緊急事態宣言が解除になった後、しばらくは近場の温泉にマイカーで旅をしていましたが、GoToトラベルキャンペーンも始まったことだし、鉄道旅を再開してみようということで2泊3日で出かけてみました。行き先は東北。出発直前に最上川の氾濫により、1泊目の宿を出発前日に変更するというハプニングがあり、宿は無事に取れたものの、切符の変更を失敗しちゃったりしましたが、重曹泉のお湯を楽しむことができました。こちらのエントリでは1泊目のお世話になった東鳴子温泉「旅館大沼」をご紹介します。日本の秘湯を守る会の会員宿でもあります。
古川駅から陸羽東線で鳴子御殿駅へ
東京駅からは東北新幹線で古川駅に向かいます。平日だったせいか、指定席はガラガラ。1両に10人くらいしか乗っていませんでした。ノー密で助かります。古川駅にはお昼過ぎに到着。新幹線と在来線の接続駅ですが、東北本線ではなく陸羽東線の駅と接続なんですね。ほぼ直角に交わっている感じです。
リゾートみのりのラストランが近かったので、構内で写真展示がされていました。
私も2年前の紅葉の時期にリゾートみのりにのったので、懐かしかったです。
古川駅の外に出てみると、駅前はかなり広いバスの発着場になっていました。駅ビルにスーパーが入っているので、食料の調達はできます。100均のダイソーもありました。駅にダイソー、ちょっと不思議な感じがしなくもないです。
構内にタリーズがあったので、タリーズでランチを食べました。
陸羽東線は非電化路線なので、気動車のゴォーっというエンジン音が旅情を誘います。紅葉の時期は立っている人がいましたが、7月の平日のお昼過ぎはとても空いていました。ボックス席に1人ずつという感じ。乗客は全員マスクしているし、おしゃべりしている人もいませんでした。
でも念のため、アルコールティッシュを持ち歩き、人の手が触れそうな窓枠やひじ掛けなどはささっと拭くようにしました。感じ悪い人に思われたかもしれませんが、気にしないでおきます。もちろん使用後のティッシュは持参のビニール袋に入れてから捨てます。
鳴子御殿湯駅から徒歩5で「旅館大沼」へ
「旅館大沼」の最寄り駅は鳴子御殿湯駅です。古川駅からは40分ほどの乗車です。駅舎は2004年に今の駅舎に建て替えられました。
駅舎の中は天井が高く、待合室も広々。小さな駅ですが、トイレも男女別にウォシュレット付きの様式トイレが設置されていました。時間限定ですが窓口に人がいます。
旅館大沼は、駅舎を背にまっすぐ道を歩いて行けばよいのです。
こちらが温泉街のメインストリートなのでしょうけれど、温泉宿が数軒ありますが、カフェや飲食店というのはあまりなさそう。平日だったこともあり、ひっそりしている感じです。これが隣の鳴子温泉だと駅舎に足湯があったり、駅前にお土産物屋さんや飲食店もあってにぎやかな感じがするのですが、密を避けたい私にはこちらの温泉街の方が今は良いです。
宿に向かう路上には鳴子らしいデザインマンホールも設置されていました。
旅館大沼のお部屋
こちらが大沼の建物です。右手に見える鉄筋コンクリート部分は湯治館で予約する際に、旅館のお部屋か湯治館のお部屋を選択することができます。今回は旅館側のトイレ付和室をお願いしました。
チェックインの際に検温があり、宿帳に記入したらお部屋に案内していただきます。お部屋は2階の「松」というお部屋。
お部屋は10畳の和室で、1人には十分すぎる広さです。奥の障子の向こうに縁側があり、洗面所があります。ドアの奥はトイレです。きれいに整えられています。
縁側から入り口方向を見るとこんな感じ。小さいながらも床の間があります。エアコンは部屋ごとの設置で自分で好きな温度に設定できます。テレビはこじんまりしていますが、私はあまり見ないので特に気になりません。床の間横の白い扉の中はクローゼット。その下の木の開き戸の中には金庫があります。
アメニティ
クローゼットの中には、タオルや浴衣、足袋、歯ブラシ、ドライヤー(左側の巾着袋の中)が用意されています。基礎化粧品類は部屋にもお風呂にもないので、持参しましょう。
お茶のセットは緑茶のみ。
ポットは電気式なので沸騰させることもできます。お湯のみとグラスはありますが、コーヒーカップはないので、コーヒー持参される方はカップも持ってきた方が良いでしょう。自分でお茶を入れてお茶請けのお菓子を食べて一息つきます。
夜は冷水が入ったポットを用意してくれてありました。
Wi-Fiとコンセント
Wi-Fiはパスワード付のものが使用できました。コンセントはテレビの後ろやドライヤーのために洗面台にはあるのですが、枕元にスマホをおいて充電しながら寝る、という位置にコンセントがありませんでした。夜中に目が覚めた時に「今何時?」をいつもスマホで確認するのですが、それができないのがちょっと不便でした。
8つのお風呂で楽しむ重曹泉
旅館大沼には8つのお風呂があります(うち1つは足湯)。しかも貸切風呂が5か所。そのうち4か所は無料で貸切可能なのです。使用している源泉は、旅館大沼の自家源泉と、東鳴子温泉の宿が共同で使用している源泉の2種類が注がれていて、やや異なる泉質のお湯を楽しむことができます。
庭園貸切露天風呂「母里の湯」(有料)
雑誌で旅館大沼が紹介される時にはたいていこちらのお風呂の写真が出ているように思います。旅館から車で2~3分の場所にあります。
1回1000円と有料ですが、こちらのお風呂の利用料込みのプランもあります。私が行ったのは7月だったので、緑の中での湯あみを楽しめました。雪の時期もよさそうです。洗い場はないので、こちらの露天風呂を利用する前に、宿のお風呂で体を洗ってから行くのがマナーと思います。屋根付きなので雨でも快適に入浴できそうです。
脱衣所はこちら。脱衣所とお風呂の間には壁やついたてはありません。貸切ですからね。
こちらのお風呂には共同源泉のお湯が注がれています。泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。以前の泉質名で言うと、含食塩-重曹泉です。pHは7.4でほぼ中性。美人の湯の目安にもされるメタケイ酸は温泉1kg中に180mgと豊富です。お湯はもちろん源泉かけ流しです。
広い浴槽を一人で贅沢に使わせていただきました。水温計があったので温度を見たら41度付近でした。熱すぎないのでゆっくり入れました。
茶色の浮遊物がたくさん確認できました。湯の花かな?
使用できるのは1回30分。チェックインの時に時間を決めます。予約時間の5分前にフロントに行き、車で送ってもらいます。私の前にこちらのお風呂を使っていた人は、私を送ってくれた車で旅館に戻ります。こちらの門は内側から撮影していますが、外から鍵をかけられちゃうので、スタッフが旅館に戻ると、次のお客さんを連れてくるまではこちらの露天風呂の敷地からは出られません。また脱衣所などに忘れ物をすると、すぐには取りにこられないので、部屋の鍵を脱衣所に忘れないようにしましょう。私の時にはスタッフの方がカギを預かってくれました。
お風呂から上がったら湯上り処で待つように指示されます。冷たいお茶とかはありません。こちらで待つことで、次に来たお客さんと顔を合わせずにお風呂を交代できるわけですね。
無料の貸切風呂その1 「陽」
続いて旅館大沼の館内にあるお風呂をご紹介します。まずは湯治棟の4階にある無料の貸切風呂。旅館棟の部屋から行くには階段を何度も上るので、足が不安な人にはちょっと厳しいかも。一番上の階の廊下の行き止まりの左右に「陽」と「陰」という貸切風呂があります。どちらも予約不要で空いていれば中から鍵をかけて入る仕組みです。こちらが「陽」のお風呂。浴槽の縁は木でできていて、壁には丸い窓がついています。この丸は太陽を表しているようです。
お湯の温度は40度かそれ以下かな。私好みのぬる湯でじっくりつかっていられます。加水なしとのことなので、お湯の量をしぼって調整しているのでしょう。こちらの温泉は旅館大沼の自家源泉で、純重曹泉です。
お湯はちょっと褐色がかっているのですが、これが源泉のもともとの色なのか、浴槽の壁にしこまれた備長焼竹炭の影響なのかはわかりませんでした。また何かの香がするように思いました。硫黄の匂いではありません。成分表には木材臭とあったので、その香りだったのかもしれません。
旅館のすぐ近くに線路があり、時間が合えば丸い窓から列車が見えます。
無料の貸切風呂その2 「陰」
「陽」の向かい側には「陰」のお風呂。窓の形がお月さんです。
こちらのお風呂にはシャンプー、リンス、ボディーソープが置いてあります。いずれも環境にやさしい石鹸由来のもので、シャンプーすると髪がキシキシになります。リンスは私が子供の頃に使っていたように、洗面器にお湯をためてそこにキャップ1杯程度のリンスをいれたリンス液を作り髪を浸すというリンスです。
「陰」も「陽」と同じ旅館大沼の自家源泉が注がれています。こちらがその成分表。泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉。以前の泉質では純重曹泉です。肌をなめらかにする効果があるそうで、美肌の湯ともいわれるようです。こちらはメタケイ酸が273mgと共同源泉よりさらに豊富です。
貸切風呂その3 ふかし風呂
旅館棟にも貸切風呂が2つあります。そのうちの1つは「ふかし風呂」でサウナのような感じです。ドアをあけると中はかなりむっとした空気でした。こちらは服を着たままでも利用可能ですが、熱くて汗がでるので、皆さんバスタオルを巻いて寝転んで使うようです。私はサウナはあまり好まないので、今回はのぞいただけで利用しませんでした。
貸切風呂その4 灯りの湯
こじんまりとしたお風呂で、2人で入るにはやや狭いかも、というサイズです。湯温は私にはやや熱く、41度くらいに感じました。
大浴場は混浴
宿の大浴場は「薬師千人風呂」というお風呂ですが、こちらは混浴なんですね。女性専用時間帯が夜に設けられているので、女性は女性専用時間帯が良いかも。脱衣所もお風呂への入り口も男女別々ですが、湯船は10人入ったらいっぱいという感じの広さですし、バスタオル巻いて入るのもたぶんダメだと思うので、女性にとっては混浴のハードルが高そうです。私は女性専用時間に利用したのですが、ほかにもお客さんがいたので写真はありません。
女性専用の「天女風呂」
前述の「薬師仙人風呂」と脱衣所は共用で行ける女性専用のお風呂です。いわば女性用大浴場と言ったところでしょうか。薬師仙人風呂よりは小さいですが、私が入った時には誰も入っておらず、のびのびと入れました。薬師仙人風呂が女性専用時間の時は、女性は薬師仙人風呂に入るでしょうから、その時間帯に「天女風呂」に行くと空いているのかもしれません。
こちらは旅館大沼の自家源泉がかけ流されています。
足湯
館内には足湯があり「石割の湯」と言います。大浴場やふかし湯がある場所に設置されています。「石割の湯」の扉をあけると、こんなお風呂が。なんだか足湯にしておくのはもったいないくらいの石造りの浴槽です。こちらには共同源泉が注がれています。5人くらいで足湯を楽しめる広さですが、他のお客さんに会うことはなく、貸し切り状態で利用できました。
食事
食事は食事処でいただきます。密を避けるためなのか、いつもそうなのかわかりませんが、食事処は複数個所あり、部屋ごとに場所を指定されます。私は1階の食事処でした。御覧の通り、左右は衝立で仕切られています。この部屋はほぼ一人旅の人ばかり。右側奥のテーブルのみご夫婦と思われる2人組でしたが、左側の列は4卓すべて一人旅でした。
夕食
夕食は18時または18時半から選べました。私は17時から1時間、有料の貸切風呂を使うことにしていたので、夕食は18時半を選びました。メニューは一汁五菜と一汁七菜から選択できます。私は一汁七菜を選びました。ほかに予約時にお願いしておけば、仙台牛の陶板焼きをつけこともできるようです。
お酒を飲まない私は、ノンアルコールのメニューにノンアルコールのカクテルとか地元のジュースやサイダーがあると頼むのですが、うーん、この日はあまり何かを飲もうという感じがせず、パスしてしまいました。トマトジュースが好きなので関心はあったのですが・・・。
こちらがお品書き。
豪華ではないけれど、体に良さそうな食材が並びます。鍋は「薬膳鍋」です。これにご飯とみそ汁と香の物、最後にフルーツです。どれも美味しくいただきました。
こちらのお豆腐はお品書きにはなく、女将さんからのサービスだそうです。お豆腐を塩で食べるのがとても新鮮でした。
朝食
朝食は8時から。夕食と同じ会場、テーブルでいただきました。朝食も温泉卵や湯豆腐など、温泉旅館らしい献立だと思いました。
嬉しかったのはパックじゃない納豆。これも昨夜の冷ややっこ同様、お醤油ではなく塩で食べるんです。とても美味しかったです。
まとめ
日本の秘湯を守る会の会員宿ですが、JRの駅から徒歩5分という便利さなので、秘湯感はないけれど、温泉がとっても気持ちよく、食事も美味しい宿でした。今回はコロナ対策として、他の人になるべく会わずに過ごしたかったため、旅館棟のトイレ付の部屋に泊まりましたが、湯治棟の部屋も扉が開いている部屋をのぞくと、1人で一泊するには全く問題なさそうな雰囲気。洗面とトイレは共同ですが、お値段はぐっと下がるので、コスパ重視なら湯治棟の部屋をチョイスするのもありだと思いました。
今回は木曜日の夜に2食付きで1泊し、税込みで16,650円でした。お支払いは現金のみです。お湯が良くて、無料の貸切風呂が3か所(ふかし湯を入れると4か所)もあり、1人でのんびりお湯を楽しめるのがとても良かったです。隣の鳴子温泉は駅前もとても賑やかですが、一駅違うだけで随分と雰囲気が違うんだな、と実感しました。
GoToトラベルキャンペーンがスタートしてから初めて泊まった宿でした。忘れずに宿泊証明書と領収書をいただき、次の宿に向かったのでした。