静岡県土肥は伊豆半島の西側にあります。古くから金山があったり、温泉があったりと、かつては会社の忘年会などで利用されて賑わっていましたが、最近はそういう団体旅行が減り、鉄道もないことから、西伊豆は東伊豆に比べると過疎が進んでいる印象が静岡県民の私にはありました。
ところが、その土肥に古民家をリノベした新しいタイプの宿ができていたのです。今回宿泊した「LOQUAT西伊豆」は宿の名前の中にオーベルジュとは書いていないけれど、お食事もお部屋も温泉も素晴らしい極上宿でした。こんな素敵な宿が土肥にあったとはと感動し、是非また泊まろうと思えた宿でした。
LOQUAT西伊豆の概要
- 敷地内の部屋数は蔵をリノベした2部屋のみ。片方は平屋、もう一方はメゾネットタイプ
- 各部屋のテラスに源泉かけ流しの露天風呂がある
- 部屋ごとにWifiがあり速度も快適。コンセントもベッドサイドにあり
- チェックインは15時から、チェックアウトは11時
- 平日に2人で宿泊して2食付きで1人6万円くらい。一人でも泊まれる
公式サイト
チェックイン
宿の向かい側の駐車場に車を停めると、スタッフが出て来て荷物を持ってくださり、地主さんのお家をリノベした母屋にまずは案内されます。
こんな門を入って行きます。
こちらが母屋です。とても重厚感ある家紋入りの屋根が印象的です。
チェックイン手続き自体はお部屋で行いますが、ウェルカムスイーツを選ぶために母屋に寄るのです。なぜならウェルカムスイーツはこちらの宿自慢のシャーベットだから。10種類のシャーベットから1人3種類をチョイスしたらスタッフに案内されてお部屋へ。選んだスイーツは後程ウェルカムドリンクとともにお部屋に運ばれてきます。
宿泊するお部屋は蔵を改装したお部屋です。
二ノ蔵のお部屋
私達のお部屋は二ノ蔵というお部屋です。もう一部屋三ノ蔵というお部屋が奥にありますが、そちらはメゾネットタイプなのお部屋です。予約する時には両方空いていましたが、私は平屋のお部屋の方が好きなので二ノ蔵を選びました。夜中にトイレに行くにも安心です。
石の扉がいかにも蔵という感じですが、この扉は閉めません。木の引き戸を開けて中に入ります。引き戸は二重になっています。
玄関を入って左側にベッドスペースとリビングスペースがこんな感じにレイアウトされています。3人で泊まる時にはベッドがもう一台入るそうです。
洗面台やトイレなどはリビングスペースとは土間で隔てられた反対側にあります。リビングと洗面台の床には床暖房が入っていて、素足でも冷たくないのが大変嬉しいです。
洗面台はこんな感じ。
こだわりのシャンプーやトリートメントが用意されています。シャンプーはボディにも使えるもので、さっぱりタイプとしっとりタイプの2種類が用意されていました。他にも石鹸やオイルなどの用意もありました。
洗面台の左側にはシャワーブース、右側にはトイレがあります。
奥のテラスには源泉かけ流しの露天風呂があります。お部屋に温泉がついていると、いつでも好きなタイミングでパっと入れるのがとても良いです。露天風呂については別の章で紹介します。
テラスの奥には宿のお庭が広がります。
ビワの木が植えられていて、ビワの季節にはビワ狩りプランもあるのだとか。
お部屋の中をあちこち撮影していると、ウェルカムスイーツとドリンクが運ばれてきました。撮影を中断して、まずはいただきましょう。ドリンクはスパークリングですが、アルコールとノンアルコールがあります。シャーベットを選ぶ時に一緒にオーダーします。写真では分かりづらいですが、一つのカップに3つのフレーバーが入っています。
シャーベットは滞在中、フロントに電話すると運んで来てくれるそうです。湯上りに頼むのも良いかも。
お部屋の飲み物は種類が豊富です。まずはワインクーラーの中にはビールとみかんジュース。こちらはサービス。
冷蔵庫の中にもドリンクは豊富で、こちらも無料です。写真を撮り忘れましたが、ビン入りのミネラルウォーターが常温と冷やしたもので8本くらい用意がありました。
お茶やコーヒーの用意もあります。珈琲やお茶を飲むために、電気ケトルが用意されています。
ベッドの上には館内着とパジャマの用意があります。食事は館内着でもOKとのこと。どちらも上下セパレートタイプです。館内着は前がはだけないよう胸の所にボタンがついていて着やすかったです。
お部屋には小さいながらもテレビはあります。あとはレコードの用意があります。今時レコードの針をレコード盤に落としてジャズを聴くなんてことなくなりましたね。バチバチバチという雑音がアナログな感じがして良かったです。
お部屋で源泉かけ流しを楽しむ
今回は温泉に何度も入ってお部屋でまったりするのが目的でした。シャーベット食べて一息ついたので早速温泉を楽しみます。
シャワーブースとテラスの露天風呂とは離れているので、移動用にバスローブもありますが、バスタオルもあるのでバスタオル巻いて移動しました。
バスタオルは一人につき2枚用意がありましたが、食事の時とかに追加の要望があるかどうかを確認してくれます。
露天風呂のあるテラスは広く、ベッドもあるので、温泉につかって熱くなったら外で体を冷ましてまた温泉で温まる、ということを繰り返しできます。
反対側にもテーブルと椅子。こちらは脱いだ服やバスタオルを置いたりするにも便利。
給湯口からのお湯は41℃くらいに調整されているそうで、入った感じもそれくらいの温度だと思いました。温度調整はすぐ横のつまみで調整可能です。
テラスの屋根はパーゴラですが、露天風呂の真上は透明な板が貼ってあるので、雨でも大丈夫。日が暮れてくるとお庭に照明が灯り、これもまた美しい。
泉質
土肥は海沿いと言うことあり、塩化物泉かなーと思いましたが、表示によると「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉」とのこと。それでも成分の中にはナトリウムイオンも塩化物イオンもそこそこ含まれていて、よく温まります。湯上り後もポカポカ感がいつまでも続きました。
使用状況は、源泉が54.2℃と高いので加水しているそうです。あとは静岡県の温泉はおそらく条例での規制があるのか(←全くの私見)、たいていどこの温泉も塩素系消毒をしています。でも循環ろ過はしていないということ。お湯には温泉らしさがあり加水量もそれほど多くないように感じました。
古民家を改装した素敵なレストラン
お食事は夕食・朝食ともに地主さんの母屋を改装した素敵なレストランでいただきます。
夜は明かりがともって落ち着いた雰囲気。奥の窓の明るいお部屋はキッチンです。
夕食
こちらがお品書きです。素材のみが表示されていて、どのように料理されてサービスされるのかすごく楽しみです。
飲み物はメニューは出てこなくて、こちらの要望を聞き取って勧めて下さいます。私は乾杯用にノンアルコールのスパークリングをいただきました。
一品目は原木しいたけというメニュー。しいたけは伊豆の名産品の一つです。しいたけの下のソースが隠されていて、よく素材とマッチしていました。
つづいて「あさはた蓮根」です。あさはたは静岡県静岡市の地名(麻機と書く)です。市場には出回らない蓮根らしいです。サクッとあがっていて、歯ごたえも抜群でした。
シェフが福島のご出身ということで、次のお皿はシェフにゆかりのある会津の柿を使ったお料理でした。サラダの位置付けのようです。
続いてのお料理は「クレソン」と書かれていたお料理で、こちらはパスタのお料理でした。
続いてのお料理はメニューには「鮎」とだけ書かれています。伊豆で鮎の料理と言えば、丸ごとの塩焼きか甘露煮あたりが定番なので、どのように出てくるのか楽しみでした。運ばれてきたのは意外にもリゾット。子持ち鮎をほぐしたものが入っていて、鮎の骨から出たお出汁の感じと、卵のツブツブ感が口当たりもよく楽しめました。
次のお魚料理の前にドリンクを追加しました。発酵レモンを使ったドリンクです。
続いてお魚料理は「赤イカ」で、ソテーされていました。駿河湾の海の幸です。
お肉は富士宮市朝霧高原の岡村さんが育てた岡村牛です。乳牛と黒毛和牛を掛け合わせた牛だそうです。一気に表面だけ焼くのではなく、火に乗せたり下ろしたり3時間くらいかけて焼き上げているそうで、一見生っぽく見えますがちゃんと火が通っています。手がかかっている一品でした。
岡村牛についてはこちらに説明がありました。
食後のデザートはアマゾンカカオとかれています。こんな形で運ばれてきました。トロリとしていて美味しかったです。
最後にお茶とフィナンシェが出てディナーは終了です。たっぷり2時間かけて楽しみました。フィナンシェはお部屋に持って帰っていただくことも可能です。
夜の宿の雰囲気もステキです。
朝食
チェックアウトタイムは11時なので、朝9時からの朝食にしました。朝の散歩や朝風呂も楽しんでからの朝食です。こちらのレストランは到着時に出していただいたシャーベット以外にも美味しいパンを焼いてくれることでも有名なので、てっきりパンの朝食かと思ったら、和食の朝食でした。昨晩がイタリアンだったので、和食の朝食は嬉しいです。ですが、これって朝食のボリュームじゃないよね、というくらいお料理が並びました。
上の写真の左奥は一皿に2人分のお刺身が盛られています。周囲に盛り付けられているのは金目です。
こちらは食後のデザートです。三島のサツマイモを使ったスイーツです。
チェックアウト
チェックアウトは、私たちが宿泊したお部屋(二ノ蔵)の隣の一ノ蔵で手続きします。チェックアウトの時にも冷たいドリンクをいただきました。
系列の宿
LOQUAT西伊豆には2部屋のみですが、ここからもう少し離れた場所に「LOQUAT Villa SUGURO」という宿泊施設があります。こちらは古民家一棟貸切なので、すごーく広いです。
もう一つ、エネルギーを自給自足している宿泊施設の「WEAZER西伊豆」という施設も系列宿です。こちらもLOQUAT西伊豆から少し離れた場所ですが、ディナーの時にはEV車で送迎してくれるそうです。
まとめ
古民家を改装した宿は最近インバウンドのお客さんも含めて人気のようですが、1泊12万円の価格に見合うだけの宿なのか? と宿泊する前は心配もしていました。これだけの価格の宿となると、建物などのハード面だけでなく、人材やお料理というソフト面の満足度も必要です。過疎化が進む西伊豆でそれだけの人材がいるのか?というのが最大の疑問でした。
実際泊まってみると良い方向に裏切られ、素晴らしく良い宿でした。このレベルの宿が西伊豆にできていたとは大変驚きでした。今回一緒に泊まった友人は、国内外のステキな宿に何度も泊まった経験があり、その彼女も「また来たい宿、目的地になる宿」と称賛していました。こちらの宿のレベルの高さがわかります。私も是非もう一度泊まりに来たいと思います。
今までの土肥は、団体旅行客向けの昔ながらの温泉旅館が並ぶ、ひと昔前の温泉地というイメージでしたが、LOQUAT西伊豆のような宿ができるようになったのですね。調べてみると、近くにもう一軒古民家を改装した温泉付きの宿があることにも気づきました。土肥がこうした宿で盛り返しているとしたら、静岡県民としては嬉しい限りです。