日本三古泉の一つ、有馬温泉は豊臣秀吉が愛した温泉としても有名です。2023年5月の鉄道旅に出た際に宿泊しました。有馬温泉の宿は大型旅館が多いイメージですが、今回泊まったのは全9室という隠れ家的な宿です。鉄分を多く含んだ褐色の「金泉」をのんびり貸し切り湯で楽しめるのもこちらの宿の魅力です。食事も美味しいし、スタッフの皆さんがプロフェッショナルな感じがする宿でとても良い宿でした。アクセスは公共交通機関利用の場合は、新神戸から神戸電鉄で向かうのが一般的ですが、晴れている時は是非六甲越えルートが眺めが良くておススメです。アクセスルートも含めて宿泊記にまとめました。
ホテル花小宿の概要
- 部屋数は9部屋。歴史を感じる木造2階建てで、エレベータはない
- 内湯が2か所あり空いていればいつでも貸切可能。トロリとした金泉を楽しめる
- お部屋でPWありの無料Wifiが使用可能。私が泊まったお部屋はコンセントも豊富で充電は問題なし
- チェックイン15時、チェックアウトは翌日12時と言うロング滞在も可能
- 木曜日の1人で泊まって、2食付きで37,000円くらい
宿の公式サイト
お部屋
今回宿泊したのは2階にあるツインルームでした。1部屋ごと木の名前がついていて、私が泊まったのは「沙羅」というお部屋です。
縁側から見るとこんな感じです。
縁側と客室を仕切る金茶色のガラスが渋くて味があります。
お部屋にはベッド2台にソファーとテーブルがあり、広さは1人で使うには十分です。部屋にはトイレと洗面がついていて、ドライヤーもあります。ドライヤーは内湯の脱衣所にもありますが、温泉は貸切利用方式なので、長い時間占有してしまうのは他のお客さんに申し訳ないので、髪を乾かすのは部屋のドライヤーを使いました。
アメニティは歯ブラシのみです。必要なものがあればフロントへ、とのことでしたが、私はマイ歯ブラシ・マイヘアブラシ派なので特別お願いするものはありませんでした。
クローゼットにはバスタオルが2つ、体を洗う時に使うサイズのタオルは3本用意がありました。3本あるのは、洗面台で手を洗った後に使えるようにと言う配慮です。洗面所用のタオルがあるのは、とても良いサービスだと思います。
湯籠の用意もあります。こちらの宿の宿泊者は、チェックイン当日の夜8時までは、有馬温泉の歴史ある宿「御所坊」のお風呂も無料で利用可能です。湯籠にタオルなどを入れて行けるわけです。
ベッド横にはテレビもあります。パっと見たところ、電子レンジのように見えますが、ブラウン管テレビを模した液晶テレビです。レトロな室内にマッチするよう、このようなデザインにしているのだそうです。
冷蔵庫もお部屋にマッチする木目調。
お茶類は、ティーバッグの緑茶とコーヒーのカプセルが2つずつ巾着の中に用意されていました。コーヒーマシンは廊下に用意されていて、共同で使用します。たくさんコーヒー飲みたい人は、追加で購入できるようになっていました。
建物が古い割に、客室内にコンセントは豊富にあり、ベッドサイドにもあり助かります。WifiもPWありのWifiを快適に使用することができました。
お部屋の鍵はなんとテンキー式。鍵を持ち歩く必要がないのが便利です。あらかじめ宿泊者の電話番号下4桁が暗証番号としてセットしてありました。私みたいに一人旅の人は自分の電話番号だから覚えやすいですが、2人以上だとちょっと覚えにくいかもしれません。
貸し切りで金泉を楽しむ
こちらの宿の浴室は2か所あり、どちらも貸し切り利用です。有馬温泉らしい茶褐色の金泉を貸し切りで楽しめるのがすごく良かったです。浴室は2つとも1階にあり、電気が消えていて扉が開いていれば、空いていますよ、というサイン。2階のお部屋だった私はいちいち1階まで見に行かなくてはならないのか?というと、そんなことはありません。フクロウが柱にとまっていて、フクロウの目が2つとも点灯している時は2つも浴室が使用中、1つ消えていれば片方空いていますよ、というサインです。部屋のドアをあけるだけで確認できるのでとても便利でした。
2か所ある浴室は「楓呂(かえでろ」と「蔦葉子(つたばす)」という名前がついています。
入口を入ったら脱衣所の電気をつけて、扉に鍵を差し込みます。なかなか古典的な方式です。
脱衣所には脱衣籠が4つ並んでいました。
浴室の扉を開けると、浴室内には金泉が満たされた湯船と、沸かし湯の湯船があります。
カランとシャワーは2つありました。体を軽くあらって、金泉に入ります。見事なにごり湯です。源泉の温度が高いので、メチャ熱々のお湯かと思っていたら、意外にもゆっくりつかっていられる温度に調整されていて素晴らしいと思いました。
もう一つの浴室「蔦葉子」も金泉と沸かし湯の組み合わせですが、2023年5月時点で沸かし湯の浴槽は修理中で、お湯ははってありませんでした。「蔦葉子」は脱衣所から浴槽までがスロープになっているのが特徴です。
花小宿のお風呂はチェックインの後は翌朝11時まで利用できます。
泉質
有馬温泉らしいこの金泉の源泉は、宿の隣にある「御所泉源」とちょっと離れた場所にある「妬泉源」の混合湯です。脱衣所には妬泉源の分析表が掲示されていました。源泉の温度は100.5度と記されています。すごい高温。
泉質は「含鉄-ナトリウム-塩化物強塩温泉」と表示されていて、なめるとすごくショッパイです。溶存物質の量も37.6g/kgと多く、高張性の温泉です。
温泉の使用状況は掲示が見当たらず、完全なかけ流しかどうかはわかりません。浴槽に入っているパイプの先からお湯が出ているのは触って確認できましたが、ザバザバと浴槽の縁からあふれていく、という感じではなかったので、一部循環なのかも? でも消毒の臭いとかは一切感じず、トロリとしたなめらかなお湯で、太閤殿下が有馬温泉を愛したのもわかる気がしました。
源泉
ホテル花小宿のお湯の源泉も見てきました。こちらは「御所泉源」で、ホントに宿の裏手にあります。
妬(うわなり)泉源は宿から少し離れた場所、と言っても歩いて3分ほどの場所にあります。美人が通ると嫉妬してゴーゴー音を立てて温泉が噴き出るという逸話から妬泉源と名付けられたのだとか。妬泉源周辺はオシャレなカフェもありましたが、朝の散歩の時間帯だったので、まだ開店前でした。
金泉について
有馬温泉の金泉も銀泉もそういう名前の源泉があるわけではありません。花小宿のお湯のように茶褐色の鉄分を含む強塩泉のことを金泉と呼びます。他の温泉旅館では金泉が出る自家源泉を所有している宿もあるようです。
お食事
夕食・朝食ともに1階にある食事処でいただきます。
夕食
スタートは18時または18時半でした。チェックインの時に時間を決めます。食事処はカウンター席とテーブル席があり、一人旅の私はカウンター席に案内されました。まずはお飲み物から。ご当地サイダーがあったので、迷わず注文。グラスの後ろの大きな物体は、しめじなんだそうです。大きくてびっくりしました。
まずは先付。大根にキノコのソースがかかっています。私はキノコ大好きなので、とても美味しくいただきました。
続いて前菜です。一番右のチーズのようなものは「蘇」という保存食の一種とのこと。牛乳煮つめて作るのだそうで、プレーンの蘇と栗を加えた2種類の味を楽しみました。ズッキーニと小エビは揚げてあり、手前の岩塩でいただきました。
「蘇」は初めて食べましたが、味も食感も気に入ったので、お土産に買って帰りました。お酒を飲む方にはおつまみにも良さそうです。お部屋に注文用紙が用意されていて、ものすごくたくさんの種類があるのですが、自分の好みで何種類かをチョイスしました。
つづいて筍のしんじょうのお椀です。
こちらはお造りです。シマアジ、ヒラメ、一番手前はヒラメのえんがわです。
目の前では美味しそうな食材が炭火で焼かれています。
焼き物が運ばれてきました。キンメの西京焼きです。
一緒にカウンターにあった大きなシメジを焼いたものも添えられました。
つづいてカニクリームコロッケの餡掛けです。上に乗っている黒豆もとーっても美味しかったです。
お肉料理は兵庫の豚肉を焼いたものが運ばれてきました。外側はパリッとしているのに、中がとてもジューシーで絶品でした。
最後はお食事ですが、白いご飯にみそ汁と香の物か、カレーかをチョイスします。ここまでのお料理の流れだとご飯とみそ汁が一般的ですが、カレーを用意しているということは、カレーに自信があるのだと思い、カレーを選択しました。白いご飯は翌朝食べればよいしね。カレーも美味しかったー。
この後デザートがでて夕食は終了です。
どのお料理も丁寧に作られている感じがして、とても美味しかったです。厨房の板前さんが若い方でしたが、質問には一つ一つ丁寧に答えて下さり、盛り付けも美しいし、とても感動しました。
朝食
朝食は8時半から9時の好きな時間に食事処に行っていただくスタイルです。スタートが8時半なので、早朝出発したい人は食事なしのプランの方が良いかも。早起きが苦手な私には、温泉に入ってから朝食を食べるのに時間の余裕があって嬉しい設定でした。
朝食はこんな感じでカウンターの上に用意がされています。席につくと、ご飯とお味噌汁が出てきます。右上は黒ゴマを使ったお豆腐、真ん中は温泉卵をアレンジしたお料理です。香の物の梅干しや生姜も美味しかったです。
上記のお料理に追加して、目の前の囲炉裏であぶったカレイの一夜干しも熱々で運ばれてきます。
建物や館内の様子
ホテル花小宿の建物は木造2階建て。
玄関先に活けられたかわいいお花がお客さんをお出迎えしている感じがします。
玄関を入って左手にチェックインやチェックアウトをするフロントがあります。
フロント側から見た玄関です。左側の暖簾の奥が食事処です。
玄関で靴を脱ぎ、あとはスリッパ無しで館内を歩きます。お部屋に浴衣と一緒に足袋があったので、普段あまり足袋を使わない私ですが、今回はずっと利用していました。古い建物なので2階へは階段のみ。階段は玄関側と内湯側の2か所にあります。
客室は1階と2階にあります。こちらは2階の廊下。一番奥のソファーがある場所にコーヒーマシンがあります。
コーヒーマシンは1階にもあり、1階のコーヒーマシン設置場所には追加のコーヒーカプセルの販売機や冷水器も用意されています。自販機もあるので、コーヒー以外の飲み物も館内で購入できます。
アクセス
鉄道でのアクセスが良い
有馬温泉は鉄道でのアクセスが便利です。新幹線が止まる新神戸駅からは鉄道を乗り継いで30分くらいで有馬温泉駅に来られます。
どうでもよいことですが、この有馬温泉にやってくる神戸電鉄に乗ったら、ガタンガタンという電車の音が、「変なおじさん、変なおじさん」というリズムに聞こえるのは私だけでしょうか。
有馬温泉駅からは上り坂になりますが、歩いて7分と、公共交通機関でのアクセスが良いもありがたいです。
新神戸から六甲山越えで行く方法もおススメ
乗り物好きな私は行きは新神戸から六甲山を越えて有馬温泉に向かいました。ケーブルカーとロープウェイに乗車できます。
新神戸駅は六甲山の南側にあり、六甲山の南側から六甲山に登るケーブルカーは六甲ケーブルと摩耶ケーブルの2つあります。私は六甲ケーブルを利用しました。新神戸駅からは、鉄道と路線バスを乗り継ぎましたが、本数が多いので、そんなに不便ではありませんでした。
六甲ケーブル下駅の窓口で切符を買いますが、いくつか種類があります。私は有馬温泉まで行くので、ケーブルカーの片道と六甲山の上を走るバス、そして有馬温泉に下りるロープウェイのセット券1,780円を購入しました。
おトクな乗車券がいろいろあるので、詳しくはこちらのサイトを確認してください。
ケーブルカーはかなりの急こう配を登っていきます。しばらくすると、眼下には神戸の街並みと瀬戸内海が見えてきます。
途中のすれ違い。レトロなデザインの車両でかわいいです。
山上駅には展望台があり、とても良い眺めです。大阪のビル群なども見えます。
展望台横にはカフェもあります。このまま有馬温泉に向かってもまだチェックイン時間に早い時間帯だったのと、美味しそうなメニューのボードに誘われて、おやつを食べていくことにしました。
こちらのカフェにはテラス席があり、先ほどの景色を眺めながらお料理をいただくこともできたのですが、この日は少々暑くて、私は室内でいただきました。
一息ついたら、バスでロープウェイ乗り場に移動します。バスは行き先が複数あるので行き先を確認して乗りましょう。摩耶山方面のバスに乗ってしまうと、有馬温泉に下りるロープウェイ乗り場には行けませんので要注意です。
ロープウェイ乗り場までは歩いても1時間くらいとGoogleマップが示していたので、コンディションが良ければ歩いてみようかとも思っていたのですが、ホント蒸し暑い日だったので、迷わずバスに乗りました。
バスで10分くらいでしょうか、ロープウェイ乗り場に到着です。
前と後ろが足元までガラスのロープウェイで景色が楽しめます。特に有馬温泉に向かっての急こう配は高度感もあり、かなりスリリング。
ロープウェイで空中散歩を楽しんだ後は、道路を歩いて宿に向かいます。ロープウェイを下りたところから、右方向にも左方向にも行けるのですが、私は右方向に進み、炭酸泉源公園を経由して宿に向かいました。
花小宿に向かっては基本下り基調なので、あまり苦労せずに宿まで到着できました。こちらは炭酸泉源公園です。このブクブクしているのは地下から湧いているのか、モーターの力でブロアーが回っているのか?水温は冷たくて手を付けると、気持ちスベスベする感じがしましたが、気のせいかな。
というわけで、六甲山のケーブルカーやロープウェイを活用して有馬温泉に入るルートは、乗り物も景色も楽しめて、天気の良い日にはおススメのアクセスルートです。
有馬温泉街
狭い通りにカフェやお土産物屋さんが並んでいて、古くからの温泉街の雰囲気があります。宿に荷物を置いて、温泉街巡りも楽しそう。
太閤殿下ゆかりの温泉地ということで、奥方のねねの像もありました。
有馬温泉の宿を調べてみると、花小宿のように金泉だけを楽しめる宿、逆に銀泉だけを楽しめる宿というように、金泉か銀泉のいずれかしかない宿もあります。どうせなら両方楽しみたいという方には外湯を利用する手もあります。
こちらは金泉が楽しめる金の湯。
こちらは銀泉が楽しめる銀の湯です。
金の湯、銀の湯ともに営業時間や料金などはこちらのサイトをご覧ください。
まとめ
昔々、私が小学生の頃に一度有馬温泉に泊まったことがありますが、どんな温泉だったのか記憶にはありません。なので今回が初めての有馬温泉と言っても良いと思います。温泉番付で西の上位に位置する有馬温泉て、どんな温泉なの?と思っていましたが、トロリとした金泉は、なるほど人気があるのも頷ける素晴らしいお湯でした。1泊だけではもったいない感じもして、次回来るなら、有馬温泉に滞在しながら観光などを楽しめると良いなと思いました。
大型旅館が多い印象の有馬温泉の中にあって、ホテル花小宿は9室というコンパクトな宿。温泉も食事も素晴らしかったけれど、宿のスタッフも対応もプロフェッショナルで、是非また泊まりたくなる極上の大人の宿でした。
気を付ける点としては、客室の壁は薄いので隣の部屋の会話が耳に入ってきます。客室内にもそのような注意書きがありました。大声での会話や大きな音でテレビを見るのは避けたいところです。また朝食は8時半からなので、早起きして六甲山に登るというのは不向きかも。逆に12時までお部屋でくつろげるので、朝食後もまた温泉に入りたい! なんていう方にはとても良い宿と思いました。
今回の旅のルート
全体では3泊4日の旅でして、1日目に有馬温泉に宿泊しました。2日目は姫路に寄り、その後、天橋立で1泊、3泊目は舞鶴に泊まっています。舞鶴からは小浜線に乗って敦賀から特急しらさぎで米原に戻る鉄道旅をしました。
なんでこんなルートにしたかと言うと、乗車券はなるべく長い距離を買う方がおトクなので、一筆書きルートにしたかったのと、姫路城、天橋立、舞鶴港の観光船に乗ったり、まだ乗車したことのない鉄道区間に乗るためにこんなルートにしたのです。
3日目は天橋立を駆け足で観光した後、京都丹後鉄道のくろまつ号でランチコースを楽しみました。
今回の旅は有馬温泉でケーブルカーとロープウェイ、天橋立でケーブルカーやモノレール、リフトに乗ることができ、乗り物好きには大変充実した3泊4日の旅となりました。