大型連休中でもそれほど混まずに鉄道旅が楽しめそうな路線、ということで2泊3日山陰本線完全乗車旅に出かけました。2泊目は萩市に宿を取り、チェックイン前に反射炉と萩駅、翌日チェックアウトしてからお昼過ぎに出発する観光列車「〇〇のはなし」に乗るまでの時間で萩市を観光しました。萩市は城下町だったこともあり、当時の街並みが残る地区もあり風情があります。また坂がないので、自転車で回るととても効率的。レンタサイクル情報や、観光スポット、マンホール情報をご紹介します。
萩市観光での立ち寄り場所
下の地図にある丸数字の場所が訪問した場所です。①が東萩駅。⑪と⑫はカフェ、⑬は宿泊したホテルです。到着した日に2時間くらいで②と③を回り、残りは翌日の朝8:30からお昼を挟んで13:00までの間に回りました。移動はすべてレンタサイクルです。
観光の足
オススメはレンタサイクル
天気が良ければ自転車で観光するのがオススメです。東萩駅を出て左手を見ると、「貸自転車」の大きな看板があるので、ここで自転車を借りられます。種類も台数も豊富でした。1時間200円で最大1日1000円とお値段もリーズナブル。
私はふだんクロスバイクに乗っているので、到着当日も出発当日も両日ともクロスバイクを借りました。
さすが有名ブランド「MERIDA」のクロスバイクだけあってスイスイ走る。前かごがついていて便利ではありますが、体にフィットしているわけではないので、少々乗りにくく、出発当日は5時間くらい乗っていたので結構疲れました。いろんな人が乗るせいか、ちょっとブレーキとシフトケーブル調整が甘いような印象も。坂があるわけではないので、普通のママちゃりの方が乗りやすかったかもしれません。
バスという手もある
ちなみに自転車以外で観光するとしたら、バスが良さそうです。萩市の観光スポットをぐるっと回る「まぁーるバス」というのが2系統走っていて、東萩駅前を通るコースもありました。バスは1乗車100円。乗ったり降りたりが多い場合は一日乗車券500円というのもあります。
萩循環まぁーるバス(路線図・時刻表)のご案内 - 萩市ホームページ
荷物について
荷物ですが、東萩駅に到着した日は、駅の観光協会窓口に預け、宿に送ってもらうサービスが便利です。無料なので是非利用しましょう。2日目はチェックアウト済だったので、荷物は駅のコインロッカーを利用しました。400円でした。ロッカーの数が少なかったけれど、朝早かった(8:30くらい)せいか、ほとんど空いていました。駅の出口を出たら左手(レンタサイクル屋さんがある方向)に向かうとあります。
萩の反射炉
東萩駅から最初に向かったのは「萩の反射炉」です。(地図②)
自転車で20~25分程度でした。「まぁーるバス」は反射炉の前まで行かないので、自転車が便利だったと思います。駐車場も数台分はあるのでマイカーやレンタカーで行くのもありです。
萩の反射炉は、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つで、煙突部分が残っています。入場は無料です。反射炉は大砲を鋳造するための設備なのですが、残念ながら萩の反射炉は試行錯誤を繰り返したものの、大砲鋳造には至りませんでした。また補強工事はされてはいるものの、かなり年季が入っているという印象。
反射炉と言えば静岡県民の私にとっては「韮山の反射炉」の方がなじみがあります。萩へくる1か月前くらいにも行きました。韮山の反射炉は実際に大砲の鋳造に成功しているだけあって、萩の反射炉よりもスケールが大きいです。また地元で保存活動が行われたおかげで、保存状態も良く、萩の反射炉と同じく世界遺産登録されましたが、ガイドセンターが建設されて動画で反射炉の仕組みを説明するなど、かなり立派な観光スポットになっています。
韮山の反射炉を訪問した時の様子はこちら。
萩の反射炉は東萩駅から自転車こいで見に行きましたが、実はすぐ横を山陰本線が走っていて、鉄道の中からも見ることができます。私も東萩駅に到着する直前に「あっ、反射炉だ」と思いましたが、カメラを用意していなかったので、撮影はできませんでした。本数が多いとは言えない山陰本線ですが、時刻表を調べておけば、列車と反射炉の写真も撮れそうです。
萩駅の井上勝先生を訪ねる
反射炉を見た後は、来た道をとって返し、出発点の「東萩駅」を通り過ぎ、「萩駅」を目指しました(地図③)。古くて趣のある駅舎です。無人駅で萩市の中心地からはかなり離れています。メインの駅が「東萩駅」で「萩駅」が無人というのもちょっと妙な感じですが、萩市は古い街並みが残っているので、萩市の中を鉄道が通らないよう住民が陳情したと地元の方に聞きました。萩駅は大正14年開業。現在は有形文化財登録を受けています。
レトロな改札口。
ホームのたたずまいも素敵です。
そしてこの萩駅のロータリーには、日本の鉄道の父と呼ばれる「井上勝」氏の銅像が建っています。鉄道旅が大好きな私としてはご挨拶しないわけにはいきません。井上勝氏は「長州ファイブ」の一人。「長州ファイブ」とは最初の内閣総理大臣の伊藤博文、外交面で手腕を発揮した井上馨、造幣局長の遠藤謹助、工部卿の山尾庸三を合わせた5人を指します。いずれも明治初期の日本を支えた皆さん。萩市はこうした人物を輩出しているのですね。
明治5年、新橋と横浜の間に鉄道を開通させたのが、この井上勝氏と紹介されていました。
萩駅の中には鉄道資料館があり、古い鉄道設備などが展示されています。
駅舎の横の電話ボックスは大正末期から昭和初期に設置された日本で2番目のものらしいのですが、写真を元に復元されたとあるので、こちらのボックスはまだ新しいのですね。「自動電話」って書いてあるのが笑えます。
萩八景遊覧船
萩市観光は自転車やバスだけでなく、遊覧船という手段があります。乗り場は地図の⑥。東萩駅からサイクリングで行く場合は、まずは萩博物館を目指せば良いです。萩博物館前のY時の道路を博物館に向かって右手の道を進んでいくと、「萩八景遊覧船」乗り場に出ます。営業は朝9時から。随時出発です。料金は大人一人1200円です。
料金を払い、人数が5人集まったら出発となりました。まずは水路を走り橋本川へ向かいます。
船頭さんが見どころを教えてくれます。橋の上から見るのとまた違った景色が楽しめます。長い白い壁が見えます。かんきつ公園とか、旧田中別邸があるあたりだと思います。
来た道を戻り乗船場の前を通過し、次は日本海に向かいます。海にも漕ぎ出してくれるんです。が、その前に水面からの高さがあまりない橋の下をくぐらなくてはなりません。そのまま通過しようとすると、船の屋根が橋にぶつかってしまうので、なんと、船の屋根が低くなるのです。屋根を支えている支柱が前傾し、屋根が下がります。乗船客は頭を低くするよう言われます。
屋根が下がって、前方の橋の下をくぐります。
橋をくぐると、いよいよ日本海です。
萩城の石垣を見ることができます。萩城は明治時代に発令された「廃城令」により取り壊されてしまい、今は石垣しか残っていないのです。ここに天守があったら素晴らしい眺めだったと思います。
川を走っている時はそれほど揺れませんが、海に出ると沖を通ったフェリーの波の影響を受けたりすると大きく揺れました。でも落っこちるようなことはありませんよ。日本海からまた運河に戻り、乗船所へ。乗船時間は約40分でした。(桜の時期や夏はもうちょっと長く乗るコースになります)
日本の道百選
日本の道百選は、道の日の制定を記念して、1986年度と1987年度に、建設省と「道の日」実行委員会により制定されていて、日本の特色ある優れた道路104本が選定されています。そのうちの1本が萩市にあります。場所は地図⑦です。菊屋横町という通りです。武家屋敷のような白壁に上からのぞく夏みかん。萩の城下町らしい風景です。
菊屋横町は一方通行でかなり狭いです。こういう狭い場所や一方通行がある場所に行くにも自転車は便利ですね。車も通るので、通行には十分気をつけます。
萩の城下町は観光客向けに通りの案内もこんな具合に設置されています。
鍵曲(かいまがり)
鍵曲は、左右を高い土塀で囲み、道を鍵の手のように(直角)に曲げた道のことです。敵を迷わせて追い詰める狙いがあるようです。城下町らしいですね。萩市内には2か所の鍵曲がありますが、私は平安古(ひやこ)地区の鍵曲を見てきました。地図⑧の位置です。
藍場川と旧湯川家屋敷、カラーマンホール
藍場川
萩市の観光スポットとして、古いお屋敷や住宅の脇を流れる小川の中を鯉が悠然と泳いでいる風景が思い浮かびます。川の名前は藍場川。藍場川は用水路として作られた人工の川です。以前は川船が通り荷物の運搬にも利用されていました。そのため、川沿いの住宅に入るための橋は船が通れるように少し高くしてある場所もあります。藍場川沿いには桂太郎旧宅や旧湯川家屋敷という武家屋敷があり、見学することができます。地図⑨です。
川の中の鯉はとてもふくよかです。ホント、まるまる太った鯉ばかり。
こちらは桂太郎旧宅。桂太郎は内閣総理大臣を3回務めた人物です。
旧湯川家屋敷
藍場川の水流を上手に生活に取り入れている武家屋敷の旧湯川家屋敷を訪ねてみました。建物の裏側に無料の駐車場と駐輪場、そしてトイレがあります。入場料は100円です。
庭園に入ると、ボランティアのガイドさんなのか管理人さんが出てきてくれて、お屋敷の中を説明してくれます。まずは庭園。この水は藍場川から庭園に引き込んで池を作っています。
庭園の池の水は建物の下をくぐり、建物内の台所のハトバに出てきます。野菜などを洗えるようにしてあります。ハトバとは、川沿いに階段を作り、水に近づけるようにした場所のことで、こちらは家の中ですが、道路沿いにあるものもあります。庭園から流れてきた水は、また藍場川に戻っていきます。
ハトバを外からみると、こんな感じ。建物の下から水が川に戻ります。
水の利用が素晴らしいだけでなく、お屋敷もとても素敵なんです。
カラーマンホール
藍場川近辺にはカラーのマンホールが設置されています。萩市の名産、夏みかんと城下町の壁がデザインされています。これは先ほど訪れた日本の道百選に選ばれている菊屋横丁のようにも見えます。美しいデザインなので、マンホールカードが発行されると良いな~と思いました。
<2019年12月15日追記>
マンホールカードが配布されるといいな、と思っていたら、2019年12月から萩市もマンホールカードを配付するようになりました。
お待たせしました! 萩市のマンホールカードを配布します!! - 萩市ホームページ
藍場川以外の場所にはモノクロのマンホールが設置されています。
「萩八景遊覧船」に乗り、旧湯川家屋敷も見ようとすると、3キロ以上の距離があり、徒歩では時間がかかります。まぁーるバスという手もありますが、30分に1本のペースなので、ちょっと待ち時間が発生することもありますね。その点やっぱり自転車は優秀。3キロちょいなら20分くらいで移動できてしまいます。しかも遊覧船から旧湯川家屋敷に行く途中に先ほどの鍵曲も通れてしまうので、とても効率よく観光できます。
「〇〇のはなし」が鉄橋を渡る
旧湯川家屋敷から100mくらい離れた場所に、太鼓湾という場所があります(地図⑩)。阿武川が橋本川と松本川に分岐する場所なのですが、ここからは阿武川を渡る山陰本線の鉄橋を望めます。この日は山陰本線の観光列車である「〇〇のはなし」が走る日。ちょうど通過する時間だったので眺めに行きました。太鼓湾自体は桜の名所のようですが、この時期はもう桜は咲いていないので、誰もいませんでした。
お、来ました来ました「〇〇のはなし」。実はこの折り返しの列車に私は乗車するのです。
「〇〇のはなし」の乗車記はこちらです。車窓に美しい日本海が広がる絶景列車です。
カフェランチ
畔亭(ほとりてい)
萩市は古い城下町を観光客が楽しめるように案内や通りを整備しているだけあって、カフェもお洒落なお店があちこちにあります。こちらは萩博物館付近にある「 畔亭」(地図⑫)。こちらに寄りたかったのですが、朝から自転車でスイスイ観光していたら、まだオープン前で寄ることができず、残念。
庭園が美しいと訪れた方のブログや萩市観光協会のサイトでも紹介されています。確かにそんな雰囲気を醸し出している玄関です。
藍場川の家
畔亭が開店前だったので、サイクリングを続けて、鍵曲や旧湯川家屋敷を見た後、「藍場川の家」にやってきました。
大通りからちょっと入った場所にあります。
お庭に面したカウンター席があり、一人で来てもとてもくつろげる店内でした。石垣部分は藍場川が流れています。
メニューも豊富。ドリンクはもちろん、ランチメニューやデザートメニューもあります。左下の「季節限定」メニューに惹かれますね。
ランチを食べたい時間だったので、キッシュ・マフィン付きに季節限定ドリンクの甘夏くんソーダをつけました。キッシュにはサラダもたっぷりついてヘルシー。紅茶のゼリーもついています。これで1030円は安い!!
夏みかんがごっそり入ったドリンク。炭酸水のビンがついてくるので、ちょこちょこ足しながら飲めます。なので2杯分飲んだ気分です。
今回の旅の中で一番充実した食事だったかも。
萩市の観光まとめ
ランチも食べて、萩の観光も終了です。東萩駅に戻りレンタサイクルを返したら、先ほど到着している観光列車「〇〇のはなし」の折り返しに乗車して新下関に向かいます。
自転車観光のススメ
今回は自転車で萩市内を回り、とても効率よく行きたい場所をもれなく訪れることができました。実は2日目は宿泊したホテルの前から「まぁーるバス」に乗れるので、バスでの移動も考えていたのですが、自転車の方が時間の自由度が高いと思いました。萩市の観光スポットのほとんどが平地にあるのも、自転車観光ができるポイントです。ただ雨が降っていたり、強風の日や真夏の炎天下でのサイクリングは厳しいので、自転車で観光できる時期は案外限られるのかも。また自転車の場合、自分で地図を見ながら移動することになるので、地図を読めない人には不向きです。私は地図を見ながら移動するのは苦にならないし、今回も一度も道に迷うことはなかったので、私向きの移動手段でした。
萩市はいいね!
初めて萩市を訪れました。とっても良い街です。古い街並みを楽しむ、(私は興味がないけれど)萩焼のギャラリーをめぐる、カフェでのんびりする、なんでもできちゃいます。10連休の後半に訪れましたが、京都のようにバスが満員、とか人でごった返しているなんてこともありませんでした。普通の週末ならもっと空いているかも。人ごみが苦手な人にも良い場所だと思いました。