2024年の初詣は、世界遺産にもなっている那智勝浦神社に行きました。その時に宿泊した「熊野別邸 中の島」の宿泊記です。
こちらの宿は勝浦湾内の島にあり、お客さんはもちろんスタッフの皆さんも船でしか行けない宿です。海に面した開放的な露天風呂も魅力で、リブランド前の「ホテル中の島」の時代から泊まってみたいなと思っていた宿の一つです。かつては団体ツアーを受け入れる宿でしたが、2019年に方向転換して個人客をターゲットにした現在の宿になりました。新しくできた「凪の抄」には全室バルコニーに露天風呂(温泉ではない)があります。今回私が宿泊したのは、以前からある「潮聞亭」という建物です。泊まってみてこの宿の可能性みたいなことを私なりに感じたので最後に記載しました。
熊野別邸 中の島の概要
- 客室数は、新たにできた露天風呂付の凪の抄に10室、潮聞亭に34室の計44室。
- チェックイン15時、チェックアウト11時
- 温泉は源泉かけ流しで、泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉(等張性弱アルカリ性高温泉)
- 客室内でWifi使用可。部屋によっては速度があまりでないこともあり
- 年末年始の土曜日の夜に2人で泊まって、1泊2食付き40,000円/人くらい
- お部屋は限定されるが、1人プランもあり
宿の歴史はこちら
https://www.nankai.co.jp/library/groupinfo/news/pdf/190419.pdf
船で行く特別感
この宿の最大の特徴は船でしか行けない特別感ではないでしょうか。島内には宿の宿泊客しかいないわけで、隠れ家的な宿と言えます。いつも宿の紹介はお部屋からが私の定番ですが、今回はチェックインからご紹介します。
乗船前にチェックイン手続き
船は勝浦港の観光桟橋から出発します。観光桟橋の向かい側に宿の待合室があり、こちらでチェックイン手続きをします。
荷物はチェックインの時に預かってくれます。宿への船はだいたい15~20分間隔で運行されていて、待ち時間がある時には、自動販売機式のコーヒー(料金はかかりません)を飲みながら待つこともできます。
船の定員は12名で、翌日の帰りの船の時間もここで予約します。もちろん宿に滞在中に帰りの船の時間を変更できますが、すでに満杯だと希望の時間には変更できません。なのでまずは帰りの便を一便予約しておく、というシステムでした。
乗船から宿到着まで
宿に向かう船が到着したので、スタッフの先導で桟橋に移動します。荷物は運んでもらえるので、身軽に移動できます。こちらの船で宿に向かいます。
中はベンチシート風でした。後方のデッキに出ることも可能です。
乗船時間は5分ほどで宿の桟橋に到着しました。正面に見えている建物が新しくオープンした「凪の抄」の建物です。
桟橋でもスタッフが出迎えてくれます。お正月だったので、玄関には門松が。
船を待つ待合所で記入した用紙を「凪の抄」1階のフロントに出すと、すぐに鍵を用意してくれます。2人で泊まる時には鍵も2本用意してくれました。
そのあと係の方がお部屋まで案内してくれます。荷物もスタッフの方がワゴンで運んでくれました。
「潮聞亭」にはトンネルのような通路を通ってお部屋に向かいます。
潮聞亭のお部屋
今回宿泊したのは3階の和室のお部屋で、宿の中では一番リーズナブルなお部屋です。それでも10~12畳くらいの広さがあり、プラス前室と広縁がついているので、かなり広くて余裕のあるお部屋でした。
広縁側から見るとこんな感じで、TVもあります。TVの下の開きの中には金庫がありました。
お部屋はオーシャンビュー。もう目の前が海です。テラスに草履はないですが、出ることはできます。隣のお部屋との仕切りの壁が短いので、テラスから隣の部屋が覗けてしまいます。そのためあえて外履きをテラスに用意していないのかもしれません。
部屋から見えるいけすにはイルカが飼育されていて、時々ジャンプする姿が見えました。
入口からお部屋の間に前室があり、そこにポットや冷蔵庫などが用意されていました。冷蔵庫の中は空ですが、ペットボトルのお水が1人1本用意されていました。コーヒーはドリップバッグです。こちらの宿はラウンジで24時間いつでもコーヒーやカフェラテ、紅茶などがいただけるので、お部屋でコーヒーを淹れることはありませんでした。
お部屋に用意されているお茶請けのお菓子。お茶がペットボトルなのは珍しいかも。もちろん温かい緑茶が飲みたければ、自分で淹れれば良いので、問題ありません。
お部屋には洗面台、トイレ、お風呂がついていますが、源泉かけ流しの大浴場があるので、お部屋のお風呂は利用しませんでした。トイレはもちろん洗浄機能付きです。
洗面台にはクレンジングや化粧水・乳液などの基礎化粧品の用意がありました。
温泉
大浴場は少し離れた場所にありました。通路をしばらく歩いて向かいます。
大浴場の利用はチェックインした日は深夜12時まで、翌朝は6時から入ることができます。
チェックインした日と翌日とで男女が入れ替わります。どちらのお風呂も内湯からそのまま出られる露天風呂があります。
体を洗うタオルとバスタオルは脱衣所内に用意があるので、手ぶらで大浴場に行くことができます。下の写真の青いのは女性用の湯あみ着です。
脱衣所内のパウダーコーナーには雪肌精の化粧水と乳液の用意がありました。またシャンプーバーもあり、お好みでシャンプーとコンディショナーを選ぶこともできます。
大浴場の写真は撮っていないので、宿の公式サイトの写真をご覧ください。
こちらの写真の通り、露天風呂はものすごく開放的です。
(宿の公式サイトの写真をお借りしています)
こんなに開放的なので、外からも見えます。女性には湯あみ着が用意されています。露天風呂はどちらも屋根がないので雨の日は楽しくないかもしれませんが、私が宿泊した時にはとても良いお天気で目の前の静かな海と青い空の景色を楽しみながらの湯あみができました。内湯はやや温度が高かったのですが、露天風呂はいい塩梅の湯温でじっくりつかっていられるのも良かったです。難点は内湯からそのまま行けますが、階段を下りる必要があります。その間はちょっと寒いです。
濃い温泉が楽しめる
こちらの宿は自家源泉を所有していて、湯量は毎分486リットルと多く、源泉かけ流しで楽しめます。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉で、溶存物質が温泉1kgの中に9.713g含まれていて、等張性の温泉です。つまり濃い温泉と言えます。なめるとちょっとしょっぱさを感じます。硫黄を含み、pHは7.7と弱アルカリ性で、美人の湯とも言えます。お湯に入るとお肌がつるつるしてくる感じがします。塩化物泉なので、湯上り後も湯冷めしにくく、大変気持ちの良い温泉です。硫化水素臭があるところも、いかにも温泉という感じがして、とても気に入りました。
湯上り処
脱衣所の中には冷水器があるのみですが、お部屋がある潮聞亭まで戻ってくると、湯上り処があります。ソファーもあり、かなりゆったりした湯上り処です。
湯上り処には冷水器、薬湯、アイスキャンディー(フレーバーは2種)、時間限定ですが缶ビールの用意もあります。もちろんどれも無料です。
お食事
温泉宿に泊まっての楽しみは温泉とお食事。こちらの宿のクラスになると、見た目も美しいお料理が並びます。夕食・朝食ともに潮聞亭の1階にある食事処でいただきます。
夕食
夕食は2回制で早い時間帯が17~18時の間に食事をスタートさせます。遅い方は19時45分からです。隣の席とは衝立で区切られていました。
こちらがこの日の献立です。
ノンアルコールドリンクのメニューも豊富で、飲めない私には嬉しい限り。こういうご当地間のあるノンアルドリンクは是非他の温泉宿でもメニューに加えてほしいです。これだと注文する気になるので、お酒を飲まない人からも飲み物の売り上げが期待できます。実際うちの夫婦は一人2杯ずつ頼みました。
テーブルには食前酒と先付の用意があるので、オーダーしたドリンクが来る前に始めます。
まずは先付から。
つづいてお造りですが、なにやら湯気もうもうの箱が運ばれてきまして、玉手箱という感じでしょうか。蓋を取ると、中にはいろいろな種類のお造りが。左上は一度も冷凍していない生のマグロ、右下のお肉っぽいのは、クジラのお肉でした。
お造りはどれも美味しいのですが、ドライアイスが煙を上げるよう、箱内の水が入っています。水の上に筏を置いてその上にお刺身が乗っているのですが、お刺身が水につかっているんですよ。演出は面白いのですが、肝心のお魚が水っぽく感じてしまい、イマイチな感じを受けました。
続いて蒸し物。本来は鮑ですが、私は食べられないので、代替としてクエの蒸し物でした。
メインは紀伊半島内のブランド牛を鍋で食べ比べます。牛肉は灰汁が出るので、先に野菜をいただきます。
こちらで食べ比べ。熊野牛、松坂牛、伊勢牛です。
鍋のお出汁に味がついているので、そのままいただけますが、自分で作る柚子塩も用意されました。こんなの初めてです。
3種類のブランド牛を食べ終わる頃、料理長からのサービスということで、松坂牛がもう1枚出てきました。金粉が乗っていてお正月らしいです。
続いて焼き物で、クエの幽庵焼きとブリとヒラマサを掛け合わせたお魚の西京焼きです。
最後にお食事とデザートが出て夕食はすべて終了です。だいたい1時間半くらいかかりました。量が多すぎず少なすぎず適量なのは良かったです。わがままを言えばお肉はステーキとか石焼きで食べたいな、と思いました。
朝食
朝食も夕食と同じ食事処でいただきます。時間は7:00, 7:30, 8:00, 8:30からのチョイス。夕食の時にはもう外は真っ暗でしたが、朝食の時間帯は外が明るくて、海に面した食事処で明るいです。近くのいけすでイルカがジャンプしているのが見えました。
朝食はこんな感じで、これだけ見るとちょっと少ないと感じるかもしれませんが、下の写真以外に、ビュッフェコーナーがあり、サラダや飲み物などは自分のお好みで選ぶことができます。和食が基本ですが、ビュッフェコーナーにはパンも数種類用意されていました。
オレンジジュースは生絞りっぽい感じでとても美味しかったです。サラダや豆腐、一口サイズのお刺身などを取りました。
その他の施設
ラウンジ
フロントの前にはラウンジがあり、滞在中はいつでもセルフサービスでコーヒーやカフェラテ、紅茶やクッキーなどのお菓子が用意されています。夕方から夜にかけては梅酒のサービスもあります。
今時貴重なレコードも。
山上遊歩道と足湯
島一島まるまる宿の敷地です。こんもりした小さな山の上を歩く遊歩道がありました。下の写真で宿の建物から「中の島公園」と書かれている場所が大展望台で、大展望台まで遊歩道が設置されています。
潮聞亭の建物の屋上から遊歩道がスタートです。
遊歩道はアップダウンがあるので、スニーカーなど歩きやすい靴でお出かけくださいと言われましたが、階段もあるし、スリッパだと厳しいです。
しばらく林の中で眺望がききませんが、大展望台まであと100mくらいの所に設置されている足湯のあたりまで来ると、周辺の景色が見えました。こちらが足湯は源泉かけ流し。なんとも贅沢です。
足湯から100mほど歩くと、大展望台に出ました。大平洋です。朝7時過ぎについたらこんな景色だったので、もうちょっと早く、朝日が昇る頃に来れば良かったとちょっと後悔。元旦は素晴らしい初日の出を拝めたのではないかと思います。
反対側は勝浦港です。送迎船がやってくるのが見えました。
素晴らしい眺めを楽しめました。大展望台まで片道450mほどあるので、往復するとほぼ1キロ。良い運動になりました。
まとめ
船でしか行けない、というのは何とも言えない特別感があります。以前は団体客の受け入れも可能な大型旅館でしたが、2019年のリニューアルで客室数を絞り、個人旅行客にターゲットを変更したのはとても良かったのではないかと思います。その分お値段も上がっていると思いますが、宿の内容を考えると高すぎることはないと思いました。
お料理は美味しかったし見た目も良かったですが、お料理の所にも書いた通り、お造りやお肉は改善の余地ありな感じがしました。
でも温泉はすごーく良かったです。少し硫黄の香が漂い、塩分が濃く、温泉らしい温泉でした。露天風呂は解放感抜群で湯の温度も適温なので、海を眺めながらゆっくりお湯につかることができるのもとても良かったです。
紀伊勝浦は食べ物も美味しいし、見どころもあるので、次回は連泊で楽しみたい場所の一つです。
この宿について考えたこと
私が考えたことというのは、この宿はもっと高級路線を狙えるのではないか、ということです。今でも私のような一般市民には十分高級宿ですが、もうちょっと上を狙えるのではないかと。なんせかつてはショーン・コネリー氏が宿泊したくらいですから。
こちらの宿は2019年にリニューアルして、各お部屋に露天風呂が付いている「凪の抄」ができました。せっかく泊まるのなら「凪の抄」にしようかな、とも思ったのですが、お部屋の露天風呂が温泉ではないので、ならば潮聞亭でいいや、ということになりました。
自家源泉を6本も持っていて、山の上の遊歩道にも源泉かけ流しの足湯があるくらいの湯量があるのに、なぜ「凪の抄」の客室の露天風呂を温泉にしなかったのか・・・。もし客室の露天風呂が温泉だったら、宿泊費はあがっても泊まるお客さんいると思います。そして客単価をもっと上げるには、「凪の抄」にさらにプレミアムを付けるのです。1階にラウンジがありますが、あのラウンジは「凪の抄」宿泊客専用にしてしまうのです。潮聞亭のお客さんには広い湯上り処があるので、そちらに1台コーヒーマシンを置けば良いと思います。ラウンジは「凪の抄」のお客さん専用にして、アフタヌーンティーみたいなサービスや、夕方からはアルコールのサービスにするのです。そこまでやるのなら、レストランも潮聞亭のお客さんとは分けた方が良いかもしれません。
「熊野別邸 中の島」がある紀伊勝浦は、大都市からのアクセスにかなり時間がかかりますが、宿のパンフレット見ると、ヘリポートがあると書いてあります。富裕層の皆さんには、南紀白浜空港まで飛行機で来ていただき、そこからヘリで来てもらうのもありなのでは。そういうお客さんには「凪の抄」最上階ワンフロアを特別なスイートルームにしてしまっても良いのかも。
紀伊勝浦周辺には、熊野古道や那智神社、車で1時間ほど行くと瀞峡などもあり、連泊でも楽しめる場所があります。瀞峡は経営コンサルタントや日本の地方を元気にするプロジェクトを応援したり、ご自身もあちこち旅されている梅澤高明さんのXでも紹介されています。
2024年、今年もよろしくお願いします!
— 梅澤高明@KEARNEY & CIC Tokyo (@TakUmezawa) January 1, 2024
昨年も旅で全国を駆け回り、計35か所を延べ40回訪問しました。各地でご一緒頂いた皆さん、ありがとうございました。
今年も地方の魅力の探索と、都市のナイトタイムエコノミーづくりを並行して続けます。引き続きお付き合いください!… pic.twitter.com/njZgek2aUX
紀伊勝浦は食も生のマグロに熊野牛と豊富で、連泊の方向けに、島の外にある鉄板焼き屋さんやお寿司屋さんとも提携しているとのこと。すごく良いサービスと思います。
連泊でワンランク、ツーランク上の客層を取り込める可能性を感じたのでした。