美人の湯としても有名な下呂温泉。草津・有馬と並んで日本三名泉の一つでもあります。下呂温泉にある古い木造建築で有名な湯之島館に泊まりました。重要文化財の指定を受けている本館には昭和天皇もお泊まりになったという老舗旅館です。一人旅プランもあり、今回は1泊2食で28,000円とちょいと高めですが、大好きな木造3階建てなので奮発しました。
下呂駅からはシャトルバスで
鉄道で下呂駅に着いた場合は、駅から宿の送迎バスを利用できます。高山本線の特急ひだの時間に合わせて、駅前にいろいろな旅館の送迎バスが停まっています。湯之島館のバスは紫のボデイですぐわかります。
金曜日でちょうどチェックインの時間にあうせいか満席。私以外は全員中国人。みんなよく調べて来るなーと関心。とっても大きなスーツケースを皆さんお持ちでした。春節休みが近いからかな。
駅から宿までは10分弱。距離はそんなにないけれど、湯之島館は高台というか山の斜面に建っていて、かなり急な上り坂を上らないとならないので、バス利用が良いです。下の写真の黄色の丸のあたりが湯之島館です。結構標高差がありそうです。
急な坂を上って宿の玄関に到着です。重厚な雰囲気の玄関。奈良ホテルの玄関も素敵だったけれど、こちらもまた違った趣で歴史を感じさせます。
バスが宿に着くと、中国人の皆さんは下駄箱の説明などに時間がかかり、その隙にお先にチェックイン。お部屋に案内してもらいました。
チェックインの手続きをすると、フロント横のロビーで待つように言われ、その間に女性は色浴衣を選びます。
ロビーにはいろりがありますが、火は入っていません。レトロな公衆電話があったり、大きなのっぽの古時計もありました。
お部屋
湯之島館には、昭和初期に建てられた古い本館のお部屋以外にも、離れや、新しい鉄筋の建物、露天風呂付きのお部屋などいろいろなお部屋のプランがあります。重要文化財のお宿なので、今回のお部屋は本館のお部屋を選びました。案内されたのは3階の小町の間というお部屋でした。
踏み込み3畳、居室が8畳+縁側です。障子の向こう側は縁側です。
縁側にはテーブルとイス。
縁側からはお庭を見ることができます。高台に立つ宿なので、杉の木の間から下呂市街もみえます。
上の写真の左手にちょっと梯子のようなものが見えますが、これは避難用の梯子のようです。ここから避難することになったら、ちょっと怖いかも。
縁側の片側にトイレがついています。とっても狭いトイレで、足元はスリッパがつっかえてしまうほどですが、夜中にトイレに行くことがある私には部屋にトイレがあるのは助かります。トイレはもちろんウォシュレットです。
縁側の反対側、つまり入り口と踏み込みはこんな感じ。約3畳でしょうか。
踏み込みのスペースに洗面台があります。お湯も出ます。
バスタオル、手ぬぐい、歯ブラシはありますが、部屋にドライヤーがありません。本館のお部屋はフロントに言うと貸してくれる方式でした。
部屋に案内されると、案内の方がお茶をいれてくれます。お茶請けはこちら。
部屋のお茶のセットは、緑茶とほうじ茶の2種類。夜はほうじ茶を飲みたい私には嬉しいです。
部屋には電気ポットがあるので、いつでも熱いお湯があるのも便利。氷水が入ったポットも持ってきてくれます。
部屋にwi-fiもあり、ネットへの接続もサクサクでした。接続のPWは部屋の中に案内がありました。
私が泊まった部屋がある本館3階のレイアウトを見ると、私の部屋はこれでも小さいほうなんですね。他の部屋は6畳+10畳という部屋もあります。
古い木造建築だと、隣の部屋の声が聞こえてくることがあります。今回はどこかの部屋の子供の声が少し聞こえてきましたが、夜は静かでした。
お風呂、まずは家族風呂へ
一息ついたので早速お風呂へ。美人の湯で有名な下呂温泉を堪能したいと思います。湯之島館には大浴場以外に、空いていればいつでも使える家族風呂が4つあります。予約不要と言うことは、入れる保証もないわけで、他のお客さんが部屋でくつろいでいる隙に入ってしまおうと、まずは家族風呂から入ることにしました。湯之島館は古い旅館によくある迷路のような館内ですが、案内に従っていけば大丈夫。湯之島館の大浴場にはバスタオルが用意されていますが、家族風呂にはタオルの用意はないので部屋のバスタオルとお風呂用タオル持参で向かいます。
こんな階段を下りていきます。
足元がタイル貼りでレトロ感バリバリ。ちょっと古い病院のような印象。この廊下の右側に4つ扉があり、それぞれ中が趣の違う家族風呂になっています。
ステキな空間だったので、反対側からも一枚。
玉の井泉
一番手前の扉には玉の井泉(岩風呂)とあります。
このお風呂に入ってみましょう。扉から入って、内側からカギをかけます。
畳の小部屋。くつろぐ椅子まであって、ずいぶん広い脱衣場です。扇風機はありますが、暖房器具はなく、室内はひんやりした感じ。冷房もなさそうなので、夏は暑いのかもしれません。
早速浴室へ。ここは岩風呂の設えです。2人で入るのにちょうど良い広さ。一人の私はせーせーと足がのばせそうです。チェックインしたばかりでまだ誰も使用していないせいかお湯がムチャクチャ熱い!
仕方ないので、青いホースから水を出してうめましたが、それでもあっと言う間に体の表面が真っ赤になるほどでした。こちらの体もまだ冷えているのでよけい熱く感じました。
どの浴室にも、カランとシャワーは設置されていて、シャンプー、コンディショナー、ボディソープが置いてあります。
ここでシャンプーしたり体を洗ったりしたのですが、シャワーの位置が浴槽に近くて、シャンプーやボディソープの泡が浴槽に入りそうで気を使いながら、になりました。シャンプーや体を洗うのは大浴場でやって、家族風呂はつかるだけ、の方が良かったかも。
ドライヤーはこういうタイプで、風量が弱く、ちょっと使いづらい。結局乾かさずに出ました。
化粧水はありますが、乳液はありません。男性にはヘアトニックやアフターシェーブローションが用意されています。ブラシも使い捨てタイプのがありました。
不老泉
玉の井泉を出た後、まだ誰も家族風呂には来ていないようだったので、もう一つ入ってみました。今度は不老泉です。
こちらはこじんまりとした浴槽。
そしてこちらのお湯もあちちっで、あっという間に体が真っ赤に。水でうめて入りました。
脱衣場にはこんな張り紙がしてあります。熱く感じる人は水を出して入るのですが、そのまま止めずに出てしまう人があるようです。(信じられませんが!)
銀嶺泉
3つめの家族風呂は、銀嶺泉。
銀嶺泉には、食事をした後に入りました。その頃になると他のお客さんも家族風呂に入っているようで、この時にはそれほどあちちっではなかったけれど、それでも私には十分熱いお湯でした。
七宝泉
最後の一つは七宝泉。こちらはさすがにくたびれて入りませんでした。
でも浴室の写真だけup。他の方のブログなどを見ると、こちらのお風呂は気泡風呂らしいです。
家族風呂はいずれも室内にあり、窓がなかったりあっても外は見えないので、解放感はありません。一人で入れるので、静かにお湯につかるにはよいですね。泉質の表示はなかったけれど、たぶん大浴場と同じなのだと思います。
大浴場
つづいて大浴場をご紹介。大浴場は「飛山之湯」と「山渓谷之湯」の2箇所。夜中に男女の入れ替えが行われます。下の写真は「飛山之湯」。到着した日はこちらが女湯でした。
※湯之島館のHPから借用
「飛山之湯」の露天風呂は、こちらの浴室から階段を上って一つ上の階へ行くレイアウトでした。
※湯之島館のHPから借用
「山渓之湯」もほぼ感じは「飛山之湯」と同じです。
チェックアウト前に「山渓之湯」の露天に入りました。誰もいなかったので写真をパチリ。夜に雪が降ったので、周囲の木に雪が残っていて、思いがけず雪見風呂となりました。
深夜2時から3時に男女入れ替える方式で、その間は大浴場の使用はできません。
どちらの大浴場に行くにしても数段の階段を下りることになります。
お風呂に行くためのエレベーターがないので、足が悪いと行きづらいかも。それは家族風呂も同じですね。
脱衣場は外が見えて解放感があります。
鍵付きロッカーがあるので、部屋の鍵も安心。
また大浴場にはバスタオルが用意されているので、部屋からはフェイスタオルの持参だけで大丈夫。
洗面台に用意されているものは、まずはドライヤー。家族風呂のドライヤーとは違いますね。化粧水のほかに乳液の用意もありました。あとは手とかかと用のクリームも。家族風呂よりいろいろそろっています。
くしと綿棒も。
大浴場は脱衣場も浴室も浴槽も広くてのびのび入れます。それだけ多くのお客さんが来るのかもしれませんね。ただ泉質にはちょっと疑問が。成分表はこちら。泉質はアルカリ性単純温泉と記載されていました。
下呂温泉はアルカリ性でぬるぬるした化粧水のような温泉と聞いていたような。成分表でもPHは8.9となっていて、かなりのアルカリ性です。でも湯之島館のお風呂ではあまりアルカリ性の温泉だな~という感じがしません。下呂駅のホームにあった手湯は触っただけで、ぬるぬる感がわかったのに。成分表横には加水や循環、塩素消毒に関する情報も出ていました。
循環式と塩素による消毒をしているとありました。ぬるぬる感がしないのはこのせいなのかも。温泉街のあちこちに温泉が湧いている噴泉塔があり、そういうところのお湯は触るとぬるぬるしているので、そういうお湯のお風呂に入ってみたいものです。帰宅後ネットで調べると、どうやら下呂温泉の旅館はみんな同じ形式のようで、自家源泉を持っている宿でも共同の湯タンクから温泉をもらっているとか(真偽のほどはわかりません)。だとしたら、どちらの宿に行っても大差はないのかもしれないです。
脱衣場には冷水器が設置してあるので、湯上りに冷たいお水を飲むことができます。旅館によっては、ピッチャーに入った麦茶とか、ゆず茶みたいなちょっと風味のある冷たい飲み物が用意されていたり、アイスキャンディーがあったりしますが、そういう類のものは自販機で買う仕組みのようです。ハーゲンダッズのアイスクリーム自販機が大浴場の近くにありました。
山の足湯
湯之島館の中には足湯があります。本館から家族風呂に向かう途中にありました。テラスに設置されています。
フェイスタオルが用意されているので、タオルを持っていなくても足湯に入れます。
湯気はもうもうと立っているのですが、思いのほか温度はぬるくて、なかなか暖まりません。家族風呂はものすごく熱かったので、ちょっと意外。外が冷えていたので早々に退散。2回足湯に入りましたが、同様にぬるかったので、もともと温度が低いのかも。熱すぎて入れないよりは良いかなぁ。
刺繍のタオル
ところで、温泉旅館というと、旅館名が入ったタオルがついてきますよね。泊まると記念に持ち帰ってくるのですが、湯之島館のタオルは旅館名が印刷ではなく刺繍になっていてびっくり。こんなタオル、初めて見ました。これも湯之島館のこだわりなのかな。タオルは印刷でも良いから、ぬるぬる温泉に入りたかったな~。あるいはアイスのサービスでも良いかも。
食事
温泉旅館の楽しみは温泉だけでなく食事も! 湯之島館の食事は、夕食は部屋食、朝食は朝食会場でいただきます。
夕食
夕食は17時以降30分刻みで用意できるようで、部屋に案内された時に何時にするか聞かれます。私は18時でお願いしました。係りの方が10分くらい前にやってきて、部屋のテーブルの上にセットをしてくれました。メニューはこちら。たくさん出てきそうです。
私は貝が苦手なので、事前に宿に伝えておいたら、前菜に入っている蛤は鴨肉に変更してくれてありました。ありがたい。
お造りはマグロとカンパチで、海の魚なんですね。
飛騨牛をくるんだお寿司。通常は焼かずに食べるらしいのですが、湯之島館では焼いていただくのだそうです。
開くとこんなお寿司が入っていました。
つづいて牛しゃぶをいただきます。見事な霜降り肉です。
先に肉の下にある野菜を入れてくださいということで、野菜を入れます。なんでもトマトは下呂の特産だとかで、トマトもゆでて食べてね、とお給仕の男性に言われ、その通りに。鍋の向こうのお相撲さんが気になりますね(笑)。
野菜が煮えた頃、お肉もしゃぶしゃぶ。
さすが本場もん! 美味しいです。さらにアマゴの塩焼きも。
さらに煮物もでてきます。
写真で紹介したお料理以外に、お吸い物、お味噌汁、ごはん、デザートがでてきて、品数がすごく多い夕食でした。なんとか食べきりましたが、少しお値段さげて、小食プランがあると、私の母くらいの年寄りには良いかも。その世代(80歳くらい)は、量を食べられない方もいて、かといってたくさん出てきたお料理を残して捨てる、というのはあまり気分が良い物ではないと思うのです。こちらの旅館は夜食のラーメンとかおにぎりを食べられる場所が館内にあるので、足りない人にはそういうところで調整いただくという手もあると思いました。
お料理は一度に出てくるのではなく、3回くらいに分けて持ってきてもらえるので、温かい料理は温かくいただけるのでとても良かったです。品数があって美味しい料理でも、一度に全部届いてしまうと、何かが冷めてしまい残念ですからね。
朝食
朝食は7:00から9:00の間の好きな時間に、新しい建物の8Fにある広間でいただきます。
品数も豊富で、私が大好きな温泉卵もありました(でも冷たかった)。
右上の鮭は生なので焼いていただきます。
会場の外のロビー風な場所にはコーヒーと紅茶が用意されていました。
夜に雪が降ったので、白くなった景色を見ながらコーヒーをいただきました。新聞もありました。
朝食の内容としては、だいたいこんなものかな、という感じ。大広間で食べるので、なんとなく足元が寒いのが気になりました。テーブルのすぐ脇にファンヒーターがあったのですが、まだお客さんがいない私とは逆方向を向いて温風の恩恵にあずかることはできず。ひざ掛けでもあると助かったのですが。
その他の食事など
湯之島館には倶楽部やラーメンなどの夜食を提供するお好み処があります。ここからルームサービスもとれるようでした。写真は昼間に家族風呂に行く途中に撮ったので営業前のお好み処です。
1階にはコーヒーラウンジがあり、コーヒーを自由に飲むことができます。部屋に持って帰れるカップも用意されていました。
有形文化財の建物
今回の旅でこちらの宿を選んだのは、何といっても有形文化資産の指定を受けている、木造三階建ての建物に惹かれたからです。うーん、こんな建物を建ててしまう昔の人はなんて素晴らしい美点感覚と技術を持っていたのだろう。到着した日は晴天でまったく雪はなかったのですが・・・
夜が明けたらこの雪景色。もう最高です。
横に長い建物で全体を一枚の写真に収めきれず、動画で撮ってみました。
赤い実を手前に入れてもう一枚。
別の角度からもう一枚。
館内を歩くと窓からは屋根が複雑に重なりあっている様子が見えたり
建物を支えるために木を組んだ基礎部分が見えたり
古い木造建築の美しさを存分に味わえます。本当に素敵な建物で、泊まれて良かったと思いました。
館内の様子
もちろん館内もレトロ館たっぷり。ロビーとお部屋をつなぐ廊下も素敵な感じ。
展望台からは下呂市街を見渡すことも。
展望台から階段を上がると、昭和天皇や平成の天皇陛下がお泊りになったお部屋もあるのです。写真が展示されていました。
こんな具合に館内は広いので、スタンプラリーが行われていて、全部スタンプ押すと、お好み処での飲食の割引などに使える仕組みです。
まとめ
さすが有形文化財の木造建築、という感じで、古き良き建物を堪能できました。食事はちょっと特徴に欠けるかな、という印象ではありますが、品数の豊富さが十分カバーしてくれています。スタッフの数が多いので、サービスも行き届くし、すれ違う時にはきちんと挨拶してくれます。気になったのは泉質と、中国人観光客の多さでしょうか。特段何か楽しめる場所があるわけではない下呂温泉に、こんなにもたくさんの中国人観光客がいるとは思ってもみませんでした。シャトルバスに乗っても日本人は私だけ、大浴場でも聞こえてくるのは中国語ばかり。特別マナーが悪い人がいるわけではなかったのですが、たまに大きな声で話しながらエレベーターに乗っていたり、廊下を歩いたりするのは気になりました。もう一度泊まりたいか、と言われると、建物は申し分ないですが、温泉が期待していたのと違うのでちょっと悩みます。ぬるぬる、とろとろの温泉を提供する宿があるのなら、そちらに泊まってみたいかな。
こちらは下呂駅上りホームにある噴泉塔。お湯に触ると、ぬるぬるした感触です。このお湯につかってみたいです。