鉄道と自転車でプチ冒険に出よう

主に鉄道で行く温泉を楽しみ、旅の記念にマンホールの捕獲を楽しんでいます。宿の宿泊記やマンホールカードを紹介しています。

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田辺朔郎氏の偉業を訪ねて。石北本線の旅その2 天幕三次郎を思いつつ北見から旭川まで

琵琶湖疏水を完成させた田辺朔郎氏は北海道の鉄道敷設にも大きな貢献をしたことを田村喜子さんの著書「北海道浪漫鉄道」で知り、田辺氏の偉業を訪ねてみようと、石北線の乗り鉄旅に出かけました。こちらのエントリでは旅の後半、北見から旭川までをご紹介します。羽田をたち、網走から北見まではこちらのエントリにまとめました。 

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北見からは快速列車に乗車

北見から旭川までは184.7キロあり、乗り換えなしで行く場合は特急に乗ることになるのですが、一日に一本だけ快速が走っていて、北見駅始発で旭川まで乗り換えなしで行くことができます。特急より30分くらい快速の方が余計に時間がかかりますが、特急券不要で乗れるのが魅力です。

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快速「きたみ」

車内はセミクロスシート。遠軽でスイッチバックして方向がかわるので、向きを変えられるシートでした。ドアの向こう側に出るとトイレがあります。そこからの前面展望も楽しめました。

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車内は方向転換できるクロスシート

運賃のみで旭川まで行ける列車なので、もしかして混雑している?と思いましたが、北見から乗ったのは5人程度でした。

愛のない駅?

快速「きたみ」は北見駅を出てから留辺蘂(るべしべ)駅までは各駅に停車します。3つ目の駅はひらがなで書くと「あいのない駅」という駅名。耳で聞いただけだと「愛のない駅」と聞こえてしまいますが、漢字で書くと「相内駅」と書きます。北海道の地名には「〇〇ない」という地名をよく目にします。調べると「ない」には川とか沢とかそういう意味があるようです。twitterでフォローしている方が先日「ヤリキレナイ川」というのを紹介していたのを思い出しました。

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「あいのない駅」

「あいのない駅」を出ると前方に雪をかぶった山並みが見えてきました。北海道らしい景色になってきましたね。

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前方に白い山が見えてきた

徐々に常紋峠に向けて標高が高くなっていくのがわかります。線路の両脇も畑からいつのまにか林にかわってきました。

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標高が上がっていく

こちらは金華信号場。以前は駅でしたが、2016年3月に信号場となりました。快速「きたみ」はここで特急との列車交換のため一時停車します。

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金華信号場

下りの特急「オホーツク1号」は定刻より2~3分ほど遅れて通過していきました。

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特急「オホーツク」と列車交換

心霊スポット?の常紋トンネル

金華信号場を出発し、さらに標高を上げていきます。間もなくこんな施設が見えてきます。スイッチバックの常紋信号場ですが、今は使用されていません。かつて蒸気機関車が重連で峠越えをしていた時代には、たくさんの撮り鉄さんが来ていたそうですよ。

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スイッチバック採用の常紋信号場は今は使われていない

信号場を抜けるとすぐに常紋トンネルです。

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常紋トンネル

今回の旅は「田辺朔郎氏の偉業を訪ねて」なのですが、石北本線に乗る前に読んだ本がもう一冊あります。その名も常紋トンネル。このトンネルを見るのも旅の目的の一つでした。

 

「タコ部屋」という言葉を聞いたことがあるでしょう。過酷な環境で強制労働させられたタコ労働者の力で作られたトンネルなのです。あまりのつらさに逃げ出す労働者があとを絶ちませんでしたが、逃げても連れ戻され、厳しい仕打ちの日々。粗末な食事もたたり亡くなる人も大勢いました。その亡骸はトンネルに埋められたとか。のちにトンネルの補修工事で壁を掘り返したら実際に人骨が出たということもあって、実は心霊スポットにもなっているようです。 「常紋トンネル」の本の中にはその過酷な状況が記されていて、読んでいてあまり気持ちの良いものではありませんでしたが、北海道の道路や鉄道はタコ労働者や囚人労働者など、人権を無視した環境で働かされた人々によって開拓されたのでした。先ほど紹介した金華信号場近くには慰霊碑がたっています。なるほど、心霊スポットと言われるわけですね。

幸いにして心霊現象に出会うことなく常紋トンネルを抜けることができました。トンネルを抜けると、線路の間には雪が残っていました。

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トンネルを抜けると雪が

常紋トンネルを抜けると下り勾配。エンジンがほっと一息ついている感じでした。標高が下がるにつれ雪も消え、周辺には北海道らしい広大な農地が広がります。玉ねぎとかつくるのでしょうか?

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広大な畑が広がる

転車台のある遠軽駅

北見駅を出発して1時間10分、快速「きたみ」は石北本線の主要駅の一つ遠軽駅に到着しました。ちなみに特急だと55分くらいで遠軽駅まで来ます。

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遠軽駅に到着

現在は石北本線しか遠軽駅を通りませんが、かつては名寄本線の列車も遠軽駅を発着していました。名寄本線は遠軽からオホーツク海に面した湧別に伸びていました。このルートは田辺朔郎氏が踏査したルートです。今は廃線になってしまっているのが残念です。かつては機関庫があったのでしょう、駅の奥には転車台があります。あちらのホームまで行ってもっと近くで見たいけれど、停車時間が5分くらいしかないので、遠くから眺めました。

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駅の奥には転車台

以前転車台を紹介したエントリで、上空からの写真で遠軽駅の転車台を紹介しました。念願かなって直に眺めることができて嬉しいです。 

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遠軽駅ではスイッチバックとなり進む方向がかわります。 乗客も各自自分のシートをばったんこして向きを変えます。下の写真、左からの線路が北見から乗ってきた線路。右側が旭川に向かう線路です。

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遠軽駅では進行方向が変わる

遠軽駅の近くにはこんな岩山がありました。 瞰望岩(がんぼういわ)と呼ばれていて、頂上には東屋が見えたので登れるようです。見晴らしが良さそうですね。遠軽で途中下車して次の列車を待つようなプランの時には登ってみても良いかも。

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瞰望岩(がんぼういわ)

瞰望岩の足元は公園になっていてSLが保存されているのが車窓から見えました。

最長駅間距離の区間を走る

遠軽駅を出ると次の停車駅までの間隔が長くなります。20分くらい走ってるでしょうか。駅でない場所で停車して、列車交換することもあります。下白滝信号場で普通列車と列車交換。

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下白滝信号場

白滝駅に停車したのち、列車は北見峠に向けてさらに標高を上げていきます。だんだんと雪の量が増えてきました。さっきまで青空が出ていたのに、どんより雪雲になってきました。

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雪の量が多くなる

白滝駅の次の駅は上川駅ですが、駅間距離は37.3キロもあります。快速列車だからではなく、本当に白滝駅と上川駅の間には駅がないんです。かつては奥白滝、上越、中越という駅がありましたが、今は信号場になってしまいました。ちなみに上越、中越は「かみこし」「なかこし」と読みます。

こちらは奥白滝信号場。静けさの中にたたずんでいる感じです。

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奥白滝信号場

奥白滝信号場の次は上越信号場ですが、写真を撮り忘れました。上越信号場は標高634 mで、この時点で北海道内の停車場としては最も高い所に位置するのだそうです。

続いて中越信号場。周囲に民家はなく、駅が廃止になるのもしかたないですね。

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中越信号場

田辺朔郎氏ゆかりの天幕駅跡を通過

中越信号場から次の停車駅の上川駅までは7キロほどの距離があります。この途中にかつて「天幕駅」という駅がありました。下の写真、レールの先がちょっと曲がっていますね。この辺りがかつての駅だったのでは?と思います。

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天幕駅跡付近・・・と思う

田村喜子さんの「北海道浪漫鉄道」によると、田辺朔郎氏が北海道鉄道網敷設のためにルートを検討する調査に出かけた際、天幕駅付近に住んでいた「天幕三次郎」の家に宿泊しています。旭川側から雨の中を出発した田辺朔郎氏と助手の中村氏は馬に乗って深い原生林の中を進みます。上の写真の通り、今でも針葉樹の森の中です。こうした中に天幕三次郎は小屋を建てて一人で狩猟生活を送っていました。不便な生活だったと思いますが、三次郎はお風呂まで用意して田辺氏達をもてなしました。このもてなしに感謝して、のちに敷設した鉄道の駅に彼の名をとり「天幕駅」と名付けたと「北海道浪漫鉄道」には記されています。なんとも素敵なお話です。

天幕駅はすでに廃止され、駅の痕跡は列車の中からは見ることはできませんでした。Wikipediaなどを見ると、天幕駅跡という標示がたっているようです。

石北北線の旅の終点

天幕駅跡をなんの痕跡もなかったように快速「きたみ」は通過し、やっと次の駅「上川駅」に到着しました。北見を出る時には晴れ渡った青空でしたが、雪がチラチラ降る天気。峠を越すと天気ががらりと変わります。

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上川駅

上川駅からこの列車の終点の旭川駅の間には14の駅がありますが、快速「きたみ」はそのほとんどをすっ飛ばし、「当麻駅」にのみ停車します。特急と大して変わりません。線路が高架になると石北本線の旅もいよいよおしまい。終点の旭川駅に到着です。北見を出発してから3時間20分くらいの乗車でした。

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旭川駅に到着

石北本線の旅のまとめ

乗客が少ない路線なので廃線の危機にある路線の一つと思います。絶景を楽しむという路線ではなかったですが、雪をかぶった針葉樹の間を走る光景は風情たっぷり。この路線を乗るのなら冬が似合いそうです。一日で乗り通してしまうのも良いですが、北見で泊まっても良いし、遠軽近辺には温泉宿が数軒あるのでそういった宿に泊まりながら乗車するのも良いかな、と思いました。あまりに雪が深いと運休になってしまうかもしれませんが、非電化の冬の峠越えの鉄路は旅情にあふれています。

北海道鉄道敷設には田辺朔郎氏の苦労だけでなく、重労働を強いられた歴史もありました。私が今鉄道旅を楽しめるのもそうした人たちのおかげなんだな、と感謝しながらこの旅を終えることができました。

この旅のその1のエントリはこちらです。 

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