。この先のレールが見えないほど下っているのがわかります。

この辺りはアプト式

下から反対方向の列車が上ってきました。車両のデザインから察するに、あちらも氷河特急のようです。

下から上がってくる反対方向の列車

列車交換を済ませてこちらも出発。停車していたネッチェン駅の標高が1843m、これから向かうアンデルマット駅の標高は1436m。下にアンデルマットの駅が見えてきましたが、この距離の間で下って行くので、列車は蛇行しながら下りて行きます。

写真中央がアンデルマット駅

アンデルマット駅に到着しました。ここでも少し停車時間がありました。

アンデルマット駅

アンデルマットは今大きなホテルなどの建設ラッシュの様相です。添乗員さんによると、建築の制限が変更になり、この先新しい建物が建てられなくなるのだとか。なので法改正の前に駆け込みで建てているそうです。スイスも新しい建物を増やすのではなく、ストックの建物を活用するという環境に配慮した政策を進めているのだと思いました。

アンデルマットからツェルマットへ

朝サンモリッツを出発してからアンデルマットまで、もう5時間も氷河特急に乗っています。終点のツェルマットまで、以下の地図のようなルートを通り、あと3時間ほどかかります。

フルカ峠

あと3時間も! と思いますが、お料理も進みがゆっくりで、この先はチーズとデザートがサーブされます。アンデルマットを過ぎると、長いトンネルに入り、景色は見えなくなってしまいます。このトンネルは新フルカトンネルで、全長は1万5407mあります。かつてはトンネルの上にあるフルカ峠を越えていたそうですが、冬季の運行に支障があり、トンネルが1982年に開通しました。フルカ峠を越える際に、ローヌ氷河に手が届くほどの距離を走ることから、氷河特急の名前が付いたとききました。その景色が見られないのは残念ですが、難所だと思うのでトンネルによる通過も致し方なしです。

実はフルカ峠は007の聖地でもあります。ゴールドフィンガーの中で007がアストンマーチンに乗ってフルカ峠を走るシーンがでてくるのです。トンネルの中でどんなシーンだったかな、などと思い出していました。

warnerbros.co.jp

もう一つ、フルカ峠には名物のSLが復活しています。フルカトンネル開通後に廃線となった氷河特急の線路を活用して、ここにSLを走らせています。旧氷河特急線、乗ってみたいものです。

www.myswitzerland.com

氷河特急の旅も終盤

さて、氷河特急の旅も終盤。お料理はチーズとデザートがサーブされます。

チーズの盛り合わせ

こちらがデザートとハーブティー。これでエクセレンスクラスのお食事は終了です。

デザートとハーブティー

列車はフィスプ(VISP)駅を過ぎると方向を左に変えて、ツェルマットに向けフィスパ川沿いを上って行きます。

ツェルマットに向かって川沿いを上る

車窓に雪をいただく山並みが見えてきました。下の写真の右側のとがった山は、ロープーウェイの支柱が見えるので、クライン・マッターホルン(小さなマッターホルンという意味)だと思います。

雪を頂く山

サンモリッツ駅を朝8:51に出発して約8時間。17時過ぎにツェルマット駅に到着しました。到着時の写真を撮りたかったのですが、この後ゴルナーグラード鉄道に乗り換える必要があり、その乗り換え時間がわずかだったため、大急ぎで下車してゴルナーグラード鉄道に向かったので、到着時の写真はありません。下の写真は後日撮影したツェルマット駅です。

ツェルマット駅

お土産がもらえる

エクセレンスクラスに乗ると、乗車の際に荷物の氷河特急のロゴ入りネームタグをつけてもらえ、ツェルマットが近くなった時に、名物の傾いたグラスをお土産にいただけました。添乗員さんによると、毎度この2つがいただけるとは限らないそうですが、今回は両方もらえて嬉しかったです。

エクセレンスクラス乗車記念のお土産

まとめ

スイスを代表する観光列車の一つ、氷河特急に全線乗車することができました。しかもツアーに組み込まれていたのはエクセレンスクラスで、シート数が少なく、予約がとても難しいシートの一つです。ツアー会社がまとめてドンとあらかじめ確保してくれ、前後の行程も組み立ててくれてあるので、これはツアーを利用するメリットだと思いました。

サンモリッツとツェルマットの間は8時間もかかりますが、移り行く景色は素晴らしく、エクセレンスクラスだと長時間にわたって素晴らしいお料理も出てくるので、私のような景色を眺めながら列車で食事を楽しみたい人にはとても嬉しい列車です。一方ずっと座っているのが苦痛で、景色も飽きちゃう、みたいな人にはつらいかもしれません。サンモリッツとツェルマットはスイスの東西に位置していて、氷河特急以外を利用するにしても結構時間がかかっちゃいます。下の候補列車の上から2番目が氷河特急です。

サンモリッツからツェルマットへの鉄道の時刻表

スイス国鉄の時刻表、ホント便利です。スイス旅の計画を立てる時には是非活用しましょう。

www.sbb.ch

エクセレンスクラスは予約がとれれば是非乗車したい列車ですが、お値段も結構かかります。見える景色は一緒なので、1等車や2等車を選ぶのも良いし、途中アンデルマットあたりで一泊するつもりで、沿線で途中下車したり、フルカ山岳鉄道に乗ったりしながら移動するのも楽しそうです。

www.dfb.ch

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