豊肥本線は阿蘇山のカルデラの中を走る絶景路線で、以前から乗りたいと思っていた路線です。熊本地震の影響で長いこと不通区間がありましたが、2020年8月にめでたく全線開通となりました。不通区間が再開するのはとても嬉しいニュースです。全線開通となったので、乗りつぶしに行ってきました。豊肥本線は熊本と大分を結ぶいわば九州横断路線。距離は148キロなので、一日で乗りつぶせてしまいますが、阿蘇の絶景は素晴らしく、沿線には温泉もあることから、宿泊で回るのがおススメです。
私は阿蘇の絶景が大好きで、海外からのお客様に訪れてほしい日本の絶景ベスト5の中に入れています。私自身も2023年2月に3回目の訪問をしました。
- 特急「あそ」の前面展望席で車窓を楽しむ
- レンタカーで阿蘇観光
- 阿蘇駅からは内牧(うちのまき)温泉が近くておススメ
- 阿蘇でのアクティビティーは天候不良でキャンセル
- 阿蘇駅から「九州横断特急」で豊後竹田に向かう
- 豊後竹田駅前を散策
- 日本でも有数の炭酸泉が楽しめる長湯温泉
- 締めくくりは特急「あそぼーい」に乗車
- 豊肥本線乗りつぶしは是非泊りで!
特急「あそ」の前面展望席で車窓を楽しむ
1号車1列目D席がおススメ
熊本駅が豊肥本線乗りつぶし旅の出発駅です。初日は阿蘇駅まで行きます。特急「あそ」3号に乗車しました。
特急「あそ」は2両編成で、熊本から出発する場合は、先頭車両の1号車が指定席です。1号車1列目CDは前面展望が楽しめます。さらにD席が窓側です。左右の車窓はどちらも阿蘇の絶景を楽しめますが、進行方向右側のD席の方が早くから視界が開け、阿蘇連山の景色を楽しめます。A席側はカルデラの中に入ると、外輪山の美しい光景が楽しめます。ただし、AB席側の前方は運転士がいますので、前面展望は難しいかも。今回は平日だったので、指定席はガラガラ。5人くらいしか乗っていませんでした。平日に旅するのは私の旅のNew Normalです。
熊本駅を出発する時、ホーム上は多くのマスコミやJR関係者でごった返していました。この日は新しい列車「36ぷらす3」の運航日だったのですが、特急「あそ」の方が一足早く出発してしまいました。
熊本駅を出発してしばらくは住宅街を抜けていきます。豊肥本線には非電化区間がありますが、肥後大津駅までは電化されているので架線があります。絶景ローカル線という感じはまだありません。
豊肥本線は単線なので、何度か列車交換があり、この区間は上下線とも割と本数が走っている印象です。
肥後大津駅を過ぎると架線がなくなり、路盤に草が生えていたり、一気にローカル線らしくなりました。
右下に白川が見えてきました。線路の標高が上がってきた感じがします。間もなくスイッチバックで有名な立野駅です。
立野駅のスイッチバック
立野駅は阿蘇カルデラ内への入り口です。立野駅から宮地駅までがカルデラ区間です。下の写真は立野駅にある案内看板です。
立野駅が見えました。ホームも線路部分も新しい感じがします。
立野駅で運転士が後方車両の運転台に移動し、列車がバックします。今まで単線だったのが一気に複雑な線路になり、ワクワクしてしまいます。
バックしながら標高を上げています。前方には阿蘇の山並みが見えています。下の写真だとわかりづらいですが、新しい阿蘇大橋も見えています。
列車は次の折り返し地点まで来ました。右側から上ってきて、折り返して左側の線路に進みます。
スイッチバック地点は路盤の砂利がまだ白いです。私が鉄道旅の予習をさせていただいているひささんも、かつての豊肥本線に乗車されていて、写真を拝見したら、路盤の砂利の色が全然違いました。こちらのエントリの中に写真がありますので、比べてみると違いがわかります。
熊本地震の爪痕を見る
スイッチバックを過ぎると、右下に建設中の橋が見えてきました。新しい阿蘇大橋です。
かつての阿蘇大橋は新しい橋よりもう少し上流側にありましたが、熊本地震で崩壊してしまいました。当時の映像は衝撃的でしたが、落ちた阿蘇大橋は今でもそのままになっているのが車窓から見えます。
この辺りは斜面の崩落により橋だけでなく豊肥本線も巻き込まれて長いこと不通状態になっていましたが、復旧して本当に良かったです。車窓からは碑が立っているのが見えました。
阿蘇の絶景を楽しむ
この辺りから阿蘇の山並みを楽しめる絶景区間になってきました。
断崖のような外輪山も見えます。A席側(進行方向左側)はこの外輪山がよく見えます。
D席側からはギザギザした形が特徴の根子岳も見えてきました。
熊本駅を11:45に出発し、阿蘇駅には12:59に到着しました。特急だと早いですね。
阿蘇駅の目の前には迫力ある阿蘇山の眺めが。こんなに近いなんて驚きでした。
阿蘇駅の駅舎は黒くて渋いですね。
レンタカーで阿蘇観光
阿蘇駅近くでレンタカーを借りて、阿蘇中岳火口と大観峰の両方を回りました。中岳火口と大観峰は阿蘇駅をはさんで反対側にありますが、どちらも素晴らしい景色を眺められるドライブルートです。
絶景の阿蘇パノラマラインで火口へ
最初に向かったのは中岳の火口。阿蘇駅からは車で30分くらいです。
道路の上り勾配とカーブが続くようになると、次第に視界が開けてきます。
反対側は外輪山と阿蘇市が広がります。
あまりに雄大な景色でカメラに収まり切りません。動画で撮ってみました。草原の中では牛がのんひりと草を食んでいました。(風の音がうるさいです)
ルートのところどころに車を停車できるスペースがあるので、1人で運転してしても、車を停めて景色を堪能できました。
眼下に見える施設は草千里のドライブイン。レストランもあるようです。その奥で白煙を上げているのが中岳の火口です。
阿蘇中岳にはかつてロープウェイがかかっていたのですが、地震や阿蘇の噴火で被害が出たため、現在はロープウェイはありません。代わりに火口付近まで有料道路が整備されていて、車で登ることが可能です。ただし、火山ガスの状況によっては立ち入り規制となります。2020年は9月から規制が解除され火口に近づけるようになりました。11月からは路線バスの運行も再開されています。詳しくはこちらをご参照ください。
有料道路代800円を払い、火口近くの駐車場まで上ってきました。駐車場には火口シャトルのバス停もあります。車で来てもバスで来ても、ここから火口までは徒歩5分程度です。
坂を上ると火口を見ることができます。
火口のなかには60度くらいの強酸性の湯があるようですが、その湖面までは見えず。火口の岩肌が荒々しく感じました。
火口の反対側を見ると、荒涼とした景色が広がっています。先ほど800円払って登ってきた道路も見えています。
火口から有料道路をちょと下った所にも数台分の駐車スペースがあり、遊歩道がついています。
かなりわびしい景色の遊歩道で、距離もありそうだったので、今回は駐車場から徒歩5分程度で行ける第四火口まで歩いて引き返しました。第四火口は現在は休止中の分、かなり近くで見ることができますが、火口って迫力あります。爆弾が落ちた後って、こんな感じなのでしょうか。
阿蘇の火山情報を確認しよう
阿蘇の火口付近まで行けるか行けないかは規制のレベルによります。レベル1なら火口付近まで行けますが、レベル2になると、有料道路手前までとなります。
2023年2月に阿蘇に行った時には、レベル2だったので、レストハウスから先は通行止めでした。
外輪山の展望台、大観峰へ
来た道を戻り、今度は外輪山の上にある大観峰に向かいます。こちらも阿蘇駅からなら20分程度。阿蘇の火口からは1時間弱です。ただし途中に絶景ポイントがあるとついつい車を停めて眺めちゃうので、実際はもうちょっと時間がかかりました。
地図で見る通り、かなりくねくねした道路ですが、カーブの連続です。上り勾配もきつく、どんどん標高があがります。でも道幅が広くてセンターラインもある道路なので、安心して走れます。ついた先がこちらです。遠くに先ほど行った阿蘇山が見えています。
なんだかふわりとパラグライダーで飛び出したくなるような景色です。
大観峰の先端は駐車場から徒歩10分くらいの所にあります。上り坂を歩いて行きます。その途中からも外輪山のダイナミックな景色が広がります。来て良かった~
こちらが大観峰の最先端。
眼下には雄大な景色が広がっていました。
阿蘇駅からは内牧(うちのまき)温泉が近くておススメ
阿蘇近辺の温泉と言うと、雑誌ではよく黒川温泉が取り上げられています。黒川温泉も魅力的ですが、今回は翌日も阿蘇駅から鉄道に乗る予定なので、阿蘇駅から車で10分くらいの場所にある内牧温泉に泊まりました。路線バスも阿蘇駅から1時間に1~2本程度走っていて、阿蘇観光の際に泊まるには便利な温泉街です。泊まった宿は「蘇山郷」。
一人でも泊まれて、食事・温泉・スタッフも良く、私にとっては満足度の高い宿でした。
お値段はGoTo適用したら1万円以下で宿泊でき、たいへんコスパの良い宿でした。蘇山郷の宿泊記はこちらです。
阿蘇でのアクティビティーは天候不良でキャンセル
内牧温泉に泊まった翌朝、阿蘇カルデラ内での熱気球体験を楽しむ予定でしたが、天候不良でキャンセル。是非再訪してリベンジしたいと思います。
阿蘇の観光情報やアクティビティについては、こちらのサイトが便利です。
阿蘇駅から「九州横断特急」で豊後竹田に向かう
内牧温泉に泊まった翌日は、「九州横断特急」で豊後竹田に向かいました。車両は前日に乗った特急「あそ」と同じ車両みたいです。特急「あそ」は熊本から宮地までしか行きませんが、九州横断特急はその名の通り大分を通り、別府まで運転されます。
路線を地図で見ると大変くねくねした路線ですが、乗っていてもカーブ続きなのがわかりました。
晴れていれば、外輪山のトンネルに入るまでの間に、根子岳の特徴ある姿を眺めることができたと思いますが、残念ながらこの日は雨模様で、車窓の景色は全く楽しめませんでした。
豊後竹田駅前を散策
くねくねとした線路を下って行き、豊後竹田駅に到着。発車メロディは「荒城の月」です。滝廉太郎ゆかりの地なのです。
豊後竹田駅で下車したのは、滝廉太郎に興味があったわけではなく、日本では珍しい炭酸泉が湧く長湯温泉に行きたかったからです。長湯温泉は豊後竹田駅からはバスで45分くらいなのですが、列車との接続が悪く、11:16に豊後竹田駅に着いた私が乗車できる路線バスは12:33発なのでした。なのでしばらく竹田の町中を歩いてみました。
歩いてみると、案外古い街並みになっていて、どことなく松本のような雰囲気。竹田市も城下町なんです。
こちらは滝廉太郎記念館。近くには廉太郎トンネルがあり、中を歩くと滝廉太郎作曲のメロディが流れます。
ちょうどお昼時だったので、何か食べようと思い歩いていると、こんな建物が。古民家風のゲストハウスのようです。1階を覗いてみたらパンを販売していて、店内に食べるスペースがあったので、パンを買ってこちらで食べました。帰宅後調べてみたら、ホステルキューという宿泊施設でした。駅から徒歩1分くらいの場所にありました。
日本でも有数の炭酸泉が楽しめる長湯温泉
街歩きをして、腹ごしらえもした後、駅前から路線バスに揺られること45分、長湯温泉に到着です(タクシーだと20分くらいで4500円くらい)。途中からお天気が回復し、久住山、大船山、黒岳がくっきりと見えました。
公共交通機関利用だと不便なせいか、長湯温泉はとても静かな温泉地です。炭酸を含む温泉は湯量豊富で、温泉旅館以外にも日帰り温泉施設もたくさんありました。こちらでは「丸長旅館」に宿泊しました。
全6室のみで大浴場はなく、3つの貸し切り湯で温泉を楽しみます。滞在中、他のお客さんの声は聴きましたが、姿は一度も見ませんでした。他のお客さんとの接点がなく、今の時期安心して過ごせる宿だと思います。ご主人は湯河原の高級旅館「海石榴」で修業されていた方で、繊細なお料理が素晴らしかったです。お値段は平日でも1泊2食付きで3万円くらいします(GoTo適用前の御値段)。ちょっと高いけれど、お湯、お料理、スタッフの対応どれをとっても文句なく、大変満足度の高いお宿でした。
詳しい宿泊記はこちらです。
丸長旅館の公式サイトはこちらです。
丸長旅館のお風呂ではサイダーの湯につかっている感はないのですが、日帰り温泉施設の「ラムネ温泉」の露天風呂は本当にサイダーにつかっている感じです。入った途端、体中に銀色の泡がびっしりつき、感動しました。
締めくくりは特急「あそぼーい」に乗車
長湯温泉に宿泊したのちは、豊後竹田駅から列車に乗車。豊肥本線乗りつぶしの最終日は「あそぼーい」に乗車しました。
11月3連休初日の土曜日だけあって、車内は満席。先頭の1号車と最後尾の4号車にはパノラマシートになっていて、前面展望を楽しめますが、私の席は1号車の後方だったので、横の窓からの景色のみでした。
「あそぼーい」のシートはカラフルで気分が盛り上がりますね。
この日はお天気が抜群に良く、熊本から乗ってきた皆さんは、阿蘇の雄大な景色やスイッチバックの路線を楽しんできたことでしょう。私も熊本から通しでパノラマシートで旅したいと思いますが、土曜休日の観光列車は人が多いので、しばらくは乗る機会はないかも。この日もよく考えたら、特急ではなく普通列車を選択した方が人混みを避けられたかもしれません。
豊後竹田駅から大分方向は車窓に川が見えたりしますが、阿蘇のダイナミックな景色にはちょっとかないません。終点の別府が近づくと、右手に別府湾が見えてきます。
豊肥本線は熊本駅から大分駅までですが、あそぼーいは大分から日豊本線を別府駅まで走るのです。
「あそぼーい」についてはJR九州のこちらのサイトをご覧ください。
豊肥本線乗りつぶしは是非泊りで!
豊肥本線は1日で完乗できてしまいますが、阿蘇の観光と長湯温泉を楽しみたかったので2泊3日かけて乗りつぶしました。阿蘇は世界でも有数の大型カルデラ火山で、豊肥本線はカルデラの中を走る珍しい路線で、スイッチバックという山岳路線ならではの仕組みも楽しめます。鉄道から眺めるだけでも阿蘇のダイナミックな景色に圧倒されますが、パノラマルートからの景色、火口見学や大観峰からの眺めも素晴らしく、是非楽しんでいただきたいです。1泊2日で温泉を楽しみながら乗りつぶすことをおススメします。
ちなみに、豊肥本線を2泊3日かけて乗りましたが、実は前日は鹿児島県の妙見温泉「石原荘」に泊まっていまして、今回旅としては3泊4日でした。石原荘の宿泊記はこちらです。