400年の歴史を持つ銀山温泉は、川の両側に木造3階建ての宿が並ぶ、大正ロマン漂う温泉街が魅力で、日本人のみならず海外からのお客様にも人気の温泉街です。以前から行ってみたいと思っていて、2年前に一度宿の予約までしたのですが、直前に地震が発生し、山形新幹線がしばらく運休になってしまいやむなくキャンセル。今年やっと行くことができました。銀山温泉の宿はネットで探すとなかなか一人旅プランがなく、旦那さんと2人で泊まってきました。宿泊したのは、著名な建築家、隈研吾氏がリノベをされた藤屋という宿です。温泉街のほぼ中央に位置しています。
記事内の情報は宿泊した2023年1月時点のものです。
藤屋の概要
- 客室数は8室。大浴場はなく、5つの貸し切り湯で温泉を楽しむ。客室にお風呂がついているお部屋もある
- 建築家の隈研吾氏がリノベーションを手掛けていて、竹や木材を活用したデザインが素敵
- 食事は夕食・朝食ともに部屋食
- 2人で泊まって2食付き、1人30,000円くらい。公式サイトによると一人旅でも受け入れは可能なようだが、割高になる。
- 館内はWifiは問題なく使えて、客室にコンセントは2か所あり
- 事前予約が必要だが、大石田駅から無料送迎バスがある
- 支払いはクレジットカード可
公式サイト
10畳の和室に宿泊
自分のお部屋が分からなくなりそうな造り
チェックインをロビーで済ませて、お茶で一息ついた後、スタッフの方にお部屋に案内していただきます。案内していただかないと自分たちのお部屋がどこにあるのか全くわからない造りです。なぜならお部屋の番号が表示されていないのです。
お部屋番号だけでなく、どこに部屋の入り口があるのかもわかりません。目印はこの鍵穴です。
ドアを開けます。


公式サイトには3タイプのお部屋が紹介されています。私たちが宿泊したのは、おそらくCタイプと思います。プライベートバスがついたお部屋もありますが、私たちの泊まったお部屋にはバスはありません。客室は10畳プラス広縁です。部屋の隅に見えるモニターがテレビです。かわいいですね。
角度を変えてみるとこんな感じで、洗面台もワンルームになっているので、エアコンが効き、トイレに行ったり歯磨きする時も寒くないのが良いです。
広縁からは温泉街を見下ろせます。こちらの宿は全室温泉街に面しています。ただカーテンなど外からの視線を遮るものがないので、向こう側からもこちらのお部屋の中まで見えてしまいます。くれぐれも広縁でお着替えなどしないように。
広縁とは反対側の壁はこんなつくりで、じつは右端が扉になっていて中にクローゼットがあるのですが、説明されないとどこが扉なのかまったくわかりません。
こんな感じに開くのです。クローゼットの中には浴衣やタオル、ちゃんちゃんこが用意され、冷蔵庫やエアコンのスイッチもクローゼットの中にあります。湯籠は1つ用意がありました。夫婦なら湯籠1つで十分ですが、友達同士での宿泊の時でも1個で足りるのかな。
冷蔵庫の中には飲み物があります。ミネラルウォーター2本はサービスです。
宿の中には売店も自販機もないのです。フロントに冷たい水の用意はありますが、ポットからグラスに注ぐスタイルなので、お部屋で水分取りたい人は、外で1本お水かお茶を仕入れておく方が良いかもしれません。まぁ洗面台の蛇口のお水を使っても良いのですけど。
お部屋にはお茶のセットもあります。緑茶のみです。お湯は電気ケトルで沸かします。
洗面台周りです。ドライヤーはお風呂にはなく、お部屋のドライヤーを使います。またこちらの鏡は壁にはめ込まれているのではなく、天井から吊ってあるので、鏡をツンツンするとゆらゆら揺れます。館内どこの鏡も同様のつくりでした。
基礎化粧品のアメニティもありました。ティッシュはボックスではなく、こんな感じに銀色のリングで抑えた状態で用意されています。
トイレはもちろん洗浄付きタイプです。扉の鍵はフックタイプなんです。実は私は旅の前日あたりからめまいがあり、こういうタイプの鍵って、もし中で倒れて助けを呼びたくても、外から開けられないのでは? と少し心配になり、鍵はかけずに使用しました。鍵の写真を撮り忘れましたが、貸し切り湯の鍵も同様の鍵でした。下の写真の鍵は貸し切り湯の鍵です。


お部屋でのwifiは問題なく使用できます。コンセントもメインの客室内には2か所ありました。枕元にすぐ、という位置ではないですが、スマホやデジタルガジェットの充電は問題ありません。
エアコンは客室用と広縁用があり、リモコンはなくクローゼットの中にスイッチがあります。写真を撮っていませんが、加湿器の用意があります。
温泉はすべて貸し切り湯で楽しむ
こちらの宿には5つの貸し切り湯があり、大浴場はありません。客室数が8室だけなので、たいていどこかが空いています。
半露天風呂
5つの貸し切り湯のうち、1か所だけ半露天になっています。夜になるとメチャ寒いとスタッフの方から聞いたので、チェックイン後にまずは半露天風呂に行ってみました。他のお風呂は1階と地下にありますが、半露天風呂だけは3階にあります。
外にスリッパがなければ空いています。扉を開けて中に入ると脱衣所です。ファンヒーターが置いてありましたが、動いていなかったのでメチャ寒い脱衣所です。還暦過ぎの私達にはヒートショックが心配な室温でした。さっそくヒーターをオンにしました。


お風呂の半露天というのはこんな感じで、周囲は壁に囲われているように見えますが、無双窓のような感じで窓を開けることができます。外気の寒さがダイレクトに伝わってくるので、脱衣所以上に寒いです。冬の夜はちょっと厳しいかも。浴槽は木の浴槽でした。温泉の香も漂っています。
投入されているお湯の温度は体が冷えているのでちょっと熱く感じました。
たくさんかけ湯をして入りましたが、それでも熱い場合は、浴槽の外につまみがあり、回すと水が出ます。シャンプーボトルの左のつまみが水栓です。
窓からの景色はこんな感じで絶景風呂というわけではありません。
その他のお風呂
半露天以外のお風呂は1階と地下にあり、草履に履き替えて向かいます。このスリッパラックに草履がたくさん残っていれば空いている浴室があるということです。
1階には、ひばのお風呂、竹のお風呂、石のお風呂があり、1階の入り口から地下のお風呂にも下りて行けます。
どの浴室も脱衣所はそこそこ明るいのですが、浴室内は照明を落としてあるので、公式サイトをご覧いただくのがお風呂の感じがわかると思います。
こちらは地下のお風呂の脱衣所。床暖房が入っていました。服を脱いだら浴室に向かう階段を下りて行きます。


湯船は横に長い石のお風呂でした。
こちらはヒバのお風呂です。


こちらは石のお風呂です。ここも脱衣所は床暖房でした。脱衣所の床暖房はとても良いですね。我が家にもほしくなりました。


客室が8室しかないので、私たちが利用する時に、どこも空いていないということはありませんでした。夜中でも入れて、1回あたりの入浴時間に制限はないです。混雑と無縁で静かに存分にお湯を楽しめるのが良かったです。
泉質
温泉旅館で見かける温泉の成分表のようなものは見当たりなかったのですが、お部屋の案内の中に温泉について記載がありました。こちらによると、泉質は「含食塩硫化水素泉」となっていました。源泉の温度によっては、加水・加温することもあるようです。
お湯から上がるとお肌がしっとりツルツルした感じがしました。
夕食・朝食共にお部屋でいただくお食事
お食事は夕食・朝食ともに部屋食です。夕食は18時、朝食は8時の一択でした。
夕食
まずは飲み物を。山形なので日本酒はいろいろと種類がありましたが、我が家は全く飲まないので、ソフトドリンクからチョイスします。いろいろなフルーツがとれる山形なので、フルーツジュースやフルーツを使ったソーダやノンアルコールカクテルとかがあれば良かったのですが、ソフトドリンクのラインナップは割とフツーな感じでした。
お食事のお品書きはこちらです。メインは鴨鍋です。
食前酒のワインを飲んでまずは先付と前菜からいただきます。
つづいてお造りとお吸い物が運ばれてきました。


続いて焼き物の銀鱈です。
蒸し物の茶碗蒸し。
茶碗蒸しに後はメインの鴨鍋でしたが、すっかり写真撮るのを忘れました。お食事はお蕎麦です。お願いすると白いご飯もいただけます。最後にデザートが運ばれてきます。フルーツとケーキのデザートでした。


お食事が終わると、お片付けの後、お布団を敷きにきていただけます。その間は部屋にいる必要はないとのことでしたが、我が家はおなかいっぱいで少し休憩している間にお布団を敷いてもらえました。
朝食
朝食は朝8時から。7時45分くらいにはお布団を片付けに係の人がやってきました。朝食も品数豊富で、私が大好きな納豆に温泉卵もちゃんとありました。
朝食にも卓上コンロが運ばれてきて、温泉街入り口にあるお豆腐屋さんでその日の朝のつくりたてのお豆腐を湯豆腐でいただきます。
食後にコーヒーのサービスはありませんが、チェックアウトの際、駅までのバスをロビーで待つ間にコーヒーをいただきました。
館内
この宿を選んだのは、あの有名な建築家、隈研吾さんがリノベに関わっていたからです。隈研吾さんの建築は、木材をつかったデザインが素敵で、東京オリンピックの時に建てられた国立競技場も隈さんの設計です。
外観
こちらが建物を正面から見たところです。温泉街を流れる川に渡された橋を渡って向かいました。
日中は外の方が明るいので、室内丸見え感があまりないのですが、夕方から夜にかけては室内の方が明るいので、外からの視線に要注意です。
ロビー
玄関を入るとロビーです。宿泊客のゾーンとは竹のスクリーンで仕切られています。この竹のスクリーンは、「簀虫籠」と言うそうで、1本の竹を40本に細かく割いて作られています。金沢の棟梁親子が3か月かけて完成させたそうです。館内のあちこちにありました。
チェックインはロビーで行います。私のような還暦過ぎのおばちゃんには、宿帳書くにももう少し灯が欲しいと思いました。
チェックインの時にお饅頭とお茶やコーヒーをいただくことができます。
半露天風呂以外のお風呂はロビーの奥にありますが、夜行く時は私にはちょっと通路が暗く感じました。
ロビーにはステンドグラスで仕切られた空間があり、ここが喫煙所になっています。
その他の館内
ここにも竹のスクリーンがあります。
どこも間接照明が温かい空間を演出しています。
1階から階段を上がったところ。
1階に下りる階段。階段は全体的にゆるやかな傾斜です。古い旅館だとかなり急傾斜の階段がついていたりしますが、リノベしただけあって、安心して歩ける階段でした。
アクセス
温泉街の中には車は入れないので、歩いて8~10分くらいの駐車場に停めることになります。これはどの宿も同じようでした。公共交通機関の場合は、山形新幹線が止まる大石田駅が最寄り駅です。どの新幹線も必ず停車するわけではなく、チェックイン時間に適切なのは2本くらい。この新幹線に合わせて宿が送迎車を出しています。改札を出ると宿名を書いたボードを持つ係の方がいますので、自分の名前を告げて車に案内してもらいます。駅から温泉街の入り口の「しろがね橋」まで車で20~25分くらいで到着です。しろがね橋からは車両規制の区域なので、川沿いを100mほど歩いて宿まで向かいます。
チェックアウト後は10:30発の送迎車1本のみです。私達が乗った時は運転手さんは宿の人ではなく、タクシー会社の方のようでした。駅までの間、銀山温泉についてや銀山温泉がある尾花沢市についての観光案内をしてくれました。10人乗りくらいの車で、一番後ろだとちょっと聞き取りづらかったのが残念。せっかくの観光案内だったのでマイクとスピーカーがあると良いなと思いました。
まとめ
有形文化財の宿にはいくつも泊まりましたが、有名建築家の宿は初めてだったので、温泉だけでなく建物や内装なども楽しめました。竹の細かい細工の壁やスクリーンが間接照明による灯りでほんのりと照らされて、温かみのある空間ができていました。部屋番号の表示がなかったり、トイレやお風呂の鍵がフック式のものだったり、一つ一つにこだわりを感じますが、お客さんのとってそれが使いやすいか?となると、多少クエスチョンマークがつくかも。ロビーあたりは、竹のスクリーンの内側が灯に照らされて透けて見える感が素敵なのですが、私のような還暦過ぎのおばちゃんには、もうちょっとロビー側が明るい方が宿帳書くにもお風呂に行くにも助かります。とはいえ、なるほど有名建築家の宿とはこういうものなのね、というのを楽しめました。
銀山温泉の温泉街は川の両側に木造3階建ての宿がずらっと並ぶ景色が素晴らしく、藤屋もリノベの際に、その景観を壊さないデザインにいたことがうかがえます。温泉街のレトロな眺めを楽しむために、国内外からたくさんのお客さんが訪れています。稼げる温泉街だなーと思いました。お値段をやや強気に設定してもお客さんが来るように思いました。
銀山温泉の温泉街の様子や今回の旅の全体などはこちらで紹介しています。