「伊豆の踊子」や「雪国」の作者でノーベル文学賞を受賞された川端康成氏が長年通われた宿として有名な宿、湯本館に2人で泊まって温泉を楽しみました。老舗旅館とあって、建物に古さはありましたが館内は丁寧に掃除が行き届き、ご主人・女将さん・スタッフの皆さんの心のこもったおもてなしがとても心地よかったです。どの湯船も源泉かけ流しの温泉が新鮮で何度も入りたくなるお湯でした。お値段は2人で宿泊して、1泊2食付きで1人17,000円くらいです。
湯本館の概要
- 天城湯ヶ島温泉の中にあり、狩野川の渓流沿いに立つ老舗の温泉宿。川端康成氏をはじめ、数多くの文豪が愛した宿。
- 部屋数は8室と少ないが、男女別の内湯、家族風呂、渓流沿いの露天風呂と浴槽が多いので、あまり混み合わずゆっくりと温泉を楽しめる
- 無料のWifiあり。チェックイン15:00、チェックアウト10:00。
公式サイト
客室
湯本館にはお部屋に檜の温泉風呂がついたお部屋もありますが、今回は狩野川の渓流を眺められる8畳の「もみじ」というお部屋に宿泊しました。障子の向こうには広縁があります。
室内にはテレビもあります。床の間にコンセントがあります。お布団は床の間側が枕側になったので、寝ながらスマホもできました。pwなしのフリーwifiが使えました。
障子の細工が美しい。
広縁の窓はよく磨かれていて、狩野川の清流を眺めることができます。が、夏は西日があたり、部屋のエアコンでは冷房がしきれず、眺めは涼し気ですが、広縁自体はちと暑いです。下の写真の右端に東屋が見えますが、露天風呂の脱衣所です。
建物は古いけれど、部屋のトイレはウォシュレット、エアコンも個別設定で助かります。蒸し暑い日のチェックインでしたが、エアコンのおかげで快適に過ごせました。
冷蔵庫は旧式タイプで、抜くと課金されるやつ。冷蔵庫の扉には「持ち込みはお断りします」とあったのですが、持ち込みのペットボトルも冷やせないのかな?
お部屋のアメニティはごくごく基本的なもので、浴衣、バスタオル、お風呂で使う宿名入りのタオル、歯ブラシ、コットン、カミソリです。
テーブルの上には伊豆の踊子の本も用意されていました。
お部屋に案内された後、係の方が冷茶を運んで来てくれたので、お茶請けのお菓子とともに一息つきました。
お部屋にはお湯が入った旧式のポットと緑茶が用意されていて、夕食時にお布団を敷く時に、お湯のポットと急須は交換してくれて、冷たい水も用意されます。
ただこのお茶のセットは、朝食を食べている間に片付けられてしまい、朝食後にお部屋に戻ってから、出発までの間にお茶でもと思っても飲めなかったのが残念です。せめてお湯のポットは置いておいてほしかったと思いました。
お風呂
湯本館のお風呂は、男女別の内湯に加えて、川沿いに露天風呂、内湯のみの家族風呂が1か所あります。内湯は夜中も入れますが、露天風呂は夜中は安全のため、使用できません。
男性用の大浴場
大浴場は男女別に各1か所ずつありますが、浴室の広さにとっても差があり、大きい方が基本的には男性用ですが、女性のために夜8時から10時の2時間は男女が入れ替わります。ゆったり流石に浴槽の中は一部浅くなっている場所があり、腰かけて半身浴をしたり、寝湯のように利用することもできます。
温泉の成分がついた湯口は天井からスポットライトを浴びていて、新鮮なお湯が投入されています。
投入された分のお湯が浴槽からザバザバと流れて行くのがわかります。
女性用の大浴場
一方通常は女性用の大浴場は、男性用に比べるとかなりこじんまりしています。3~4人でいっぱいという感じでしょうか。ただ客室数が少なく、家族風呂や露天風呂もあるので、幸い混み合うことは少ないかも。私は独泉でした。
脱衣所は男女とも同じようなつくりで、広さが異なります。洗面台はありますが、ドライヤーはなく、お部屋のドライヤーを使いました。脱衣所にはエアコンがなく扇風機のみ。夏の蒸し暑い時間帯は湯上りから汗をかいてしまいました。
脱衣籠の棚の横には貴重品を入れる鍵付きロッカーの用意がありました。
川沿いの露天風呂
川沿いの露天風呂は貸し切り制です。ロビーにスリッパがあれば誰かが使用しているというサイン。
スリッパを外履きに履き替えて、階段を下りて川の方に向かいます。東屋が脱衣所です。
脱衣所からさらに数段石段を下りたところに露天風呂があります。
目の前を狩野川が流れています。川を渡ってくる風が気持ち良いです。狩野川と言えば鮎釣りですが、ここを釣り人が上がってくるようなことはないのかな。
露天風呂は川沿いにあり、安全のために夜間は使用できません。朝は6時頃から入れます。
家族風呂
家族風呂は男性用大浴場の隣にあり、空いていればいつでも、何度でも無料で利用できます。内側から鍵をかけて入るシステムです。浴槽はこじんまりとしていますが、2人くらいはつかれそうです。カランは1か所のみです。
泉質
こちらの宿の温泉成分表によると、泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉とあります。さらっとした肌触りでした。こちらの宿も含めて、湯ヶ島温泉にある宿はたいていお部屋のお風呂も含めて源泉かけ流し。成分表からはわかりませんが、湯ヶ島温泉は湯量が豊富なのかもしれません。
お食事
お食事は夕食・朝食ともに広間のようなお部屋で、他のお客様とともにいただきます。他のお客様とは簾で仕切られているので、会話などは聞こえてきますが、目線などは気になりません。テーブルと椅子のセッティングなので、年配の方にも安心なのは嬉しいです。夕食も朝食もかわった食材や高価な食材は出てきませんが、丁寧に調理されたお料理で、いのしし肉やワサビは天城湯ヶ島らしさを感じるお料理でした。
夕食
あらかじめ前菜などのお料理はテーブルにセットされていて、席に着くと温かいお吸い物や冷たいお造りが運ばれてきました。
こちらはお造り。小鉢の中はマグロなのですが、さくではなく、細かく切って山芋がかかっていました。
コンロの上の陶板焼きは、天城湯ヶ島らしく、いのししのお肉です。いのしし肉は硬いイメージがありましたが、肉を薄切りにしたものをまとめてあり、食べやすかったです。こういう工夫は嬉しいです。
狩野川と言えば鮎。ということで、鮎の塩焼きは焼き立てが出てきました。蓼酢でいただきます。
つづいて夏野菜の冷やし鉢。さっぱりといただきます。
このあとご飯、赤だし、香の物なのですが、ご飯はわさびと鰹節を乗せて、お醤油をかけていただくわさびごはん。こんなにたくさんの生わさびは初めてみました。
最後にデザートです。
朝食
朝食は7:30~8:30の間でだいたい30分刻みでスタート時間を選べます。時間になったら夕食を食べた会場の同じ席に向かいます。朝は鮎の干物が用意されていました。鮎を干物はなかなか珍しいかも。初めていただきました。
館内
川端さんのお部屋と伊豆の踊子
川端康成氏が長年通った宿ということで、館内には川端康成氏が逗留された部屋がそのまま残されています。渓流側とは反対側のお部屋で4畳半のお部屋でした。
直筆の原稿の展示も。
湯本館で過ごす川端康成氏と言えば、この写真。伊豆の踊子の小説の中にも、「湯ケ島の二日目の夜、宿屋へ流して来た。踊子が玄関の板敷で踊るのを、私は梯子(はしご)段の中途に腰を下して一心に見ていた」という部分があります。
この階段は今ももちろん残っています。
この階段に腰かけて記念撮影するお客さんも多いのだとか。
伊豆の踊子にちなみ、館内には映画の伊豆の踊子にまつわる写真なども展示されています。私の記憶にあるのは山口百恵さん主演の映画です。
建物
こちらは玄関です。駐車場から数段石段を下りて玄関です。出発時には女将さんとスタッフの方が雨の中お見送りしてくださいました。
こちらはロビー。宿帳の記入はこちらで行いました。
アクセス
公共交通機関で向かう場合、最寄りの鉄道の駅はいずっぱこの愛称のある伊豆箱根鉄道の終点、修善寺駅です。ここから東海バスに乗ります。河津方面行に乗ります。
湯ヶ島温泉の周辺には伊豆の踊子や天城越えにまつわる観光スポットも数多くあります。
東海バスのサイトに時刻表があります。
まとめ
建物は明治時代からのもので歴史を感じましたが、お掃除が行き届いていて大切に使われている感じがしました。予約した後すぐに宿のご主人から確認のお電話をいただいたり、係の方がいつも笑顔で対応して下さり、気持ち良く過ごせました。朝食の後、お部屋のポットやお茶セットが下げられてしまっていたのが唯一残念なことでした。湯船は全部で4つありますが、そのすべてがかけ流し。湯ヶ島温泉は湯量豊富な温泉のようで、他の宿も源泉かけ流しをうたっています。今まで近すぎて湯ヶ島界隈に泊まりに来たことがなかったのですが、湯本館以外の宿についても口コミがよく、派手な温泉街ではないですが、どの宿に泊まっても気持ち良く過ごせそうな期待があります。湯本館には一人旅プランがなさそうなので、今度は一人で別の宿にも泊まってみようと思います。
湯ヶ島温泉の一人旅プランがある泊まってみたい宿
湯ヶ島温泉には湯本館以外にも温泉宿が何軒かあります。
お部屋にイラストの地図も置いてあり、温泉宿の位置関係はこちらの地図でもわかります。こういう地図を温泉宿共同で作っているとすると、とても頑張っているなーと思います。
湯ヶ島温泉までは自宅からも遠くないので、また泊まりに来たいと思い、一人旅プランがある宿を調べてみました。
一人旅プランがある温泉宿 白壁
日本一の巨木露天風呂と巨石風呂が自慢の温泉宿。口コミがとても良いので、次回はここに泊まってみたい。
全室源泉かけ流しの露天風呂がある アルカナイズ
白壁さんよりお値段が高いので、何かの記念日とかに奮発して泊まってみたいです。
関連リンク
川端康成氏ゆかりのもう一つの温泉宿
今回宿泊した湯本館は、川端康成氏が何度も宿泊され、いろいろな作品をこの宿で執筆された宿ですが、伊豆にはもう一軒、伊豆の踊子にまつわる宿があります。湯ヶ島温泉から天城峠を越えて河津に向かう途中に湯が野温泉の「福田家」さんです。伊豆の踊子のハイライトとでもいうべきシーンである、「私」が踊り子が裸で飛び出してくるところを見かけたお部屋がある宿です。映画の撮影もこちらの宿で行われています。福田家さんも老舗旅館らしい、ご主人と女将さんの気配りが行き届いた宿でした。こちらは1人泊プランがあります。
湯ヶ島温泉近くの観光スポット
湯ヶ島温泉から河津に抜ける街道沿いは、石川さゆりさんが歌う「天城越え」にも登場する浄蓮の滝や、河津七滝などの滝巡りや、石造りが美しい旧天城トンネルなどの見どころもあります。
天城湯ヶ島温泉の観光ガイド
湯ヶ島温泉近辺のがあります。こちらのサイト内で紹介されています。