7月の3連休に新潟県の坂町駅と山形県の米沢駅を結ぶ米坂線完乗の旅に出かけました。途中どこかに良い温泉宿はないかと探してみたら、ありました! 日本秘湯の会の宿「鷹の巣館」です。部屋数も14室と少なく、本数が少ない米坂線沿線なら三連休でも混んでいないのでは? と予測。2人1部屋で1泊2食ついて2人21,750円と、いつもよりちょっとお値段ははりましたが、予想通り大変静かに温泉を楽しめました。吊り橋を渡っていく宿としても有名らしいです。チェックイン時間は15時ですが、鉄道で行くとちょうど良い時間に最寄駅につけません。私の場合は13:45に最寄駅の「越後下関駅」に着き(次は17:24着)、宿の送迎車で向かって14時頃宿に到着。それでもお部屋に案内して頂けたのです。これは嬉しいサービスです。おかげで激坂プチ登山も行けました。それでは鷹の巣館、ご紹介します。
吊り橋を渡って宿に向かう
「鷹の巣館」は磐梯朝日国立公園の豊かな緑に囲まれ、清流荒川のほとりにあります。「鷹の巣館」へのアクセスはこちらの吊り橋のみ。50人以下で渡ってください、という注意書きがあります。
右前方に見える建物群が「鷹の巣館」です。
おおっ、軽自動車が来ました。宿の車など許可された車は通れるそうですが、橋の幅から見て軽自動車のみですね。普通車以上は橋の手前にある駐車場に停めます。
鷹の巣温泉には、今回泊まった「鷹の巣館」のほかにもう一軒温泉宿があります。温泉旅館以外に、キャンプ場もあるので、キャンプの荷物を持った人たちもこの吊り橋を渡りますが、キャンプ場はかなり離れているので、宿側は静かです。
こちらが建物です。目の前の建物は本館です。
「鷹の巣館」の本館とは別に11棟の離れがあります。
本館には客室が3部屋と談話室が1部屋あるのみなので、離れが中心の宿とも言えそうです。離れは魅力でしたが、幾分お値段が高いので、今回は本館の客室に泊まりました。
お部屋
宿に着くと、まずはお部屋に案内してくれて、宿帳はお部屋で書きました。本館にある3つのお部屋の中で、今回のお部屋は花の間。
女将さんが浴衣のサイズや食事の時間などを確認してくれます。その間に仲居さんが冷たいお茶を入れてくれました。お部屋は本間が10畳、隣に6畳程度の洋間があります。
テレビの下に金庫があります。
こちらは食事をする洋間。夕食も朝食もこちらでいただきます。ピンボケですみません。
まずは一服。冷たいお茶と一緒にお茶請けのお菓子をいただきました。
お茶のセットは緑茶とほうじ茶の2種類が用意されています。ほうじ茶があるのは嬉しいです。どちらもティーバッグではなく、お茶っ葉で提供されるのは良いのですが、気軽にお茶の葉を交換できないのがちょっと難です。
湯沸しと保温機能のついたポットと、氷水のポットが用意されています。蒸し暑い日だったので、氷水がありがたいです。
冷蔵庫にはあらかじめ有料の飲み物がいろいろと入っていますが、500ccサイズのペットボトルを入れるスペースはありました。周囲にコンビニなどのお店はまったくないので、飲み物が必要な場合は、宿内の自販機か、宿に来るための吊り橋のたもとに自販機があります。
良いサービスだな、と思ったのはこちらのトレイ。鍵が入っていますが、腕時計やアクセサリーなど、どこに置いたかついつい忘れがちな物を入れるのにちょうど良いです。そうそう、部屋のカギは1本のみ用意されます。
本館の部屋にはお風呂はついていませんが、トイレと洗面台はあります。トイレは洗浄機能付きでした。
洗面台にはドライヤーと歯ブラシが用意されています。
部屋にはこんな湯籠があります。旅館内の大浴場に行くだけですが、女性はタオル以外にも化粧品や着替えを持ったりするので、籠があるのは助かります。
本館のレイアウトはこんな感じです。どの部屋も本間と洋間があり、洋間で食事をとるスタイルです。
本館には客室以外に「談話室」という部屋がありました。
談話室の中にはジャズに関する本などがありました。読書するのに使うのかな?とも思いましたが、夕食の時間が近づいたら、食事の支度がしてあったので、5人くらいで2部屋に分かれて泊まっている人が一緒に食事をする時に使うのかもしれません。
プチ登山は激坂だった
一息ついて温泉に入ろうかと思ったのですが、チェックイン時間より早くにお部屋に通していただいたので、時計を見たらまだ15時前。温泉に入る前に周辺の散策に出かけました。部屋のファイルには遊歩道とプチ登山が紹介されていました。
どっちにしようか迷って、女将さんに聞くと、遊歩道は途中で崩れている可能性があるとのこと。ならばと鷹ノ巣山へのプチ登山を選択しました。川を渡った反対側の山が鷹ノ巣山で、標高は100mくらいなのだそう。まずは来る時に渡った吊り橋を渡りましょう。
橋の上から見上げると、鷹ノ巣山頂上の展望台の屋根が見えました。標高100mなら運動不足の私でも大丈夫そう、と思ったのが間違いだったと、のちほど思いました。
登山道というと大げさですが、上り口には案内板があります。看板の奥、なんか薄暗いですね・・・ちょっと心配。
雨続きでちょっと地面が緩い感じ。木が茂っていて、直射日光にさらされる心配はなさそうですが、湿気が多いです。そして何より傾斜が急なんです。
しばらく急で狭い道を上ります。ところどころこんな激坂で泣けてきます。足滑らせたら谷底に落ちそうです。
さらに上ると、上部の木がなくなってきて下の景色が見える場所もありました。なるほど、景色は良さそうです。眼下に荒川の清流が見えます。
でもこんな場所を上るのです。引き返したい衝動に駆られましたが、降りる方が難しそうですよ。
いくつも鎖場がありました。鎖を用意してくれてあるということは、人の手が入り整備されているのでしょうけれど、こんな所降りる方が絶対怖いです。
ふぅー、ハードなハイキングとなりましたが、ようやく山頂に到着しました。確かに絶景です。頑張って登った甲斐がありました。眼下に見えるのは「鷹の巣館」です。
20~30分程度で登ってこられるのですが、なんせハードです。鎖が用意されているとはいえ、そう言う場所は岩場なので足元が滑ります。登る方がたぶん楽で、下りはそういう滑りやすい岩場がとても怖かったです。眺めは良いけれど、ちょいと散策しようか、というレベルではないように思いました。鷹の巣温泉のもう一軒の宿でもこちらの鷹ノ巣山の登山は紹介されていました。そちらは途中の鎖場も写真で紹介。最後の一息は本当に急なので無理をしない方が良い、と書いてありましたが、ホントに無理しない方が良いです。ほとんど人がこない感じだったので、一人で行くのもちょっと危なそうです。
散策するならキャンプ場内が道も整備されていて歩きやすいです。
温泉
激坂プチ登山で汗びっしょりになってしまったので、温泉で汗を流すことにしました。お部屋にお風呂はないので、大浴場にいきます。夜中も入ることができる温泉です。
大浴場に行くときは、一度スリッパから外履きにはきかえて向かいます。湯殿まではほんの数歩。屋根があるので、雨でも安心。女湯と男湯。入れ替えはありません。暖簾をくぐり、扉を開けたらすぐ脱衣場です。オープンなボックスが並ぶシンプルな作り。ロッカーはないので、貴重品は持ってこない方が良さそうです。
お風呂で使うタオルは、バスタオルと共に部屋に用意がありますが、脱衣所にも用意されていて、入る都度新しいタオルを使うことができます。なので部屋に用意されていたタオルはビニール袋の封を切らずに自宅に持ち帰りました。
アメニティはシャワーキャップ、ヘアーブラシ、綿棒、コットンが用意されています。
化粧品類はビオレのクレンジングシートが用意されていて、化粧水は鷹の巣温泉オリジナルのものが用意されていました。洗顔フォームはハンドと兼用タイプのものだったので、気になる方はご自身の洗顔フォームがある方が良いでしょう。浴室内には角質を撮るタイプのものはありましたが、いわゆる泡立てて洗うタイプの洗顔フォームではありません。
では浴室へ。扉をあけるとほんのり硫黄の匂いがして、温泉に来た感があります。泉質はナトリウム・塩化物・硫酸塩泉でお湯は無色透明。pHは7.4の中性の温泉。さらっとした肌触りに感じました。湯船は5~6人は入れるくらいの大きさです。
湯口からは源泉が注がれています。脱衣所の表示によると、加水・加温・循環なしの源泉かけ流しです。湯口から投入される温泉の量はチョロチョロといったところ。源泉の温度が54℃あるので、絞って注ぐことで湯温調整しているのかも。
毎日お湯を抜いて掃除しているだけあって、とても清潔な湯船でお湯も新鮮です。さきほどの激坂プチ登山で疲れた足の筋肉がほぐれていきます。
木でできた枕が2人分用意されていて、のんびりつかれるようになっているのですが、私にはやや熱めの湯温で、長湯はできませんでしたが、新鮮なお湯だな~と感じました。
内湯からガラス戸をあけると露天風呂です。内湯からそのまま行けるのはありがたいです。露天風呂の湯船は内湯より小さくて2~3人用といったところ。
こちらも源泉かけ流し。
うーん、気持ちいいです!! 最高!
洗い場は4人分あり、カランとシャワーです。シャワーの水圧は十分すぎるほどの水圧で、気を付けて浴びないと、湯船につかっている人にまでしぶきが飛びそうな勢いでした。
シャンプー・コンディショナー・ボディソープはミキモトのシリーズでした。
脱衣所には温泉の成分表が掲示されています。
加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流し。毎日お湯を抜いて掃除されているとのこと。本当に気持ちの良い温泉でした。
「鷹の巣温泉」という名前から想像できる通り、昔、荒川を往く舟人が鷹が河原で湯あみするのを見て発見されたとか。当初は荒川の河原に源泉があったようですが、今は離れの脇あたりに源泉があるのだそうです。源泉が近いのも新鮮なお湯を楽しめる理由なのでしょう。
お食事
温泉宿の楽しみの一つ目は温泉ですが、二つ目は食事ですね。結論を言ってしまうと、食事は美味しいけれど、それほど印象に残る食事ではなかったです。新潟だったのでお米はコシヒカリなのですが、なんかこうモチモチ感が期待を下回ってしまった印象でした。食事は部屋食です。本間の隣の部屋でいただきます。夕食を食べている間に係りの人がお布団を敷いてくれます。夕食は18時か18時半から選びます。
夕食
まずはお品書き。
こちらは八寸。いろいろなお料理が並びます。
ほうずきの中にも食材が入っています。
つづいておすまし。
焼き物は鮎の塩焼き。川沿いの宿の定番メニューですね。
お造りは、マグロ、イサキ、スズキで海の幸でした。
メインは村上牛の石焼。固形燃料の火力で自分で焼いて食べるスタイル。牛は石が十分熱くなってから焼かないと、美味しい肉汁が外にでちゃうのですが、あまり待っていると今度は肉に火が通る前に燃料がなくなる心配もあって、肉を乗せるタイミングが難しいです。まだ十分に加熱されていない時に肉を乗せちゃって、せっかくのお肉を美味しくいただくことができずちょっと残念。
肝心のご飯の写真を撮り忘れました。お品書きによるとコシヒカリ。でも期待していたようなモチモチ感が今一つでした。最後にデザートです。ご飯やデザートのタイミングはフロントに電話すると持ってきてくれます。
私はお酒を飲まないので食事の時に特別飲み物の注文はしませんが、お酒飲む方にはいろいろメニューがありました。さすが米どころ新潟の宿ですね。
お料理は順番に出てきます。食べ終わったお皿があるとその都度持って帰ってくれるのですが、デザートの後はもう係りの人は部屋に入ってきません。ごはん茶碗やデザートの器、お箸などは翌日の朝食の支度の時に片付けるシステムです。宿の人が部屋に入ってこないという点では良いのですが、いつまでもテーブルの上が片付かないのもなんとなく落ち着きません。テーブルのある部屋は基本的に食事の時にしか使いませんが、散らかったままというのはどうなのかな、と思いました。
朝食
朝食は8時から。夕食と同じ部屋食です。8時から食事ができるように係りの人が10分前くらいから部屋に入り支度を始めます。食事する場所と本間のふすまを閉めておくのが良いですね。朝食は温泉旅館らしい献立でした。卵焼きがとってもボリュームありましたよ。
コーヒー・紅茶はフリードリンク
食後にコーヒーを飲みたくなるのは私だけではないはず。「鷹の巣館」では食後にコーヒーは出てきませんが、ロビーにコーヒー・紅茶が用意されていて、食事時に限らずいつでも自分でいれて飲むことができます。
紅茶類は種類豊富です。
食後にはドリップコーヒーも入っていました。
まとめ
何より温泉が新鮮で気持ち良かったのが印象に残りました。川沿いの宿ですが、本館の部屋は川に面していないので、川の音も聞こえません。泊まった時には家族ずれがいなかったこともあり、静かに過ごせました。本数が少ない米坂線で向かう場合、チェックイン時間に合わせて到着するのは難しいのですが、チェックイン時間前でも部屋を使わせていただけたのが本当に助かりました。食事のメニューには満足ですが、白いご飯に感激できなかったのがちょっと残念だったかな。
こちらの宿は、以前洪水の災害で建物が壊滅的な被害を受けたことがあります。昭和40年代頃の水害だったはず。宿へのアクセスは吊り橋のみなので、重機が入れず、再建には大変苦労されたとのこと。今はそんな災害の影響は全く感じさせませんが、よくぞ復旧してくれました、と思います。フリードリンクのあるロビーに昔のアルバムなどが置いてあるので、是非見てほしいです。温泉宿復旧の熱意のたまものだと思います。これからもこの素晴らしいお湯を守っていってほしいと思いました。
2つ目の秘湯の会のスタンプがゲットできました。次はどこの秘湯の会の宿に泊まれるかしら?
米坂線にのりながら途中で泊まるのであればオススメの宿だと思います。今回は週末パスを利用しての鉄道旅の途中で寄りました。週末パスは土日にJR東日本区域を旅行するには便利なパスでした!
それでは皆さまも良い旅を~