「ごらんあれが龍飛岬、北のはずれと・・・」は石川さゆりが歌う「津軽海峡冬景色」の2番の歌詞です。この歌詞に登場する「龍飛岬」は青森県津軽半島の先端、いわば本州の北の果てに位置します。海に突き出した岬は絶景を楽しめるので、私の旅の目的地になりやすい場所です。龍飛岬もその一つで、念願かなって訪問することができました。日帰りだと滞在時間が限られるので、今回は宿泊で楽しみました。おかげで素晴らしい夕焼けを一人静かに楽しむことができました。(以下情報は2020年10月時点)
龍飛岬は漢字でどう書く?
このエントリを書くときに、漢字表記を迷いました。「たっぴ」を龍飛と書くのか、竜飛と書くのか。また埼、崎、岬なのか。ネットで検索すると以下の記事が見つかりました。海図だと「埼」を使うことが多いようです。
今回は道路の案内板にあった「龍飛岬」を使用しています。
本州最北端ではないのに、最北端より有名な龍飛岬
龍飛岬は本州の北のはずれで、津軽半島の最北端ですが、本州最北端ではありません。本州最北端は青森県から突き出した右側の半島「下北半島」の先端にある大間崎です。龍飛岬は本州最北端ではないけれど、なぜか大間崎より有名なように感じるのは私だけでしょうか。
龍飛岬が有名なのは、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」で歌われたことも要因でしょうし、ここには北海道と本州を結ぶ青函トンネルが走っていることも有名な理由の一つかもしれません。龍飛岬の近くには、青函トンネルに関する施設や慰霊碑などがあります。トンネル関連はまた別のエントリにまとめたいと思います。
龍飛岬の位置
龍飛岬は地図で示した通り、青森県の左側の半島「津軽半島」の先端にあります。周囲にさえぎるものがなく、いつも風が強いことでも有名な場所。冬は雪が降りますが、あまりの強風でろくに積もらないと地元の人が言っていました。こういう場所は雪の季節に行くのも良いのでしょうけれど、私のような素人が吹雪の中を歩くのは危険なので、雪が降る前に行ってきました。
龍飛岬の見どころ
龍飛埼灯台
岬にはたいてい灯台があります。龍飛岬にも「龍飛埼灯台」が丘の上にあります。
車でアクセスした場合は、丘の上に駐車場があるので、車で登ってしまうのが楽ちんでしょう。町営バスで来た場合は階段で上がります。距離はそれほどありません。途中階段が二またに分かれていて、右のコンクリート打ちっぱなしの階段を上がると、やや傾斜がきついですが、灯台のすぐ近くに出ます。整備された方の階段を上ると、丘の上の駐車場に出て、そこから灯台に向かいます。
こちらが灯台。あんまり背が高くなくて、ちょっとずんぐりむっくりな印象です。
看板説明によると、高さは地上からは13.72m。灯台の高さとしては低く感じますが、丘の上にあるので、海上からだと119mもあるんですね。
龍飛岬の絶景ポイント
灯台はたいていが岬の先端に立っているイメージですが、龍飛埼灯台は先端よりちょっと後方にあります。先端にあるのは防衛省のレーダーです。その先には北海道が見えますが、「こんなに近いの?」と思う距離感でした。
この辺りから足元を覗くと断崖絶壁です。断崖には日本海の荒波が打ち寄せていると書きたかったのですが、この日は風も波もそれほど強くはなく、観光日和でした。
青函トンネル工事を描いた映画「海峡」の冒頭で、吉永小百合扮する多恵が海に身を投げようと立っていたのはこの断崖の上だったんですね。
絶壁の反対側を見ると、こちらは陸奥湾。奥には下北半島が見えます。
後方を振り返ると、風が強い地域ならではの風力発電装置や、青函トンネル本州方基地龍飛の看板も見えます。斜面の段々になっている所は、青函トンネル工事中に宿舎が建っていた場所なのかも。
夕焼けが素晴らしい
昼間の景色も良いですが、日本海に沈む夕日もステキです。
だんだんと日没時間が迫ってくると、空はますます赤くなり・・・
本当に美しい夕日を拝めました。
ただ、公共交通機関で龍飛岬に来た場合、この日没を眺めるのは、日帰りだと厳しいです。今回は龍飛岬にあるホテルに1泊したのでこの夕日を見ることができました。ゆえに、ほかに岬で夕日を眺めている人はおらず、常に流れている石川さゆりの歌声もこの時間帯はなく、とても静かな空間で日没を楽しめました。宿泊したホテルの情報はこちらです。
龍見橋と碑の丘
龍飛埼灯台近くの駐車場から、灯台とは反対方向に歩くと、今は休業中のレストハウスがあり、その先に文学碑がある公園があります。その公園に向かうための橋が龍見橋。下から見るとこんな風にちょっと高い場所にかかる橋です。
こちらがその橋です。下から見るとものすごく高いところにあるように見えましたが、橋の下には駐車場につながる道路があり、道路からの高さはそれほど高くないので、スリリングな橋ではありません。
龍見橋というだけあって、橋の欄干には龍がいました。手前側に頭がついていますが、渡った先にも頭があって、これは4頭の龍なのでしょうか。
橋を渡った先の公園「碑の丘」にはいろいろな文人の碑が建っています。
また木の標柱が何本かたっていて、どれも軍隊の大砲が設置されていたことを示しているようです。岬の先端に防衛省のレーダーがあるくらいですから、昔から軍事上の重要拠点だったのでしょう。
この公園からは龍飛岬の先端からは見えなかった龍飛岬の日本海に面した景色も見えます。人が住んでいる様子がなく、荒涼とした景色で最果て感があります。
上の写真の下の方に柵が見えます。ここ、実は下におりる遊歩道がありました。
看板も手すりもありますが、肝心の遊歩道は整備されておらず、草ぼうぼう。今は歩ける状態ではありません。周囲に誰もいなくて、私が足を滑られて落ちても当分発見されそうになかったので、ここは下りるのをやめました。
遊歩道から足元方向を見るとバンガローが数軒見えます。ここはシーサイドパークという施設です。
龍飛崎遊歩道(通行止めでした)
公園からの遊歩道の下りはとても歩ける状態ではありませんでしたが、灯台に近い駐車場には遊歩道の看板が出ていましたが、駐車場から海岸に下りる階段は通行止めの表示です。
入り口には「強風時には利用しないでください」の表示も。
なるほど、風が強いと吹っ飛ばされそうな感じはします。
通行止めギリギリのところまで階段を下りてみたところ、眼下に海岸線が見えました。
先ほどの案内図によると、海岸沿いには1.3キロの遊歩道があるようです。シーサイドパークの駐車場からだと歩けるのかもしれませんが、誰もいない場所で波にさらわれても困るので、今回は海沿いの散歩は断念。映画「海峡」の中では、三浦友和扮する青年が、飲み屋の娘を追いかけるシーンで、波が打ち寄せる遊歩道と思われる道を行くシーンがありました。
津軽海峡冬景色の歌謡碑
龍飛岬の人気の観光スポットと言えば、こちらの歌謡碑だと思います。訪れる観光客のほぼすべての人が、歌謡碑の前の赤いボタンを押しているのではないでしょうか。このボタンを押すと石川さゆりの「津軽海峡冬景色」の2番が大音量で流れます。
かなり離れた距離からでも聞こえます。龍飛岬に観光客の姿がある間は、ほとんどずっと鳴り続けているし、中には一緒になって気持ちよく歌っている人もいました。そんなわけで、帰宅後も私の頭の中にはこの曲がしばらくグルグルとかかっていました。
階段国道
龍飛岬には国道339号線という道路が来ています。が地図で見ると、「津軽海峡冬景色 歌謡碑」のあたりでブツッと切れています。陸奥湾沿いにも国道339号線の道路は来ているのですが、龍飛漁港のところでブツッと切れています。地図の中には「階段国道339号線」の表示があるのですが、この部分だけ階段なんです。
車が通れない国道として有名な場所で、龍飛岬の名物の一つです。
せっかくなので、下まで降りてみました。標高差は約70mで、階段の段数は360段くらいです。段数はそれほど多くないし手すりもついていて整備されていますが、勾配は結構きついです。
つづら折りで降りていきます。
途中、民家の前も通ります。
下りは良いですが、この急階段を上って帰るのは、なかなか体力を使います。また下からの上り口は看板がなくてわかりづらいのですが、トイレの看板のところを入り、最初の角を右に向かうと、下の右の写真のルートに出ます。あとは道なりに上ります。結構きつくて、へとへとになりました。
どうしても上りたくないのなら、階段国道を下りたところに龍飛漁港のバス停があります。バスの時間に合わせて階段国道を下り、バスで龍飛岬に戻る、あるいは三厩に戻る、という手があります。
ただバスは本数が少ないので、十分な計画が必要です。バスの時刻は最後のアクセスの章に載せました。
龍飛館
階段国道を下りたので、すぐには折り返さず、龍飛館に行ってみました。龍飛館はもとは奥谷旅館という旅館でした。旅館の持ち主らの配慮で外ヶ浜町に無償譲渡され、町が龍飛岬観光案内所として開設した施設です。
旅館時代には、観光客だけでなく、太宰治や棟方志功などの作家や画家が逗留していて、館内にはこうした著名人の宿帳や、滞在したお部屋の展示などもされています。
階段国道を下りたところから龍飛館までは400m。
途中の郵便局には龍がいました。さすが龍飛岬。
龍飛岬へのアクセス
2020年10月に龍飛岬を訪れた時には、津軽線の終着駅である「三厩駅」まで鉄道で来て、そこからはバスを利用しました。しかし2022年の豪雨災害で津軽線は蟹田駅から先は長期の運休になっています。新幹線で奥津軽いまべつ駅まで行き、そこでレンタカーを借りるか、デマンドバスで行くのが良さそうです。乗車日の前日までの予約が必要とのことです。
2020年10月の訪問時のルート
龍飛岬は本州の北の果て。公共交通機関でのアクセスはそれほど便利とは言えません。鉄道の最寄り駅は、津軽線の終着駅である「三厩駅」です。この先線路はありません。
津軽線の時刻表です。1日5往復。日帰りで龍飛岬を観光する場合は、12時24分着で来て、15時36分発か17時46発で帰るのが現実的でしょう。三厩駅と龍飛岬の間は、町営バスで片道30分くらいです。
列車の到着時刻に合わせて、駅前から町営バスが出ています。
私が龍飛岬を訪れた2020年10月のダイヤで言うと、
青森駅 11:01発
蟹田駅 11:38着。6分後の11:44発に乗り継ぎ
三厩駅 12:24着。10分後の12:34発の町営バスに乗車
龍飛岬 13:06着
このダイヤで龍飛岬に到着したのち、龍飛岬からの折り返しのバスは、13:55、15:40、18:20がありますが、18:20のバスに乗っても、三厩駅で列車の接続はありません。13:55だと龍飛岬での滞在時間は50分弱。灯台と歌謡碑くらいならこれでも大丈夫。もう少し滞在したいとなると、龍飛岬を15:40発に乗ることになるでしょう。龍飛岬に来るお客さんのほとんどが三厩12:24着でやって来て町営バスに乗るので、バスは結構な人が乗っていました。ちょうど大人の休日倶楽部パスの期間だったこともあると思います。
というわけで、龍飛岬訪問のスケジュールは、かなり限定されていますが、それでも公共交通機関でアクセスさせてもらえるのは、とてもありがたいことです。
まとめ
龍飛岬の定番の観光スポットをまとめてみました。龍飛岬は青函トンネル工事の際、本州側の工事基地があった場所でもあり、トンネルゆかりのスポットもありました。龍飛岬のトンネルに関するスポットについてはこちらにまとめました。
龍飛岬、とても旅情を誘う場所でした。そうしょっちゅうは来られませんが、今回訪問できなかった青函トンネル記念館が営業を再開したら、もう一度来たいと思います。