天浜線の愛称で呼ばれる「天竜浜名湖鉄道」は、静岡県浜名湖の西にある新所原駅と、新幹線の駅でもある掛川駅を結ぶ静岡県西部を走る路線です。国鉄時代は二俣線として活躍した鉄道路線で、SLも走っていました。今も非電化路線の天浜線にSLの姿はないけれど、かわいい気動車がトコトコと走っています。車窓には山里や浜名湖が広がり、のどかな景色を楽しめます。SLが走っていた路線にはつきものの転車台が天浜線には現役で残っています。転車台を実際に回すところを見せる鉄道はありますが、天浜線は車両に乗って転車台を体験せさてくれるのです。しかも洗車機も体験できるという大変レアな鉄道体験ができる天浜線のツアーに参加したのでご紹介します。
天竜二俣駅へ
洗車機と転車台を体験できるイベントは「洗って!回って!列車でGo」というイベントで、天浜線のちょうど真ん中付近にある天竜二俣駅で行われます。首都圏から向かうのなら、新幹線が止まる掛川駅からのアクセスが良いでしょう。掛川駅からは天浜線で50分弱ですが、1時間に1本程度のダイヤなので、受付時間に間に合うよう、事前に乗り継ぎをチェックしておく必要があります。
掛川駅から天竜二俣駅までの運賃は700円です。お得にはならないですが、掛川と西鹿島間のフリー乗車券が1400円で発売されていて、途中下車したい時にはこちらのフリー乗車券が便利です。
もう一つの手段としては、新幹線で浜松まで行き、遠州鉄道(遠鉄)に乗り換え遠鉄の終点、西鹿島駅で天浜線に乗り換えるという手もあります。
「洗って!回って!列車でGo」はこんなツアー
予約はした方が無難
「洗って!回って!列車でGo」は、案内によると予約制です。そう出ていたので予約しましたが、いざ行ってみると、定員50名に対し20名くらいの参加で、当日参加の方も数名いました。土日祝日のみの開催なので、季節が良い時などは家族連れがたくさんいたりする可能性もあるので、予約した方が無難ですね。予約は電話のみです。詳しくは天浜線のHPを確認してください。
開催日と開催時間と料金
「洗って!回って!列車でGo」は土日祝日のみの開催です。開催時間は11:30~12:15ですが、開始前に受付が必要です。受付は11:00~11:15です。なので11:15より前に天竜二俣駅に到着している必要があります。なお20名以上は団体となり、団体の場合は13:50~14:35という設定ができるそうです。料金は大人も子供も1人500円です。
ツアーの内容
ツアーは、11:23に天竜二俣駅どまりの列車がお客さんを全部下したあと、その列車に乗り込んで、洗車機を通り、転車台に乗って回してもらいます。その後列車から降りて、今度は外から転車台が回る様子を見た後、機関庫や機関庫横に併設の鉄道歴史館を見学して、徒歩で天竜二俣駅に戻ってくる、という内容です。
それでは順にご紹介しましょう。
まずは受付
受付が始まったら、駅の窓口で料金を払って首から下げるパスをもらいます。スタンプが押せるカードももらえるので、待合室にある記念スタンプを押しました。
洗車機と転車台を乗車体験
乗車する
ガイドさんの案内で下り線のホームに移動しました。ここで掛川からくる天竜二俣駅どまりの列車を待ちます。
掛川から乗ってきたお客さんが全部降りた後、行き先表示が「団体」に変わったら乗車準備完了の合図。これから向かうのは天浜線の機関区。駅のホームからも洗車機、その奥に扇形車庫が見えます。洗車機がある線路は一番奥にあります。
洗車機がある線路までは、間に何本も線路があるので、一度掛川方面に走った後、スイッチバックして洗車機の線路に入るという手順です。
一番奥の洗車機の線路に入ったら、またまたスイッチバック。運転士さんは車内を行ったり来たりで大忙しです。
洗車機体験
なかなか列車の中から洗車機を体験することってないと思います。なので前方は御覧の通り大混雑。
洗車機の手前で運転士さんが窓を開けてスイッチオンすると、緑の洗車ブラシが勢いよく回転し、いよいよ洗車機に突入です。
洗車機に入っている間の動画を撮ろうとしたのですが、あまりにブラシが近すぎて何を撮っているのかわからない状態。緑の物体が洗車ブラシです。
前面展望が大混雑だったので、後方展望で撮影しようとしたら、洗車機を抜けると運転士さんが洗車機を止めるスイッチを押し、気づいたときにはもう洗車ブラシは止まっていました。洗車機の醍醐味を味わうには、前面展望席を確保する必要があることを学びました。
転車台に乗って回る
洗車機を出るとそのまま転車台に乗ります。こちらも前面展望でないと、転車台に乗った、という感覚はつかめません。通常転車台は回っても180度だと思いますが、こちらの体験ではくるりとほぼ360度まわしてくれました。車内から見るとこんな感じです。確かに回っています。
1周回してもらったら転車台から列車が降ります。
転車台での転回体験のあと、ツアー参加者は車両から降ります。こんな臨時ホームみたいなところに立てるのもレアな体験な感じがします。
転車台を外から見学
列車を降りると今度は転車台を外から見学します。先ほど乗ってきた列車が転車台に乗って、くるりと回してもらいます。
この後、こちらの列車は燃料補給や点検など通常の業務に戻ります。
扇形車庫
転車台の見学の跡は、扇形車庫を正面から見学。現在は4番までしかない車庫ですが、以前は6番まであったそうです。その頃は今よりももっと扇形というのがわかる車庫だったことでしょう。
かつてはSLが車庫に入っていたせいか、今でも車庫の壁や天井には煤がついているんだとか。歴史を感じます。
鉄道歴史館を見学
続いて扇形車庫に併設の鉄道歴史館の見学タイムが設けられています。
ヘッドマークや硬券切符に入れていたはさみ、今ではほとんど見かけなくなったタブレットなどが展示されています。
歩いて駅舎へ戻りながら文化財を見学
鉄道歴史館を見たら、徒歩で駅舎まで戻ります。その途中にも見どころがあります。右側の黒い木造建築は、登録有形文化財にもなっている天浜線の事務室です。今でも現役で使用されています。
こちらは今は使用されていませんが、かつてSLが走っていた時代に煤で真っ黒になった鉄道員が使っていたお風呂です。今はヘッドマーク置き場になっているようです。
こちらは給水塔。石炭は補給せずとも走れたようですが、水だけは足りなくてこちらの駅で給水をしていたそうです。
こちらは井戸です。ここで水をくみ上げて給水塔に送っていました。
遠州弁を学ぶ
以上で鉄道関連の見学は終了です。最後に駅に戻る道のフェンスに不思議な絵がかかっています。たとえばこちら。「みるい」とありますが、どういう意味かわかりますか?私は遠州地域ではありませんが「みるい」使いますよ。若い、とか未熟とかそういう意味です。
こちらはわかりますか?「ひずるし」とありますが、これはまぶしいという意味です。私は普段この言葉は使いませんが、でも意味は父親から聞いて知っていました。ほかにもいくつか紹介されていましたが、全然わからない遠州弁もありました。
ツアーが終わったら
このツアーが終わるのはだいたい12:15くらい。次に天竜二俣駅を出発する列車は、上りが12:46発の掛川行き、下りは12:48発の新所原行きです。30分くらい余裕があるので、その間にできるプランを2つ。
その1: ランチを食べる
天竜二俣駅の駅舎に併設の「ホームラン軒」というラーメン屋さんがあります。移動時間ゼロなので、空いていればこちらでランチを食べることができます。私は今回こちらでラーメンと半チャーハンをいただき、がーッと食べてギリギリ12:46発の掛川行に乗れました。結構人気の店のようで、開店と同時にツーリングのお客さんとかも来ていました。並ぶこともあるようなので、混雑時は30分でランチというのはちょっときついかもしれません。料金はリーズナブルだと思います。
餃子もあります。
その2: 駅を楽しむ
天竜二俣駅は、ツアーで見学した転車台や扇形車庫以外にも、駅舎やホームも登録有形文化財になっています。そういう文化財を見学したり写真を撮ったりするのも良いでしょう。
有形文化財のホームとその奥に駅舎。
お子様が喜びそうなミニトロッコもあります。
駅舎の外には古い信号が残っています。
また駅前の道路を渡ったところにはSLが展示されています。こちらを見学するのも良いですよ。
まとめ
天竜二俣駅では、今回のツアー以外に、転車台には乗らずに外から転車台を見学するツアーもあり、こちらは平日でも開催されていて予約は不要、大人は200円、子供100円というツアーです。前回天浜線に乗った時に参加しましたが、乗り鉄さんや鉄道遺産が好きな方には、「洗って!回って!列車でGo」の方が断然楽しいです。料金も500円とお安いので、土日祝日に天浜線に乗る時には是非こちらのツアーに参加してみてください。
天浜線はダイヤは1時間に1本程度のローカル線ですが、車窓の景色はのどかでのんびりと楽しむことができます。また歴史を感じさせる駅舎も多く、全部で36施設が国の登録有形文化財になっているので、途中下車しながら楽しむことができます。一日乗車券も掛川から新所原までの一日乗車券以外にも、今回私が利用した半分までの一日乗車券が掛川からと新所原からの両方でありますし、一日乗車権を買うと、こんなパンフレットをもらえるので、グルメ旅もできそうです。
一日乗車券については天浜線のサイトの「お得な乗車券」のページをご覧ください。
それでは皆さまも良い旅を~