長野県の別所温泉は、硫黄の香が漂うアルカリ性のお湯で、お肌がツルツルしてくる女性に嬉しい温泉です。「別所温泉駅」の駅前が温泉街で鉄道でのアクセスが良い温泉地。有形文化財の建物がステキな老舗旅館「花屋」に、土曜日の夜でも一人で泊まれるプランが出ていました。お値段は2万円を超えてしまい、ちょっと高かったけれど、まだまだ土曜日に一人泊できる宿は貴重なのでご紹介します。
※この記事は2019年3月に宿泊したときのものです。当時は土曜日の夜でも1人旅プランがありましたが、2022年8月に宿のプランをチェックしたところ、土曜日の夜は1人旅プランの空室はありませんでした。
「花屋」まで駅から徒歩10分
最寄駅は上田電鉄終点「別所温泉駅」。温泉の名前が駅名になっているというだけあって、駅前が温泉街です。温泉街と言っても歓楽街ではなく、宿や食堂が点在しているという感じ。信州の鎌倉というタイトルの通り、神社仏閣もある落ち着いた温泉街という印象でした。
「花屋」は駅から徒歩5~10分くらいです。
別所温泉の街は、駅から上り坂の中にあり、離れた宿だと歩いて行ける距離ですが、思いのほか足がくたびれそうですが、「花屋」はそんな坂の中の宿の中では一番駅に近い旅館の一つです。
それでも歩くのはつらい、という方には、列車の到着時間に合わせて、温泉街を回ってくれる無料のシャトルバスがあります。(ただし到着時間が14時から17時台。12月~3月は土日のみ対応)
チェックインはこんな趣のあるロビーで行います。ウェルカムドリンクとかはありませんでした。
お部屋
今回のプランは木造2階建ての本館のお部屋。「花屋」を紹介する雑誌や写真などでは、渡り廊下で奥へ奥ヘと進んでいく写真が出ていて、離れの客室がウリなんだと思います。温泉露天風呂付きの離れもありますが、一人旅の私にはちょっと予算があいません。なので本館のお部屋を予約しました。土曜日の2食付きで23,910円でした。
お部屋は、本館2階の6番というお部屋。踏み込み、2畳の取次、8畳の和室、広縁で、広縁の奥にトイレ、反対側に洗面所があるお部屋でした。
鏡のある場所が室内の洗面所です。
部屋に案内してくれた係りの女性がお茶を入れてくれ、温泉の案内や食事時間の確認をしてくれます。お茶請けはみすず飴でした。
お部屋には、浴衣と半纏、お風呂用のタオルとバスタオル。お風呂用のタオルを入れるビニール袋もついています。さすが老舗旅館、旅館名は印刷ではなく刺繍ですね。
アメニティはシャワーキャップやブラシなど基本的な物のみ。化粧水や乳液も部屋にはありませんでした。
別所温泉街には共同浴場があり、外湯の入場券がサービスされました。外湯に行くのに便利な湯籠は室内にはないのですが、玄関で貸し出ししていました。一人泊でしたが、なぜかカギは2本貸してくれました。お箸がお土産につきました。
冷蔵庫は広縁にあります。中にはビールなどの飲み物があらかじめ入っていて、自分で伝票に書いて精算するシステムでした。お水も有料です。
Wi-fiフロントで聞いてみたのですが「ご用意はありません」とのこと。うーん、残念です。
温泉
まだ館内にお客さんは多くはなさそうだったので、空いているうちに温泉を楽しむことにしました。大理石風呂と若草風呂という2つの大浴場があり、時間で入れ替え制。入れ替えの時間帯以外は滞在中、いつでも入れます。チェックインした時間帯は、若草風呂が女性用です。
若草風呂
こちらが若草風呂の入り口。
中に入ると、まだ誰もいません。独泉できそうです。
脱衣所内には、冷水器がありました。洗面台含めてお掃除が行き届いている印象。
アメニティはクレンジングと綿棒だけで、化粧水、乳液、コットンはありません。
浴室内に入ると、硫黄泉というだけあって、硫黄のかおりがして、あ~温泉にきた~という感じがします。湯船は広々。外の景色は、見えなくもないですが、あまり良い景色というわけではありません。外の光が入って、とても明るい浴室で気持ち良いです。
ふぅ~気持ちいい~。温泉は源泉かけ流しです。湯温は40~41℃くらいかな。熱すぎず、ゆっくり沈んでいられます。pHが8.7でアルカリ性の温泉のせいか、入っていると肌がつるつるしてくるのがわかります。
別所温泉の飲める温泉なので、給湯口にはコップが用意されていました。
露天風呂
貸切状態だとのびのび入れるので、若草風呂で温まったあとは、露天風呂にはしご湯しました。何でも空いているうちが一番です。内湯から直接行くことはできないので、一度浴衣を着て向かいます。
露天風呂までは少し歩きます。屋根はありますが、風が強い雨の日は少し濡れるかも。この日はお天気が良く、緑の中を歩いてお風呂に行くのも風情があります。
露天風呂は男女別々に用意されています。
脱衣所です。2~3人立ったらいっぱいかも。露天風呂との間にドアはないので、夏は蚊がいるかもしれませねぇ。
脱衣所を露天風呂側からみるとこんな感じ。風雨が強い時には中に雨が吹き込むかもしれません。
露天風呂に屋根はないので、雨の日は入りづらいかもしれませんね。
こちらもじっくり沈んでいられる温度です。屋外のせいか、硫黄のかおりは内湯より弱いかも。
露天風呂がある場所の横は川が流れていますが、その向こうに観光客用の駐車場があるため、眺望はありません。けれど、塀の内側に木が植えられていて、スペースもそこそこあるので、木々の緑と青空を見ながら入れる露天風呂は気持ち良いです。
大理石風呂
内湯のもう一つ、大理石風呂は夜10時からが女性用になります。
大理石風呂はちょっと変わったレイアウトで、浴室内が壁で二つに仕切られています。想像するに、昔は仕切られた狭い方が女湯、広い方が男湯だったのではないでしょうか。脱衣場は一部屋になっているのですが、脱衣かごの置き場が2箇所に分かれていました。まずは小さい方の浴室。
こちらは大きい方の浴室で、湯船は2つあります。
こちらも気持ちいい。別所温泉のお湯は温度が熱すぎず、私好みなのがとっても良いです。
こちらの湯口にも飲泉用のコップが用意されています。
浴室内にはミキモトのシャンプー、リンス、ボディソープです。
脱衣所は広々。脱衣かごの位置は左右2手に分かれています。
洗面台も清潔。でも化粧水や乳液などはありません。
湯上りには麦茶の用意。
温泉の成分と利用状況
温泉成分表は、内湯も露天風呂も脱衣所に掲示されています。
4号源泉とありますが、花屋の自家源泉ではなく、別所温泉の共同源泉のようですね。泉質はアルカリ性単純硫黄泉です。利用状況は、加水あり、加温あり、循環なし、源泉かけ流し100%とのこと。嬉しいです。
内湯はいつ行っても、シャワーが同じ方向に揃えられていたり、洗面台のドライヤーも同じ向きを並べられていて、清掃が行き届いている印象でした。
食事
本館宿泊者の食事は夕食・朝食ともに食事処でいただきます。離れは部屋食のプランもあるようです。
夕食
夕食の会場は折り上げ天井になっていて、さすが有形文化財の宿と言う感じ。
本日の献立。
食前酒を飲んでお食事スタートです。
八寸のお料理はどれも美味しそう。
お造りは海のお魚でした。
蒸し物は豆乳蒸し。
この豆乳蒸し、中にカキが入っていて、貝が食べられない私は思わずギョッとしました。予約の時にも貝が食べられないことは伝えてあったし、チェックインの時にも係りの方が「貝が食べられないと伺っています」と確認もしてくれたので、安心していたのですが…。まぁアレルギーと言っても、貝そのものを食べなければ大丈夫なので、カキはそのまま器の中に残しました。それで気が付いたのか、後から男性の方が謝罪にみえました。
焼き魚は鰆でした。
お鍋は豚肉のしゃぶしゃぶです。
ご飯は長野県産コシヒカリで美味しかったです。
食後にデザート。
朝食
朝食会場は夕食とは別の会場で山小屋風な感じの室内でした。
いろいろなお料理が籠の中に入っていて見た目もかわいい。
まずは信州リンゴのジュースから。
卵料理は、オムレツ、だし巻卵、温泉卵の3つからチョイスというシステム。私は温泉卵をチョイスしましたが、冷たい温泉卵が出てきてちょっと残念。
食後にコーヒーが飲みたかったな、と思いました。
登録有形文化財の館内を探検
「花屋」の建物は国の登録有形文化財になっていて、日本文化遺産を守る会の会員宿でもあります。私は古い木造建築の宿が好きなんです。白い蔵のような建物も素敵。夕食会場だった場所かな?
玄関も風格があります。創業は大正6年という歴史のある宿です。
階段もピカピカに磨かれていて、生け花が映えますね。
館内
館内のレイアウト図です。私が宿泊した本館(写真の右端の1~8の部屋がある建物)の部屋数は少なく、離れがメインの宿なのがわかります。迷路のよう。
2階から奥の方を見てみました。屋根が重なりあっていて、奥行きの深さを感じさせます。
「花屋」といえば、この渡り廊下をイメージされる方も多いのでは?雑誌などに紹介されているシーンですね。
渡り廊下は池の上を横断しています。
奥の方へ探検に出かけました。
水車がありました。
この格子戸の向こうは武家屋敷の間のようです。横には石垣を模した壁まであります。2人以上だと宿泊できるようです。
格子戸はあかないので、横の渡り廊下をさらに奥へ進んでみます。
いったいどこまで続いているんでしょう。さすがに離れの人に出会いそうなので引き返しました。
扉に新聞がはさんであるお部屋もあったので、離れのお客さまには朝刊のサービスがありそうです。
お庭
露天風呂に行く時に、通路が露天風呂の入口よりさらに奥に続いていたので、そちらにも行ってみました。なんてったって、敷地面積は6500坪という広大な敷地です。
奥へ続く道。
進むと一軒家とお庭に出ました。昔は誰かのお家だったのかな。今は誰も住んでいなそうだし、宿泊棟というわけでもなさそうです。
嬉しい11時チェックアウト
「花屋」の嬉しいサービスの一つに、11時チェックアウトがあります。チェックアウトは10時のお宿が多いけれど、11時チェックアウトだと、朝の時間が有効に使えます。私は荷物を部屋に置いたまま、別所温泉街をぐるっと回ることができました。 別所温泉の中には北向き観音や足湯、お洒落なカフェがあるので、朝食の後に散歩に出るのも良いですよ。
全体を通じて
別所温泉は温泉が気に入りました。熱すぎず、かすかに硫黄の香がするお湯が私好みです。お肌がツルツルになるアルカリ性というのも嬉しい。ただこれは共同源泉のようなので、花屋以外の宿でも楽しめるのだと思います。温泉街にある足湯でも同じように感じたので。
宿の女性スタッフは皆さん到着時も翌朝も着物を着ているし、木造の建物や大理石風呂のしつらえなどからも風格が伝わる旅館でした。スタッフも多いので、何かを待たされる、ということはなかったし、清掃も行き届いている印象です。お風呂はいつ行っても綺麗に整えられていました。
一方で1泊2万円以上するお宿(2食つき入湯税込みで、23,910円)。にしては、「?」 と思うもありました。食べられない食材については事前に電話で確認したし、到着時にも係りの人が確認してくれていたにも関わらず、夕食時にその食材が出てきてびっくり。wi-fiがなく、朝のコーヒーもないのはマイナスポイントでした。支払いはクレジットカードOKです。
一人旅プランがあるのはとてもありがたいのですが、食事の時に席は夕食も朝食も一番厨房に近い席をあてられて、ひっきりなしに仲居さんが出たり入ったり。ちょっと落ち着きませんでした。ついたてみたいなものがあると良かったと思います。
花屋の公式サイトはこちらです。
温泉が気に入ったので、また別所温泉には行くと思いますが、他にもお宿があったので、次回は別の宿をチョイスしてみようと思います。お宿は別所温泉の観光協会にも掲載があります。
一人旅を歓迎していそうな宿としてはこちらの宿なんかも良さそうです。
静かな温泉に旅をされているゆうさんも別所温泉で宿泊されていました。つるやという旅館の宿泊記が掲載されています。
緑屋吉衛門という旅館でも土曜日の一人泊でプランが出てきました。源泉は花屋と同じ4号源泉とありますが、加水・加温なしとあります。貸切風呂があるのも良いですね。
こちらも土曜日の夜に一人泊で検索したらプランが出てきました。
案外一人旅OKの宿ありそうです。お湯も良いので、またのんびりと行きたいと思います。