那須塩原温泉は栃木県にあり、箒川という渓流沿いを中心に、元湯、新湯など、11地区の温泉地があります。温泉の種類も色も多様です。最寄りの新幹線の駅は那須塩原駅。東京からなら1時間ちょい。そこからJRの路線バスで1時間ほどで到着できます。静岡県東部に住む私にとっては、交通の便も良いのです。今回はにごり湯につかりたくて、那須塩原温泉の中でも山奥に位置する元湯温泉地区にある「元泉館」に泊まりました。3つの浴室に異なる源泉からのにごり湯があふれる宿。10月の行楽シーズンは平日でも一人旅お断りの宿がある中で、元泉館は一人旅でも塩原温泉バスターミナルから無料送迎があり、部屋食が選べ、ネットで予約可能という大変ありがたい宿でした。(2020年10月)
建物
鉄筋コンクリートの3階建て。中にエレベーターがあります。建物の外にいても、硫黄(本当は硫化水素)の匂いがプンプンしています。これは期待できます。
築何年かわかりませんが、建物の内部は温泉成分の影響もあるのか、じゅうたんにシミが目立つ所がありましたが、滞在するのに何ら困ることはありません。
こちらの宿はペットも宿泊可とのこと。この日もワンコ連れのお客様がいたようで、ときおり鳴く声がしましたが、しつけが行き届いているようで、夜中などは全く静かでした。むしろ壁が薄いのか、隣の話声の方が聞こえてきます。
お部屋
案内されたお部屋は3階で、10畳プラス広縁という一人旅には広々としたお部屋でした。窓のカーテンがレールから外れていたけれど、まぁそういうガタが来てしまうのはしかたないですね。窓は網戸があるので、暑ければ網戸にしておくと、涼しい風が入ってきました。
窓からの景色です。駐車場の奥には箒川の支流が流れています。10月中旬ですが、紅葉にはまだ早い感じです。写真右の方にちょこっと写っている建物は、露天風呂付の大浴場です。
お部屋には洗面所とウォシュレット付きトイレがあります。硫黄の影響か、金属部分は黒く変色していますが、ほこりがたまっているようなことはありませんでした。洗面台は手洗い石鹸ではなく、ボディソープが置いてありました。


バスタオルや浴衣などはお部屋に用意されています。白いビニール袋の中はお風呂で使うタオルと歯ブラシ。最近見かけるビニールの巾着袋はありません。
お茶セットは緑茶のみ。ポットは最初からお部屋に用意されていますが、保温機能のみのポットです。翌朝新しいポットに交換してくれました。冷水のサービスはありません。


お茶請けのお菓子と冷蔵庫です。


部屋には個別のエアコンがあるので、自分で好きな温度に調整できますが、ちょうど冷房も暖房もいらない時期で使いませんでした。でも個別空調があるのは助かります。
暖房はリンナイの暖房機が用意されていました。冬は冷えるんでしょうね。
Wifiは部屋でも問題なくつながりますが、室内にPWの案内がなく、フロントに問い合わせました。Wifi使う方はチェックインの時に確認しておくのが良さそうです。またコンセントは室内に十分あるので、充電は困りません。
すべて異なる源泉、すべてにごり湯の3つの浴室
元泉館には3つの浴室があります。すべてにごり湯ですが、源泉はすべて異なります。泉質は同じですが、成分や源泉の温度などがビミョーに異なるのです。
大浴場(高尾の湯)
宿泊している建物から渡り廊下を渡った先にある大浴場は、男女別に内風呂と露天風呂があり、露天風呂は渓流に面しています。利用時間は朝7時から夜9時半まで。夜9時半で終了というのは、ちょっと短い感じがしますね。日帰り温泉で利用できるのはこちらの大浴場、高尾の湯のみ。
泉質は泉質は「含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉(硫化水素型)」でpHは6.6とほぼ中性の温泉です。お湯は御覧の通りのにごり湯。硫黄の匂いがプンプンしていて、一度入ると、体に硫黄の匂いがしみついて、着ている服まで硫黄臭くなりました。ま、それがいいんですけど。
湯船の湯はにごり湯ですが、源泉は実は無色透明なのです。空気に触れて濁るんですね。成分表によると、メタケイ酸が1リットルに244mgと豊富なのも嬉しいお湯です。
内湯8人くらい入っても大丈夫そうな広さがあります。露天風呂は4人入るといっぱいかな。湯温は露天風呂はややぬるく、いつまででも入っていられそうな湯温でした。39~40度くらいの印象です。
内風呂側にシャワー付きカランは5人分くらいあります。シャンプー、コンディショナー、ボディソープが用意されていました。
脱衣所はオープンな棚タイプ。宿泊のお客さんは貴重品をフロントに預けて下さい、という貼り紙がありました。なんでも部屋の鍵を使って空き巣に入る事件があったらしいです。


邯鄲(かんたん)の湯
こちらは1か所しかなく、基本は混浴のお風呂ですが、チェックイン後の3時から夜8時半までは女性専用時間帯です。チェックイン後に入るか、夕食後に入るかが良いでしょう。
脱衣所は男女別ですが、浴室に向かう階段で男女が合流するスタイルですし、湯船は4人も入ればいっぱいという小さな岩風呂なので、混浴時間帯に女性が入るのはちょっと難しいでしょう。こちらの温泉は壁の岩の間から温泉がしみだしてくるという珍しいお風呂です。湧出量は1分間に1.9リットルと少ないのですが、しみだす場所にたまったお湯は透き通っていました。メタケイ酸は高尾の湯より多くて、1リットルに339.3mgという標示でした。
飲泉所
上の写真で暖簾の手前に湯呑が積んでありますが、元泉館の温泉は飲泉可能なのです。聞けば、源泉を湧水で割って飲みやすくしてあるそうで、ごくごく飲める温泉でした。翌朝はこの温泉で炊いた御粥が供されます。
宝の湯
こちらは夜7時から夜通し入れる、内湯のみのお風呂です。大浴場は夜9時半で終了ですが、夜遅い時間に入る場合はこちらを利用してね、ということのようです。浴室は男女別で、ヒノキの浴槽。硫黄の香と檜の香がまじりあって、「あぁ、温泉宿」という感じです。
金曜日の夜でしたが、独泉でのんびり利用させていただきました。給湯口にはびっしりと温泉の成分がついているのもいいですねー。


もちろん源泉かけ流しです。
こちらは浴室全体も木でできていて、湯治場の雰囲気があります。
宝の湯も先の2つのお風呂とは異なる源泉を使用しています。泉質は同じですが、成分が異なります。こちらのメタケイ酸は136.5mg/Lでした。
お食事
食事はプランによっては広間でいただくのですが、私のプランは夕食・朝食ともに部屋食でした。他の人との接点が少なくて、コロナ禍での旅では部屋食がありがたいです。
夕食
お造り、イワナの塩焼き、個別の鍋に茶碗蒸しなど、ごく一般的な温泉宿の食事です。お品書きはなかったですが、これなんだろう?と戸惑う食材もなかったです。量も私にはちょうどよくて、美味しくいただきました。
朝食
朝食も一般的なメニューと思います。鍋の中は湯豆腐です。
温泉粥がこちらの宿の名物です。普通の白いご飯と温泉粥と両方提供されるのですが、さすがに両方を食べきることはできず。温泉粥だけいただきました。ふっくらしていて美味しかったです。


アクセス
元泉館があるのは元湯地区という山奥です。JRの那須塩原駅からJRバスで1時間弱ほどで塩原温泉バスターミナルに到着します。バスターミナルからは無料の送迎があるので、利用をお勧めします。事前予約が必要です。
国道沿いに元湯温泉口というバス停があり、バス停からだと徒歩1時間ちょいのようにグーグルマップ上ではでますが、かなりの上り勾配の道路です。舗装はされていますが、ちょっと寂しい山道なので歩いて向かうのはあまりおススメしません。
送迎車はこんなくねくね道を上ったり下りたりしながら宿に向かうのでした。
センターラインはないし、落ち葉がコーナーにたまっているので、マイカーやレンタカーで行く時にも飛ばしすぎないように注意が必要です。でもこの山道をたどる感じが、秘湯に向かうという気持ちにさせてくれます。
GoToのクーポンで温泉饅頭をお土産に
GoToでクーポン券をいただいたこともあり、お土産に温泉饅頭を買いました。こちらの温泉饅頭はチェックアウト前日の夜9時までに注文しておくと、翌朝作り立てのお饅頭を持ってきてくれるんです。美味しくいただきました。


リンク
宿の公式サイト
宿の公式サイトはこちらです。楽天トラベルやじゃらんだと出てこなかった一人旅プランが、宿の公式サイトだとありました。一人旅の方で旅行サイトでヒットしない場合は、宿の公式サイトで検索してみると良いと思います。
那須塩原温泉の情報サイト
那須塩原温泉の公式サイトでは、温泉の泉質ごとや色ごとに宿が検索できるようになっていて便利です。新幹線とJRバスの乗り継ぎ時刻表情報もあります。
私の那須旅行記
箒川沿いには遊歩道があり、滝やつり橋をめぐることができます。9月の大雨で通行止めの遊歩道もありましたが、渓谷はなかなか楽しそう。遊歩道が歩けるようになったらまた行ってみたいと思います。また那須塩原駅からは那須岳・那須湯本温泉にもアクセスできます。実は2泊3日で那須岳・那須湯本温泉・那須塩原温泉を巡ったので、こちらにまとめました。10月中旬の那須岳は素晴らしい紅葉でしたが、大渋滞でした。
まとめ
那須塩原温泉郷の中でにごり湯が楽しめるのは、元湯地区と新湯地区の宿です。元泉館以外にも一人旅プランが用意され、かつ無料の送迎がある宿がありましたが、ネットで予約が完結できるのは、元泉館だけでした。他の宿は「電話で問い合わせてください」とあったので電話すると、「紅葉の時期は一人旅は不可」という宿もありました。紅葉には2週間は早い時期だったんですけど、一人旅不可の時期が決まっているのなら、そのようにサイトに書いておいてくれればよいのに・・・と思いましたが、元泉館には無事宿泊できて良かったです。
アクセスでもわかる通り、かなりの山奥で人手も限られている印象でしたが、お世話してくれた年配のおばちゃんがとても親切で、腰が痛いと言いつつもめちゃくちゃ頑張っていて、いやな思いは全くありませんでした。周囲に散策できる場所もあったのですが、翌朝は土砂降りで歩けず残念。にごり湯が楽しめる宿なので、また来たいと思います。