四国徳島県の山地にある祖谷(「いや」と読む)渓は、深く切り立った崖が両側に迫るV字渓谷の連続。ホテル祖谷温泉はそんな祖谷渓の崖っぷちに立つ一軒宿です。硫黄の香が漂う温泉が湧き出る谷底まではケーブルカーで下りて行きます。今回は自分のお祝い事もあり、露天風呂付の「ふたりじめ」というお部屋に泊まりました。
秘境にある宿ですが、秘境の宿とは思えないゴージャスさ。2022年10月中旬の宿泊です。紅葉には2週間くらい早かった感じですが、紅葉の時にはきっと素晴らしい眺めだと思います。周辺観光のおススメも含めてホテル祖谷温泉の宿泊記をご紹介します。
ホテル祖谷温泉の概要
- 徳島県の秘境、祖谷渓の温泉宿で、日本の秘湯を守る会の会員宿。断崖に立っているので渓谷の絶景をお部屋やお風呂などから楽しめる。
- 部屋数は20室。露天風呂や足湯もついたゴージャスなお部屋から、8畳一間のお部屋まで種類が豊富。お部屋にはトイレ付き。
- お部屋にwifi完備。たまにつながりづらいこともあったが、大きな支障なし。
- 館内はエレベータがなく、移動はすべて階段。内湯は2Fにあり、客室は3~6Fなので、階段の上り下りができないとつらい。
- 平日は一人旅プランもあり、紅葉の時期などを外せば一人でも泊まれる。
- 今回は土曜日の夜に露天風呂付の「ふたりじめ」というお部屋に2人で泊まり、1泊2食付きで、40,000円/人ほど。
公式サイト
露天風呂付「ふたりじめ」のお部屋
いくつか種類のあるお部屋の中で、今回は露天風呂付のお部屋を選びました。露天風呂付のお部屋もいくつか種類がありますが、その中の「ふたりじめ」というお部屋に宿泊しました。305号室ということで3階のお部屋です。入り口の扉を開けると、まずは洗面台。奥の扉の中はトイレで、右側の引き戸の中が客室です。
客室にはツインベッドが置かれています。
ベッドの横にはマッサージチェアも。このマッサージチェアはとってももみ玉の感じが良くて気に入りました。マッサージチェアは一般の客室にもあります。
くつろぎスペースはカウンターになっていて、窓の向こうは祖谷渓の絶景が広がります。
屋外のテラスにもテーブルとチェアーがあり、より間近に祖谷の渓谷美を楽しめます。ここ、紅葉だったらものすごい景色になっていると思います。
お部屋のカウンターの上には電気ポット、冷水、ティーバッグのお茶とコーヒーが用意されています。
お茶請けのお菓子は3段重ねで用意されていました。
冷蔵庫にはビールやチューハイ、ソフトドリンクが用意されていて、こちらのお部屋では冷蔵庫内の飲み物は全部無料でした。
お部屋にはCDプレーヤーもあり、CDプレーヤーはどのお部屋にもあるようです。すごいね。リラックスできるCDも用意されていました。
お部屋には浴衣、バスタオル、お風呂で使う宿名入りのタオル、使い捨てタイプのボディタオル、半纏、足袋が用意されていて、お風呂に行くのにタオルなどを入れられるビニールのバッグもついていました。
お部屋の水回りにも基礎化粧品や、コットンやブラシなどのアメニティの用意があります。チューブ入りのボディクリームの用意もあり、美人の湯に入った後、肌の乾燥を防ぐのに使わせていただきました。
お肌すべすべの温泉
ケーブルカーで行く露天風呂
こちらの宿の温泉はpH値が9.1もある「アルカリ性単純硫黄温泉」です。つかるだけでお肌がツルツルしてくるお湯を一番実感できるのが露天風呂です。なぜなら露天風呂のお湯は源泉かけ流し。加水・加温・循環・消毒なしの新鮮なお湯を楽しめます。その露天風呂は客室のある建物からケーブルカーで向かいます。標高差は170m、斜度は42度もあります。片道5分ほどかかります。
ケーブルカーはエレベータと同じで、出発ボタンは乗り込んだお客さんが押します。
斜度42度はかなりの急こう配で、しばしの空中散歩を楽しんでいるかのようです。つり橋が見えますが、歩けるのかな?
露天風呂は「渓谷の湯」と「せせらぎの湯」の2つがあり、男女は日替わりです。チェックインした日は「渓谷の湯」が女湯でした。
脱衣所の中から先は撮影不可なので写真はありませんが、祖谷川に面した岩づくりの浴槽にドバドバと源泉が注がれています。湯温は38度くらいなので、30分くらい入っていてものぼせません。逆に真冬はなかなか湯船から出られないかも。硫黄(硫化水素)の匂いもしていました。お風呂の様子は公式サイトの写真をご覧ください。
※公式サイトの写真を掲載しています
ケーブルカーは夜の最終出発は20時半、朝は7時から。露天風呂に入れる時間もこのケーブルカーの運転時間に左右されます。日帰り入浴の受付も朝7時半から18時までと宿泊客の滞在時間とかぶっています。日帰りのお客さんがいない時間帯に楽しもうとすると、案外時間が短いのです。ケーブルカーの運行が前後1時間ずつ延長されると良いのにな、と思いました。
お部屋の露天風呂
今回宿泊した「ふたりじめ」のお部屋にはお部屋専用の露天風呂がありまして、陶器の浴槽です。チェックインした時にはお湯ははってなくて、入る時に自分でお湯をためて入ります。
露天風呂には屋根があるので、雨でも入れます。そして湯船につかると、祖谷渓谷に向かい合うような感じになります。
シャワーとカランもあります。が、この時期は外で体を洗うのはちょっと寒いですね。
客室の温泉は加温・循環・消毒ありです。
内湯
内湯も男女別にあります。こちらの内湯は2021年春にリニューアルされて新しいです。洗い場は隣と仕切りがあるタイプ。こちらも撮影不可なので、雑誌に掲載されていた素晴らしい内湯の様子を貼っておきます。
※公式サイトの写真を掲載しています
リニューアルされた内湯には「雲遊天空の湯」という名前が付けられています。確か温泉ビューティ研究家の石井宏子さんが命名したと書かれていたような・・・。
こちらには水分補給のためのサーバーも用意されています。
お食事
夕食・朝食ともにお食事処でいただきます。私が宿泊した時には、夕食と朝食は会場が異なりました。
夕食
食事の時間は18時から30分おきに19時半までの中から選びました。私達は19時からをチョイス。この日の食事処は窓のないお部屋でしたが、もう外は暗いので特に問題ありませんでした。景色の代わりに画家 木村英輝氏によって描かれた壁画が描かれていました。
夕食のお品書きです。夕食はいくつかプランがあり、他のテーブルでは牛肉を焼いているような音も聞こえてきました。複数プランから選択できるのは良いと思います。
それでは食前酒を飲みながら前菜からいただきます。
2品目は蒸し物で、そばすべしというお料理でした。器の下の方にそば粉が沈んでいるので、スプーンでかき混ぜていただきます。
続いて土瓶蒸しです。
続いて焼き物は鮎の塩焼きかと思ったら、あめごの塩焼きでした。あまごとも呼ばれていて体にオレンジの点々があるのが特徴です。
つづいてのお料理は阿波金時豚の豚骨スープ鍋です。ラーメンが食べたくなるお味でした。
次は箸休めのすだちゼリー。お口の中がさっぱりします。
変わり鉢は阿波尾鶏の香味焼きが運ばれてきました。
最後にお食事ですが、お蕎麦も出てくるので、ご飯の量は希望を聞いてくれました。食べ残しがなくなって良いと思います。
別腹のデザートは4種類の中から1つ選びます。
私はチーズケーキにしました。
地元の食材をつかったお料理でどれも美味しくいただきました。
朝食
朝食は7時から30分おきに8時半までの中で開始時間を選びます。チェックインした時は8時からはすでに満杯だったので、7時半を選択しました。8時が満杯なのは、ケーブルカーで下りて行く露天風呂のスタートが7時からなので、朝風呂に入ってから、という方が多いと思うので、8時に集中するのでしょう。朝食は夕食とは異なり、ロビー階の展望レストランでいただきました。渓谷にせり出したような感じで眺めが良いです。下の写真は、前日の夕方にケーブルカー乗り場からレストランを撮影したところです。
レストランのテーブルから見ると、こんな感じで、祖谷渓谷が間近に。谷が深すぎて谷底の祖谷川は見えません。
朝食はチェックインの時に和食か洋食かを選びます。今回4人旅でしたが、全員洋食をチョイスしてしまいました。
籠の中の手前のお皿にはスペイン風オムレツ。こちらは焼き立てを運んで来てくれます。個別のコンロの上の鍋の中はベーコンエッグです。
朝食はハーフビュッフェで、飲み物、スープ、サラダ、フルーツはビュッフェ台に用意されています。
館内
建物が断崖に立っているので、お部屋からもレストランからも祖谷渓の絶景が楽しめます。ケーブルカー乗り場にはテラスがありケーブルカーの待ち時間も飽きません。
テラスからはこんな景色が。
こちらのテラスには野鳥の餌台があり、朝はヤマガラがたくさん遊びに来ていました。
アクセス
ホテル祖谷温泉は四国の秘境にあり、所在地は徳島県です。今回はレンタカーで高知から向かいました。大歩危(「おおぼけ」と読む)駅付近までは片側1車線の整備された国道ですが、大歩危駅から先、宿までは途中からセンターラインがなくなり、所々対向車が来るとすれ違いができない箇所も何か所かあります。でも路線バスも通るので車1台が走る分には問題ありません。舗装もされています。
レンタカーで走っていると、祖谷渓の絶景が目に飛び込んできます。車の行き来はそう多くはないので、路肩に停められる余裕があれば是非車を停めて絶景を楽しみたいところ。特に宿に向かう途中の「ひの字渓谷」は必見です。ここは路肩に2台分くらいの駐車スペースがあります。
祖谷川が蛇行して、ひらがなの「ひ」の字のように見えるのでこの名がつきました。
レンタカーだとチェックイン前、アウト後の時間が自由にとれるのがメリット。ひの字渓谷以外にも、祖谷のかずら橋や大歩危峡の観光船も乗りやすいと思います。
公共交通機関の場合
公共交通機関で向かう場合、大歩危駅から宿の無料送迎が1日1往復出ています。事前予約が必要なので、鉄道で向かう場合は予約を忘れずに。またタクシー会社があり、少しお値段は高くなりますが、宿周辺の観光地巡りを兼ねるのなら、タクシー利用もありと思います。
実は宿の前にはバス停があります。路線バスでのアクセスも可能ですが本数は少ないです。
時刻表は四国交通のHPに掲載されています。
周辺の観光スポット
祖谷温泉近くにはアクセスのところで紹介した「ひの字渓谷」以外にも観光スポットがあります。
祖谷渓の小便小僧
祖谷温泉の写真でよく見かける小便小僧。眼下には深い谷底が見えていて、小便小僧でなくてもちびりそうですよ。
宿から360mほど道路を歩いたところにあります。
祖谷のかずら橋
かずらで編んだ吊橋で、日本三奇橋の一つです。ちなみにその他の奇橋は、山口県岩国の錦帯橋、山梨県の猿橋なんだそうです。川面からの高さは14メートルほどあり、板を渡していないので、足下から川が見えてかなーりスリリングです。私も渡りましたが、怖くてへっぴり腰。
渡るのに大人一人550円かかります。こんな秘境なのにスマホ決済が使えて便利でした。詳しくはこちらをご覧ください。
かずら橋には広い駐車場(有料)があるので、車で行っても大丈夫です。
大歩危峡観光遊覧船
船で渓谷を楽しむこともできます。道路の上から眺めていても美しい大歩危峡を川面から楽しむのも良さそうです。今回は時間の都合で乗らなかったので、次回は是非乗ってみたいです。
https://www.mannaka.co.jp/restaurant/excursionship/excursionship.html
まとめ
四国を2泊3日で巡る旅の2泊目の宿としてホテル祖谷温泉に宿泊しました。宿に向かう途中、断崖に立つ建物や露天風呂に向かうケーブルカーが見えて、その立地に驚きました。
こんな場所に建っているので、ホテルの部屋からもお風呂からも渓谷美を楽しむことができます。高所恐怖症の人にはもしかしたら怖いかも? 川沿いの露天風呂はややぬるめの源泉かけ流しのお湯がとても気持ち良く、新鮮なせいなのか、ドバドバ注いでいるせいなのか、体中に細かい泡がびっしりつきました。ケーブルカーで向かわないならないので、ケーブルカーが出発した直後だと10分ほど待たなくてはならないこと、また日帰り温泉のお客さんが夕方5時くらいまでいるので、静かに楽しめる時間が限られているのが残念です。日ごとに男女の入れ替えがあるので、翌朝もできれば6時頃から入れると良いなーと思いました。立地は秘境の宿ですが、館内は改装されて新しく、設備も快適なホテルという感じです。紅葉などのピーク時期や週末を外せば一人旅プランがありますし、1人でも露天風呂付のお部屋も選べるようになっています。今回はレンタカーで回りましたが、大歩危駅を通る土讃線は吉野川沿いに走っていて、渓谷美を楽しめます。駅からの無料送迎もあるので、次回は鉄道旅で来てみたいと思います。