強首温泉「樅峰苑」を一発で読める人がどれだけいるでしょうか?私は全く読めませんでした。こわくびおんせん「しょうほうえん」と読みます。「樅」は「もみの木」の「もみ」です。大きな赤い屋根が特徴の豪壮な建物は、この地の庄屋だった小山田家の第12代当主が大正6年に建てたものです。いかにも庄屋さんにお屋敷に泊めていただくといった感じがしました。馴染みのない名前の温泉と宿でしたが、とっても濃くて温まる温泉に、近所の川で取れる川カニと鯉を使ったお料理は工夫が凝らされていてとても美味しかったです。今回は夫婦二人旅でしたが、一人旅も受け入れてくれるありがたい宿です。日本の秘湯を守る会の会員宿でもあります。
建物
大きな赤い屋根が一段と目を引きます。下の写真では建物の奥に高くそびえる樅の木が見えますが、樹齢380年を超える大木で、こちらが宿名の由来になっています。
技巧をこらした破風が特徴の屋根。
玄関を入ると、一枚通しの天然秋田杉を使った廊下がどーん。
階段も凝った意匠の急階段でした。
今回は特別室に宿泊
ちょっとしたお祝い事があり、今回は奮発して特別室に宿泊しました。10畳2間の広いお部屋です。
テーブルと椅子の向こう側の障子をあけると幅は狭いですが縁側があり、そこからは宿の名前の由来になった樅の木と露天風呂がある湯小屋を見ることができました。
部屋にはテレビはありませんが、PWなしのWifiはあるので、ネット環境は良かったです。こういう古い建物の宿はコンセントの数が少ないこともありますが、床の間に2口ありました。また照明もエアコンもリモコンで操作できるので、お布団に入ったまま照明オフできるのは大変便利です。
お部屋のタンスの中にはタオルや浴衣類が用意されています。男性は普通の浴衣ですが、女性には作務衣が用意されていました。またこちらの宿はスリッパの用意がないかわりに、足袋の用意がありました。ちゃんちゃんこも衣桁に用意がありました。
お茶は抹茶入り玄米茶。お茶請けのお菓子はあきたこまちを使用した「抹茶わらび餅」というこの宿オリジナルのお菓子でした。ねっとりしていて美味しくいただきました。
こちらの宿は全部で7室。いずれもトイレ・洗面は部屋にはなく共同です。特別室の目の前にトイレがあるので不便はないのですが、こういう時期トイレ・洗面は部屋の中にある方がなんとなく安心感があります。特に歯磨きする場所がトイレの手洗い場しかなかったので、気になりました。まぁ宿全体に滞在している人数は限られているので、人とかち合うことはないのですが、洗面ボウル周辺に水滴が飛び散っていたりすると、やっぱり気にはなりますね。ただ消毒剤が用意されていたので、水栓金具や洗面台などは使う前に消毒させていただきました。
よう素泉のにごり湯を堪能する
部屋で一息ついたので、食事前にお風呂に入ることにしました。こちらの宿には男女別の大浴場に内湯があります。大浴場には露天風呂はありませんが、別棟に貸切制の露天風呂が2つあり、フロントで予約してから利用するシステムです。いずれも敷地内に自家源泉を持っていて、加水・加温・循環なしの源泉かけ流しで楽しめます。
泉質
泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」といいます。よう素泉というのは、2014年の鉱泉分析法指針の改訂で新たに加わった泉質です。今までいろんな温泉に入りましたが、初めて入る泉質でした。
溶存物質が温泉1kg中22.24gとメチャ濃い温泉です。この数値が20gを超える温泉も初めていただきました。塩分が濃く、なめるとめちゃくちゃショッパイです。源泉の温度が49.8度となかなかいい感じの温度。湯船のお湯はやや熱めの温度でした。お湯は茶褐色のにごり湯です。
大浴場
大浴場は日帰り利用のお客さんも利用します。17時まで受け付けということで、夕方になってから近所の方と思われる方も来ていました。
湯船は一つ。5~6人用という大きさでしょうか。洗い場にはシャワーもあり、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープが揃っています。クレンジングや洗顔フォームはないので、必要な方は持参しましょう。
露天風呂
露天風呂は予約制。チェックインの時に予約して、時間になったらフロントで鍵を借りるシステムです。宿泊棟とは別棟なので、雨の時には傘をさして歩いて行きます。距離はそれほどありません。
湯小屋の入り口が2か所あり、片方は丸い湯船、もう一方は四角い湯船です。
明るい時間帯に入ると、大きなもみの木を眺めながらの湯あみを楽しめます。
地元の食材を丁寧に料理したお食事
夕食・朝食ともに1階の大広間でいただきます。部屋数が少ないので、密になることもなく落ち着いていただけました。
夕食
こちらの食事の特徴は地元の食材や伝統料理を提供してくれること。近くを川が流れていて、その川に生息する川カニや鯉の料理が名物です。
まずはお品書き。先付から水菓子までずらりと並ぶお料理。
席に着くとテーブルには先付からお造りは用意されています。お造りは生湯葉でした。奥のコンロは鍋物の貝焼き、その左はカニ味噌甲羅焼です。
こちらは鯉の甘露煮です。骨まで柔らかく煮込んであるので、全部いただけます。
左は貝焼という、ホタテガイの貝殻で焼くという料理で、中身に貝が入っているわけではありません。右は茶碗蒸しに川カニの餡がかかっています。
左は川カニのから揚げ、右はカニ味噌の甲羅焼。カニ味噌は塩辛い味付けで、ご飯のともにぴったりでした。
最後は特別栽培米のあきたこまちのご飯と、川カニのつみれが入ったお味噌汁、香の物はいぶりがっこです。
川カニ料理も鯉料理もとても美味しくて、お食事を堪能できました。素晴らしいお料理でした。
朝食
朝食はこちら。お魚はヒメマスの甘露煮で頭から全部食べられます。お漬物はいぶりがっこですが、醤油漬けにしてあり、夕食とはちょっと食感が違うのも手が込んでいるなと思いました。
自家製のお豆腐にはしょっつるを加えていただきます。
アクセス
鉄道で行く場合は、奥羽本線の峰吉川駅が最寄り駅。もう一つ公共交通機関を使用する方法として、飛行機が秋田空港に入るという手もあります。峰吉川駅へも秋田空港へも事前に予約しておけば、宿のバスで無料送迎してくれます。
今回、チェックインの時には峰吉川駅から、帰りは秋田空港へ送ってもらう予定でしたが、搭乗予定の飛行機がコロナの影響でキャンセルとなってしまい、行きも帰りも峰吉川駅に送迎してもらいました。
まとめ
自家源泉のよう素泉は溶存物質量がとても多く、塩分が濃いこともあってとても温まりました。温泉も良かったですが、食事場とても印象に残る宿でした。近くの川で取れる川カニ料理は、珍しい献立です。地の食材で献立が作られているのはなんとも嬉しい限りです。晴れていればそのカニが住む川の土手の散歩でも、と思っていましたが、あいにくの雨でちょっと残念。歴史ある立派な建物の宿は、なんだか庄屋さんのお宅に泊めていただくという感じです。トイレ・洗面が共同なのがちょっと不便ではありますが、温泉も食事もスタッフの皆さんの対応も良くてとてもくつろげる宿でした。