2021年6月、ようやく尾瀬を訪れることができました。尾瀬への入り口はいくつかありますが、今回は福島県側の沼山峠から入るルートを選択しました。ただ沼山峠まで静岡からはかなり遠くて、日帰りは無理。1泊2日もちょっと厳しいなぁと思い、今回は2泊3日でプランニング。沼山峠から最も近い温泉街である桧枝岐村の「旅館ひのえまた」に2連泊したのですが、地元の食材を使ったお料理と宿のご主人・女将さんのお心遣いが素晴らしい宿でした。尾瀬への前後泊におススメします。
お部屋
旅館「ひのえまた」の建物は鉄骨5階建てで、桧枝岐村の中では村役場の次に大きな建物かもしれません。この建物の3階から5階が客室で全部で24室あります。
お部屋は401とか502というように数字の番号がつけられていますが、あわせて花や木の名前、山の名前が付けられていて、私が泊まったお部屋は507号室、平ヶ岳というお部屋でした。扉の横には部屋の名前を示す山の写真が掲げられていました。
507号室は縦長のお部屋で、7.5畳ほどの広さです。一人ならお布団敷いてもテーブルが使える十分な広さです。縁側にテーブルとイスもありました。
客間の手前にトイレと洗面台がレイアウトされています。室内にトイレと洗面があるのは本当に助かります。水栓部分までピカピカに磨き上げられていて、お掃除が行き届いているなと実感しました。ドライヤーはフロントでの貸し出し方式ですが、大浴場の脱衣所にもあります。
冷蔵庫の中には尾瀬の水がサービスで入っていました。2連泊したので、2日目にも1本いただきました。ポットは沸かす機能がついた電気ポットなので、いつでも熱いお湯が手に入ります。
お部屋ではWifiはとても快適に使用できます。コンセントの数も位置も十分で、ワーケーションにも良いかもしれないです。
窓からは檜枝岐村の景色が見えます。なぜかみんな屋根が赤い。村全体の統一感を出すために、赤い塗料で屋根を塗る時には補助金を出したようです。
お食事
いつもの私のブログだと、お部屋紹介の次はお風呂ですが、旅館ひのえまたは何と言っても地元の食材を活かした、心のこもったお食事が素晴らしかったので、まずはお食事を紹介します。2連泊でしたが、夕食・朝食ともにお蕎麦と温泉卵以外は異なるメニューで感動しました。
夕食
夕食は部屋食です。こちらは初日のお品書き。一つ一つのお料理が詳しく説明されていて、読み物としても楽しかったです。品数が豊富で、すべてを順番に食べつくしていると、後半のお蕎麦のあたりでおなかが苦しくなります。宿の食事は山人(やもーど)料理が基本。檜枝岐の山で働く人達が家から食材を持って山に入り、山の食材を使って作った料理のことを山人料理というのだそうです。
最初に運ばれてくるお膳は初日も2日目も形式はほぼ同じ。前菜にお鍋、わっぱで提供されるお料理です。こちらは初日のお膳。
こちらは2日目のお膳で、イワナのお刺身が出てきました。手前の緑の山菜はアケビの新芽を巣ごもりにしたお料理で、とても美味しかったです。
右上の丸い器の中は、檜枝岐名産のそば料理が入っていました。初日は「はっとう」、2日目は「だご」という、そば粉を使った吉備団子でした。
鍋は初日は鴨肉が入っていて、2日目は熊肉でした。熊肉のお鍋は初めてかも。
焼き物は初日はイワナの塩焼き、2日目は鮎の塩焼きでした。部屋食なので厨房からちょっと距離があるはずですが、熱々で提供されました。もちろん頭からバリバリいけました。
焼き物の後は、初日も2日目も檜枝岐名物の裁ち蕎麦がでてきます。布を裁つように蕎麦を切ることから裁ち蕎麦というそうです。つなぎ無しのそば粉100%のお蕎麦です。
お蕎麦を食べ終わると、もうお腹いっぱいですがお料理は続きます。初日は田楽が出てきて、珍しい食材として、サンショウウオが出てきました。尾瀬のガイドさんに「サンショウウオが出るよ」と聞いていたので、実はオオサンショウウオが頭の中にあったのですが、良かった、これくらいのサイズなら食べられそうです。
2日目はお酒のおつまみになりそうな3点盛りで、揚げ蕎麦・くうというハチの巣・メダカの佃煮という、初めて食べるお料理ばかりです。
この後やっとご飯が出てきました。すでにここまででお腹はいっぱいですが、初日は舞茸、2日目は檜枝岐ではししだけと呼ばれる香茸の炊き込みご飯で、ふっくらと炊けていてついつい食べてしまい、食後はしばらく動けませんでした。
食事の際の飲み物は、ノンアルコールはごくごく普通のラインナップだったので、特に注文しなかったのですが、そば茶が出てきました。香りが良くて美味しかったです。檜枝岐の名産品を活かした献立にぴったりのお茶です。
食後には七福茶を持ってきてくれました。なんだか体に良さそうです。
朝食
朝食は朝6時から対応していただけます。1階の広間でいただきますが、完全個室でした。テーブルの中央にコンロがあり、鍋の中はみそ汁です。地元で取れるキノコたっぷりの味噌汁でした。卵は温泉卵です。
私が嬉しかったのは、納豆に薬味のネギがついてきたこと。パックで納豆が提供される宿はたくさんあるのですが、薬味のネギがないことが多く、ちょっとで良いのでネギがあるともっと美味しいのにな、と毎度思っていたので、このお心遣いはとても嬉しかったです。
朝食も連泊しても温泉卵以外はすべて献立が異なりました。
温泉
尾瀬を歩いた後の疲れた足を癒すには温泉が一番。こちらの温泉は男女別大浴場があり、それぞれに内湯からそのまま出られる露天風呂がついています。暖簾は夕食時に入れ替わるので、両方の浴室を使えますが、それほど趣が異なる浴室ではありません。
内湯の奥に露天風呂。
露天風呂は屋根がついているので雨でも問題なく入れます。燧ケ岳の湯の露天風呂の周囲は畳でした。
いつ行ってもお掃除が行き届いていて気持ちよく入れます。鍵付きロッカーもあります。洗面台にはドライヤーもありました。
泉質はアルカリ性単純温泉で、いわば特徴がないのが特長ともいえる泉質です。残念ながら循環・消毒併用ですが、消毒臭が気になるようなことはなく、湯温も熱すぎずぬるすぎずで、疲れた体をゆっくりと休めることができました。
宿の周辺施設情報
日帰り温泉「燧の湯」
宿の温泉はアルカリ性単純温泉ですが、燧の湯は硫黄泉です。異なる泉質を楽しむことができます。
2日目に尾瀬沼に行ったとき、午後から悪天候の予報だったので、午前中に宿に戻ってきたこともあり、時間に余裕があったので昼食を食べがてら、出かけてみました。が・・・12時半から13時半までは清掃タイムで入浴できないとの掲示。なのでもう一回出直しました。
こちらは脱衣所。清潔です。奥の窓越しの緑が美しいです。結構な人数が入れるようですが、平日の昼間ということもあり、貸し切り状態でした。貴重品用ロッカーは脱衣所の手前にありました。
内湯と露天風呂があり、こちらは内湯。結構湯船は広いです。清掃が済んだばかりということもあり、洗い場もきちんと整っていて気持ち良いです。
内湯の奥の出入り口からそのまま露天風呂に行けます。この日は雨でしたが露天風呂は屋根付きなので雨を気にすることなく楽しめます。硫黄泉というだけあって、ほのかに硫黄の香が漂います。
食事処
2日の尾瀬は午前中で引き揚げてきたので、宿の近くでお昼を食べました。宿から徒歩2~3分のところに何軒かお蕎麦屋さんがありました。今回はこちらの「かどや」に入りました。
お蕎麦が名物なのでお蕎麦を注文しました。でも後から考えると、宿での夕食に昨夜もこの日の夜も裁ち蕎麦が出たので、お蕎麦以外を注文しても良かったのかも。ちなみに同じ時間帯に入店していた人たちは、なぜかラーメンが多かったです。どうやら味噌ラーメンがかなりいけるようです。
歌舞伎舞台
檜枝岐村には江戸時代から継承されている歌舞伎芸能があり、その舞台が神社の境内にあります。
歌舞伎の舞台は国の重要有形民俗文化財に指定されています。観客は露天の石段に座って楽しむそうです。役者は村民の皆さんで、子役までそろっているのだそうです。
宿から徒歩1~2分の近さなので、是非見学してみましょう。
まとめ
宿のご主人と女将さんの気配りと心遣いが、ハード面もサービス面にも行き届いていることをものすごーく実感できる宿でした。こういう宿に泊まれると、本当に来て良かったと思います。どんなところで感じたかというと、新聞のテレビ欄のコピーが部屋にさりげなく置いてあったり、帰りのバスの時間を聞くと、さっと時刻表のコピーを手渡してくれたり。連泊だったのでポットのお湯が足りなくなる可能性がありましたが、こちらから言わずとも、女将さんから「ポットのお湯は足りていますか?」という声掛けがあったり、食事の都度急須を新しく交換して下さるなど、どれも小さなことですが、小さなこと全てが完璧という宿にはなかなか出会わないものなんです。こうした心遣いがあるかないかで、宿で快適に過ごせる度合いが格段に上がります。
2連泊のまん中の日は、本当は終日尾瀬を歩く予定でしたが、荒天により午前中で尾瀬散策を切り上げて宿に戻りました。宿からすれば休憩時間中なのですが、ご主人がお昼を食べられる所や、日帰り温泉の特徴、当日檜枝岐村で実施中のキャンペーンについてもいろいろと教えて下さり、おかげで抽選でお土産ゲットできました。
尾瀬に行く時にはまた泊まろうと思います。今回は初めての尾瀬だったのでガイドさんをお願いしました。ガイドさんと一緒に歩くと、1人では気づけない自然に気づけます。
宿の公式サイトはこちらです。